就業不能保険には加入の条件がある?加入できる職業、できない職業とは?
「就業不能保険」は長期間の入院や療養によって生じる収入の減少リスクをカバーすることができます。しかし、加入資格には制限があり、職業によっては加入が認められない場合があります。本記事は、就業不能保険に加入できる職業とできない職業について解説します。自分の職業が加入資格を持っているか確認し、適切な備えを行いましょう。
本記事のポイント
- 会社員や公務員は傷病手当金や障害年金で働けない場合の収入減少リスクに備えることが可能だが、自営業の場合は障害年金だけになるため就業不能保険の必要性が高い
- リスクの高い職業例としては、公務員であれば「自衛官」「警察官」「消防官」など、自営業であれば「大工」「鳶職」など
- リスクは高くないが制限がある職業としては、「主婦」「学生」「アルバイト」など
- 就業不能保険は、職業以外にも、収入など他の条件で加入制限がある
就業不能保険とは
就業不能保険は、一定期間以上、病気やケガで働けない状態が続いたときに給付金が支払われる保険です。働けない状態が続いた場合、最大1年6ヶ月までは傷病手当金、1年6ヶ月経過した日に障害のある状態であれば障害年金の対象となりますが、これらの公的保障での不足分をカバーするために就業不能保険に加入します。
給付金が支払われる条件は保険会社によって異なりますが、入院だけでなく医師の指示による自宅療養でも対象となります。基本的には長期の収入減に備えますので、就業不能となってから数か月の短期間は有給休暇や貯蓄の取り崩しで対応し、長期間働けない状態が続いた場合に保険を活用します。契約当初から給付金が支払われるまでの支払対象外期間は60日や180日など選択でき、貯蓄の有無など家計の状況に応じて選びます。支払対象外期間を長くすれば保険料をおさえることができます。
また傷病手当金はおよそ給与の3分の2が支給されますので、働けない状態になった日から1年6ヶ月までは傷病手当金と貯蓄で対応できる場合もあるでしょう。その場合、働けない状態になった日から1年6ヶ月過ぎるまでは給付金の半額を支給するタイプ(ハーフタイプ)にすることもできます。
生命保険では病気やケガのリスクが高い職業の場合、加入に制限がかかることがありますので、就業不能保険でも職業による制限があるかどうかをまとめます。
就業不能保険に加入することができる職業とは
就業不能保険は、病気やケガで働けなくなったときの収入減をカバーするための保険ですので、病気やケガをしやすい人は加入するのが難しい場合があります。たとえば、自衛官や警察官、消防官でリスクが高いとされている職種についている人は加入が難しいでしょう。自営業者ですと大工さんなどはリスクが高いとされています。これらの職種の場合に加入が難しいのは、就業不能保険に限らず、生命保険も同様です。
またほとんどの就業不能保険では、学生、年金生活者・資産生活者、無職などに該当する場合は加入することができません。パートやアルバイトの場合は、一定の収入以上でなければ加入できないことがあります。また主婦(主夫)も加入できますが、保険金額が限定しているなど加入制限を設けていることがあります。
また加入不可だけでなく、健康状態や職業などにより部位不担保が付くことがあります。部位不担保は特定の部位や指定された疾病については保障の対象外とすることです。条件が付きますが加入することはできます。
職業による制限や部位不担保の基準は保険会社によって異なり、サイトなどでは公開されていません。申込時の診査で確認することになりますので、心配な人はあらかじめ複数の選択肢を用意しておき、加入できなかった場合に備えておくといいでしょう。
職業や家計の状況に合わせて就業不能保険を検討する
職業によっては就業不能保険に加入できませんが、リスクが高くない職業なら加入することができます。
たとえば、けがや病気をするリスク(可能性)が高い職業、公務員であれば自衛官や警察官、消防官、自営業者でいうと大工さんなどはリスクが高いとされています。
これらの職種が加入が難しいのは、就業不能保険に限った話ではありません。
また、持病がある場合は、加入できないことや部位不担保が付くことがあります。
加入できるか条件がつくかは、診査結果を見てみなければ分かりませんが、就業不能保険の必要性を感じている場合は家計の状況から予算を決めましょう。働けなくなった状態になったとき、たとえば毎月20万円必要な場合、就業不能保険で全額保障できればいいですが、予算の関係上、半額の月10万円であったとしても家計の助けとなるはずです。万一、働けなくなった場合は、今の生活を維持しようと考えるのではなく、生活水準を落とし、支出額をおさえる方法も検討するといいでしょう。このように考えれば、今の家計に大きな負担を強いてまで多額の保険料を支払う方向にはならないでしょう。
関連ページ:就業不能保険の条件は厳しい?加入条件・支払い条件について解説
傷病手当金と障害年金
就業不能保険を検討する際には、傷病手当金と障害年金の基本的な知識を身に付けておきたいところです。働けなくなったときに、傷病手当金と障害年金からの給付が収入の中心となる可能性がありますので、しっかり理解しておきましょう。
① 傷病手当金
傷病手当金は、会社員や公務員が加入している健康保険から受け取れる給付金です。3日連続して休むと4日目から最大1年6ヶ月まで支給されます。給付額は、給与を日割り計算した額の3分の2ですが、正確には標準報酬月額という区切りの良い幅で区分した金額を使用します。支給開始日の直近1年間の平均で計算しますので、そのときになってみなければ給付額はわかりません。そのため、現在の給与の3分の2が支給されると見積もっておけばいいでしょう。
給与が3分の2になりますので、3分の1減少することになります。今の生活や将来の支出を考え、給与の3分の2で生活できるかどうかを検討してみてください。就業不能保険には傷病手当金が支給される1年6ヶ月までは保険金額を半分にするハーフタイプがあり、保険料の負担を軽減することができます。保障額が不十分な場合は、標準タイプを検討します。
自営業者の場合は、国民健康保険となり、傷病手当金はありません。そのため、ハーフタイプでは不足する可能性がありますので、標準タイプが向いているといえます。
② 障害年金
障害年金は、初診日から1年6ヶ月経過した後に要件を満たせば支給される年金です。障害基礎年金(1級と2級)、障害厚生年金(1級~3級と障害手当金)がありますが、自営業者には障害厚生年金はありません。等級は障害の程度によって異なりますので、現時点では最低限どの程度受け取れるか考えておけばいいでしょう。障害基礎年金は、約78万円と定額(毎年金額が決定されます)ですが、障害厚生年金は給与の額によって異なります。
障害基礎年金のみなら月6.5万円程度、障害厚生年金を含めて年150万円支給されるとすると月12.5万円となります。年200万円なら月17万円程度です。子の加算額などもありますので、できればご自身の年金記録から考えた方がいいでしょう。
就業不能保険の加入方法を考える
就業不能保険の加入を検討する際、不足額全額をカバーできればいいですが、保険料負担の点から全額を保険で備えるのは難しいかもしれません。収入が減少したときに家計に大きな影響を及ぼす可能性があるのは、子育て世帯です。教育費や住宅ローンの支払いを考えると、支出を見直すことは困難かもしれません。
そこで、10年間など特に必要な期間のみ保険に加入する方法があります。薄く長く加入するのではなく、厚く短く加入することができます。不足額全額に近い保障を得られれば、期間は限定的ですが、万一のときの金銭的な心配からは解放されます。
逆に、65歳までなど長期間加入し保障金額をおさえる方法もあるでしょう。万一のときの給付額は心もとないかもしれませんが、それでも全くないよりかは安心です。保障期間が長ければ、長期にわたり保障を受けることができる点もメリットです。
ファイナンシャルプランナーなどの保険と公的社会保障に詳しい人に相談する方法も
各保険会社の就業不能保険がどのような保障内容になっているか、どこをポイントに比較したらいいか分かりにくいかもしれません。ご自身で調べてもいまいち分からない場合は、保険の内容だけでなく健康保険についても詳しいファイナンシャルプランナーに相談することで理解しやすくなります。加入するかどうかを含め、迷っていて先に進まない場合はファイナンシャルプランナーを活用するといいでしょう。