保険業界で働くことを選んだきっかけは?
コのほけん!編集部
どのようなきっかけで、堀江さんは保険業界で働かれることになったのでしょうか。
堀江さん
私は、前職が研究者で、大学の研究機関でバイオの研究をしておりました。バイオの研究も楽しかったのですが、もっと様々なデータがあるところで仕事をしたいと思ったことがきっかけです。
アニコム損保はアニコムグループの中核として、ペット保険を取り扱っています。今はグループ会社であるアニコム先進医療研究所株式会社やアニコム パフェ株式会社にも研究部門がありますが、入社当初は研究部門ではなく、アニコム損保の商品開発の部門で、研究知識も生かしつつ、データを使った商品開発が私の最初の仕事でした。
アニコム損保では110万頭以上のペットに対し、年間420万件以上の保険金をお支払いしています。また先述したグループ会社では、遺伝子検査や腸内フローラの検査を実施しており、それらのデータなども保持しています。これらのデータをそれぞれ紐づけることで、商品開発に繋げています。
保険商品の企画から疾病予防に関する研究開発まで
コのほけん!編集部
現在のお仕事について教えて下さい。
堀江さん
私が今アニコム損保で主に担当している部門は2つあります。1つが商品サービス部、もう1つがR&D部です。
商品サービス部は、例えば保険料を決める等、まさに保険商品の企画や保険の改定といった商品設計に関わる業務をしています。現在、アニコム損保では15種類のペットを引き受けていますが、例えば保険の対象となるペットの種類を増やすことや腸内フローラ測定を毎年無料で受けられる「どうぶつ健活」などの付帯サービス(後述)をどのように保険商品につけるかという企画を行っています。
もう1つのR&D部は、アニコム損保が「予防型保険会社」を目指すうえで、どうしたら病気を予防できるかをデータから分析するなど、研究開発を行っています。
現在は遺伝子(DNA)の研究(どのような遺伝子を持っていると病気にかかりやすいか等)と腸内フローラの研究といった生物学的な研究開発が主ですが、流行りのAIによる画像予測など、幅広く研究開発を行っています。
つまり、どうしたらペットの病気を減らせるか、またそのためにはどのようなサービスが必要か、その元となる技術開発を行うのがR&D部です。
R&DとはResearch and Developmentの略称です。R&Dは「研究開発」を意味し、一般的には自社の事業領域においての研究や新技術・サービスの開発を担う部門や機能を意味することが多いです。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ
どうぶつ健保の商品の特徴
利便性の高い窓口精算
コのほけん!編集部
アニコムといえば、窓口精算ができるというイメージがあるのですが、この制度について教えていただけますか?
堀江さん
アニコム損保の窓口精算は、人間と同様に保険証を動物病院の窓口で提示すれば、お客様の負担分だけをお支払いいただき、精算が完了するシステムです。
例えば、動物病院で治療をされた場合、一般的な保険会社であれば、一旦飼い主様が全額お支払いし、保険金を受け取るために必要書類の記入等を行い保険会社へ送付する必要があります。そのうえで治療費が2万円であれば、後日保険会社から1万4,000円(70%補償の場合)が保険金として支払われます。
一方、アニコムの窓口精算であれば、対応病院で精算時にアニコムの保険証を提示すれば、その場で6,000円だけお支払いすれば精算が完了します。
【手術で20万円かかった場合/70%補償の例】
一般的な保険
窓口でのお支払い:20万円-保険金のお支払い:14万円=実際の負担額:6万円
窓口精算
窓口でのお支払い:6万円
窓口精算を利用することで、経済的な負担が軽減され、書類の記入や郵送といった手間も軽減できます。
コのほけん!編集部保険のメリットを非常に感じやすい仕組みですね。
堀江さん
そうですね、かなり利便性は高いと思います。
コのほけん!編集部全国でいくつくらいの動物病院で窓口精算を利用できるのでしょうか。
堀江さん
2023年3月時点で、6,789病院でご利用いただけます。実質的に全国の動物病院の8割近くをカバーしており、大学病院など一部を除き、ほぼどこでも使えると感じていただけると思います。
契約時の条件のまま終身継続可能
コのほけん!編集部
アニコムの保険では、治療を受けた疾病について次年度以降は補償されない、といったことはあるのでしょうか。
堀江さん
保険会社によっては、特定の病気になると次年度以降は、その病気が補償対象外になることや契約の更新ができなくなることもあります。しかしアニコム損保では、はじめにご契約いただいた条件のまま、生涯に渡り補償させていただきます。そのため保険のご請求があったことが理由で補償の対象外となることはありません。またそれにより契約を更新できないということもありません。
幅広い疾病で補償が受けられ、歯科疾患も補償の対象
堀江さん
例えば、保険会社によっては歯科疾患を補償しない場合もありますが、アニコム損保は疾病であれば歯科疾患も補償の対象となります。また、先天性異常もお引き受けの時点で発症していなければ、基本的に補償の対象です。
アニコム損保の保険で補償対象外になるものとして「ワクチンで防げる病気」がありますが、これはどの保険会社でも対象外です。アニコム損保では幅広く補償させていただいていると言えると思います。
コのほけん!編集部一口にペット保険といっても、補償やサービスの内容は各社で特徴があり、お話しいただいた点は比較するポイントとして考えておいた方が良いのですね。
年齢の上限なしで入れる「しにあ」
堀江さん
アニコム損保には入院・通院・手術をすべてカバーしている「どうぶつ健保ふぁみりぃ」だけでなく、高齢ペット向けの商品である「しにあ」という商品もあります。
基本的にどの保険会社も、保険の加入には年齢制限があります。しかし「しにあ」は加入年齢の上限がなく、何歳でも入れます。さらに後述の“どうぶつ健活”(腸内フローラ測定)の結果が良好であれば、2年目以降のご継続のタイミングで通院補償付の「どうぶつ健保ふぁみりぃ」へ移行することもできます。
「しにあ」は、通院は補償対象外ですが、入院と手術が補償されており、年齢制限がなくワンちゃんやネコちゃんがいくつになっても、例え20歳でも加入できます。高齢のペットに多い手術に備えて入っていただくのも良いかと思います。
年1回、無料で行える腸内フローラ測定
堀江さん
また、アニコム損保の特徴として、付帯サービスを充実させていることがあります。
年に1回、腸内フローラを測定いただける「どうぶつ健活」や、ペットが迷子になったときに捜索を行う「ペット探偵」、ペットについてLINEで獣医師などに相談できる「どうぶつホットライン」があります。「ふぁみりぃ」であればこれらはすべて無料でご利用いただけます。
コのほけん!編集部
「腸内フローラ測定」はペットの健康管理にどのように役に立つのでしょうか。
堀江さん
例えば腸内フローラ測定の結果と保険金請求データを紐づけることで、病気になるリスクを判定することができます。最近の調査により、腸内フローラの多様性が高い犬・猫ほど、健康であることがわかっています。
そのため、統計的に腸内フローラのパターンを見て、リスクの高い子の飼い主様にフードや運動の意識付けを行うなどし、健康管理をサポートしています。
また、ワンちゃんとネコちゃんのみですが、結果が良くなかった場合、健康診断(血液検査)を無料で受けていただけます。診断の結果、良くないところが見つかった場合も、その病気の治療費は保険の対象となります。悪いところがなければ、飼い主様も安心できるので、ペットの健康と飼い主様の安心を両方サポートできる仕組みになっています。
腸内フローラ測定は、こうした健康診断などを受けるきっかけを作ることで、予防、早期発見、生活習慣の改善など、ペットの安心につながる行動を少しでも早くアニコム損保からお客様にご提案するためのサービスです。
自社開発、自社完結のこだわり
堀江さん
腸内フローラ測定は、飼い主様が専用のキットを使って行っていただけます。ご自宅でペットの便を採取し、キットごとアニコムのラボに封筒で返送していただくと、後日結果をお知らせします。
結果は腸内フローラ測定専用サイト「けんかつくん」のマイページから確認していただけます。
アニコムグループでは、こういった検査はできるだけ「非侵襲的」に行いたいと考えています。「非侵襲的」とは、血を採ったり、痛みがあったりしないという意味です。また、ワンちゃん、ネコちゃんも病院に行くのはあまり好きでないと思うので、自宅で健診できる郵送型の健診にしています。こういった検査を今後はもっと増やしていきたいと考えています。
実はこの検査、開発から結果の判定まですべてグループ内で行っており、検査キットは特許も取っています。
送られてきた便を機械を使って測定したり、出てきたデータを処理したり、専用サイトにデータをアップロードするところまで、すべてアニコムグループの社員が行っています。こうした取り組みを全てグループ内で完結させているのは保険会社でも珍しいのではないでしょうか。
商品開発で苦労した点は?
コのほけん!編集部
「どうぶつ健保」の企画をするうえで苦労した点などがあれば教えてください。
堀江さん
アニコム損保は日本で一番初めにペット保険を確立し、広めた会社です。そのため今でも新しいことに挑戦する社風があります。それはつまり前例がないことを新たに始めることになるので、その面では苦労する部分も多いです。
例えば腸内フローラ測定を始めるときも、どういうものを、どのような形でお客様に案内すれば納得していただけるだろうかと考える必要がありました。0から1を作る作業なので、サービスがお客様を不快にさせてしまわないか、どうすればメリットを理解していただけるか、サービス開始により社内のコールセンターが困らないかなどを事前に想像することが必要です。
そうして新しいサービスを作り、確立させ、提供していくというのは楽しい部分であると共に、大変な部分でもあります。初めてのことで何を参考にしたら良いかわからないこともあります。
しかしながらアニコム損保にはペット保険を日本で初めて広げ、シェアNo.1を続けている自負と矜持があり、新しい挑戦は私たちの責務でもあると思っています。
常に新しいことに挑戦し続ける
コのほけん!編集部
窓口精算制度もアニコムが広め、そこからペット保険が普及したと伺っています。
堀江さん
当時、私はまだ社員ではありませんでしたが、これまでにペットの世界にはなかった窓口精算というシステムを、動物病院が導入するメリットを一つ一つ丁寧に説明し、納得いただくというプロセスは相当大変だったと聞いています。
コのほけん!編集部
そうした新しい取り組みを広めていくというところは御社の企業文化なのですね。
堀江さん
そうですね、創業者の小森が東京海上日動を退社してベンチャーから作った会社で、その「ベンチャー精神」は今もなくなっていません。
また、アニコム損保は保険会社ですが、保険は「空気のような物」であるべきだという考えも持っています。これは、保険を収益の軸にするのではなく、保険を通じて集まったデータを使って新しい価値を産みだすということです。そのためアニコムグループでは、ペットに関わる領域に幅広く事業を展開しています。
まとめ(編集後記)
どうぶつ健保の商品開発には、常に新しいものに挑戦するというベンチャー精神と「予防型」の保険であり続けたいというこだわりが詰まっていました。
オフィスを見学させていただき、非常に多くの社員が区切りのない広々としたワンフロアのオフィスでお仕事に取り組まれていました。また、毎週月曜日に社長や経営メンバーから全社員に向けた情報発信があり、全社で風通しよく情報共有が行われるなど、社員一同が一丸となり、よりよいサービスをお客様にご提供しようという素敵な雰囲気がありました。