学資保険の祝い金や満期金に税金はかかる?契約形態別の損をしない加入の仕方
学資保険に加入する理由には「効率的に子どもの教育費を貯めたい」というものがありますが、実際に学資保険の祝い金や満期金を受け取るときに税金がかかるかもしれないということを知らない人がたくさんいます。税金がどれくらいかかるか知らないと、受け取った祝い金や満期金で組んでいた教育費のプランを変更せざるをえない可能性が出てきてしまいます。せっかく加入した学資保険で損をしないために、どのような契約形態で加入すればより多くの祝い金や満期金を受け取ることができるのかしっかり確認しましょう。
かかる?かからない?学資保険の祝い金や満期金の税金について
子どもの教育費を貯めるために加入する学資保険ですが、受け取る祝い金や満期金には税金がかかるケースとかからないケースがあります。ここでは、それぞれのケースについて実際の計算例を見ながら見ていきましょう。
学資保険の祝い金にかかる税金
学資保険の祝い金には2種類あります。小学校入学や中学校入学に合わせて祝い金をもらうタイプと、年金形式で毎年18歳から22歳まで祝い金を受け取るようなタイプです。それぞれでかかる税金の種類が異なり、その計算方法も異なります。
・高校や大学の入学で祝い金を受け取る
→ 一時所得
・年金形式で毎年祝い金を受け取る
→ 雑所得
一時所得の場合
学資保険の祝い金が一時所得になる場合、そのほとんどのケースで税金はかかりません。一時所得の計算式は次の通りです。
一時所得 = 受け取った祝い金 - 支払った保険料総額 - 特別控除50万円
祝い金を小学校や中学校の入学で受け取るときは、「すでに受け取った祝い金の金額」も差し引いて計算します。では、年払い保険料10万円、小学校入学の祝い金20万円、中学校入学の祝い金30万円、高校入学40万円、満期110万円の契約を仮定して見てみましょう。
小学校入学の祝い金20万円受け取った場合
一時所得=20万円-(10万円×6回)-0円-特別控除50万円
→ 税金はかかりません
中学校入学の祝い金30万円受け取った場合
一時所得=30万円-(10万円×12回)-20万円-特別控除50万円
→ 税金はかかりません
高校入学の祝い金40万円受け取った場合
一時所得=40万円-(10万円×15回)-20万円-30万円―特別控除50万円
→ 税金はかかりません
このように、ほとんどの場合で祝い金には税金がかかりませんが、受け取る祝い金の金額によっては税金がかかる場合がありますので注意が必要です。
雑所得の場合
学資保険の祝い金が雑所得になる場合、所得税や住民税の対象となります。雑所得の計算式は次の通りです。
雑所得 = 受け取った祝い金 - 支払った保険料
例えば、18歳から22歳までの4年間に毎年50万円(総額200万円)の祝い金を受け取ったとき、それまでに支払った保険料総額が180万円の学資保険1年間の所得税は次のように計算します。
支払った保険料の計算方法
計算で使用する「支払った保険料」の計算方法は次の通りです。
年金年額 × 支払った保険料総額 ÷ 年金年額 × 受取年数
よって、この場合の支払った保険料は以下のようになります。
50万円 × 180万円 ÷ 50万円 × 4年間 = 45万円
したがって、雑所得は
50万円 - 45万円 = 5万円
となり、毎年5万円が4年間、他の所得と一緒に加算され、課税されることになります。ただし、会社員の場合には給与所得や退職所得以外の所得が合計20万円を超えなければ確定申告は不要ですので、所得税はかからないということになります。ただし、自営業の場合この20万円の控除がありませんので以下なる場合でも確定申告は必要になります。
学資保険の満期金にかかる税金
学資保険の満期金を一括で受け取ったとき、一時所得となり所得税の課税対象となります。一時所得の計算方法は先ほどの祝い金と同じものです。
一時所得 = 受け取った祝い金 - 支払った保険料総額 - 特別控除50万円
例えば、支払った保険料が200万円、満期金が一括受取で250万円だったときの一時所得の計算は次の通りです。
一時所得 = 250万円 - 200万円 - 特別控除50万円
したがって、この場合は税金がかかりません。もし満期金が多く一時所得がある場合でも、課税される所得金額によって税率が異なり※1、それぞれで控除もされるのでそこまで多くの税金はかかりません。
参照:国税庁「No.2260 所得税の税率」より
契約形態別で考える学資保険の税金について
学資保険の祝い金や満期金にかかる税金は所得税だけではありません。ここまで例にあげてきたケースの場合、「保険料を支払った人=本人、被保険者=子、受取人=本人」という契約形態でしたが、保険料を支払った人と受取人が異なる場合には贈与税の対象となります。
- 保険料を支払った人=本人、被保険者=子、受取人=子・・・贈与税
- 保険料を支払った人=祖母、被保険者=孫、受取人=本人・・・贈与税
贈与税には年間で110万円の基礎控除があります。上の契約形態で支払った保険料の合計が200万円、満期金が250万円の学資保険の満期金を受け取ったとき、支払う贈与税の計算は次の通りです。
250万円 - 110万円 = 90万円
90万円にかかる贈与税の税率は10%ですので、9万円の贈与税を支払うことになります。贈与税は国税庁のホームページにある一般贈与財産用:一般税率※2をもとに計算することができます。
このように、保険料を支払った人と祝い金や満期金の受取人が同じ場合には所得税の対象となりますが、ほとんどの場合で非課税となります。しかし保険料を支払った人と受取人が違う人の場合、贈与税の対象となり、税金を納めなくてはいけなくなります。特別な理由がない場合には、税金を支払うことが少ない所得税になる契約形態を選ぶことをおすすめします。
※2 一般贈与財産用:一般税率は、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算には、特例贈与財産用:特例税率を使用します。
契約者が死亡したとき、被保険者が死亡したときはどうする?
学資保険は祝い金や満期金を受け取る前提で加入しますが、もし契約者(保険料を支払った人)である親が死亡してしまったときはどうなるのでしょうか?
学資保険の契約者が死亡したとき
学資保険の保険期間中に契約者である親が死亡してしまったとき、保険料払込免除が適用されます。保険料払込免除が適用されると、以降の保険料の支払いをせずに祝い金や満期金を受け取ることができるようになります。
ただし、受取人が「子」になっている契約形態の場合、子が一時所得の対象となり、その所得が38万円以上であった場合には扶養から外れてしまいます。扶養から外れると、シングル家庭の優遇措置や配偶者自身の税控除減などを受けられなくなり、実質的な増税になってしまいます。そうならないために、早めに受取人を子から配偶者に変更しておきましょう。
学資保険の被保険者が死亡したとき
学資保険の保険期間中に被保険者(子)が死亡したとき、それまでに支払った保険料相当額の死亡給付金が返還されます。ただし金額については各保険会社により異なります。
また、それまでに受け取っている祝い金などがある場合、その金額を差し引いた死亡給付金が支払われます。
まとめ
学資保険の祝い金や満期金には、その受け取り方法や契約形態によって税金がかかるケースとかからないケースがあります。
【受け取り方の違いによる税金の違い】
・祝い金→ 一時所得(ただしほとんどの場合で非課税)
・年金タイプの祝い金→ 雑所得
・満期金(一括受取)→ 一時所得(ただしほとんどの場合で非課税)
【契約形態による税金の違い】
・保険料を支払った人と受取人が同じ契約形態→ 一時所得(ただしほとんどの場合で非課税)
・保険料を支払った人と受取人が別の契約形態→ 贈与税(税率が高い)
また、契約者や被保険者が死亡した際には、契約者変更や受取人変更などの手続きが必要になりますので、必要な手続きや流れを覚えておきましょう。