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自動車保険の運転者限定とは?仕組みと選び方を徹底解説!

自動車保険の「運転者限定特約」は、運転する人を限定することで保険料を抑えられる特約です。

自分以外の家族も運転する場合、どこまで補償対象にすべきか判断に迷う方も少なくないでしょう。安易に補償範囲を狭めてしまうと、万が一の事故の際に補償が受けられないリスクもあるため、仕組みをしっかり理解しておく必要があります。

この記事では、運転者限定特約の種類や補償範囲、注意点を詳しく解説します。実際にどれくらい保険料が安くなるのか、シミュレーションも紹介しますので、保険選びの参考にしてください。

この記事のポイント

  • 運転者限定特約を活用すると、実際に車を運転する人に絞って補償を設定できるため、保険料を抑えることが可能。ただし、補償の範囲を狭めすぎると、事故の際に補償されず保険金が支払われないというリスクもある。
  • 限定の範囲ごとに割引率は異なり、「本人限定」では約7〜12%、「本人・配偶者限定」では約5〜10%など、選ぶ条件によって保険料に大きな差が出る。
  • 「家族や友人に車を貸す機会がある」「家族構成が変わる可能性がある」という場合には、運転者限定の補償範囲が適切かどうかを定期的に確認するとよい。

自動車保険の運転者限定とは?

自動車保険の運転者限定とは?

自動車保険の「運転者限定特約」とは、補償対象となる運転者の範囲をあらかじめ限定する特約です。

ここでは運転者限定特約の基本的な仕組みを解説します。

運転者限定の種類と補償範囲

運転者限定は大きく4種類に分けられ、それぞれ補償範囲が異なります。

運転者限定の種類

補償される運転者の範囲

本人限定

記名被保険者(※1)

本人・配偶者限定(夫婦限定)

記名被保険者とその配偶者(※2)

家族限定

記名被保険者とその配偶者の、同居の親族(※3)または別居の未婚(※4)の子

限定なし

誰でも(家族、友人問わず補償対象)

※1:契約の車を主に使用する人のこと ※2:内縁関係を含む ※3:6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族 ※4:婚姻歴がない方

限定される範囲が広くなるほど保険料は高くなるため、他の条件が同じであれば「本人限定」が最も保険料が安く、「限定なし」が最も保険料が高くなります。

ただし、運転者限定特約の名称や補償範囲は保険会社によって異なる場合があるため、契約前に必ず内容を確認しましょう。

運転者限定特約を適用するメリット・デメリット

運転者限定特約を適用するメリットは、実際に運転する人に絞って補償を設定できるため、保険料の負担を抑えられる点にあります。

たとえば独身で一人暮らしをしており、自家用車を自分しか運転しない方は「本人限定」を選ぶと、保険料の負担を抑えて合理的に保険に加入できます。

一方、運転者の範囲外の人が事故を起こした場合、補償対象外になる点はデメリットです。たとえば「本人・配偶者限定」で契約しているにもかかわらず、友人が運転して事故を起こした場合、その損害は補償されません。

結婚や家族構成の変化、子どもの免許取得といったライフスタイルの変化があっても、契約内容は自動で更新されないため注意が必要です。必要以上に補償範囲を狭めると、万が一の場面で保険が使えなくなる可能性があることを念頭に置いておきましょう。

運転者限定で保険料はどれくらい安くなる?割引の仕組みを解説

運転者限定特約をセットして補償の対象となる運転者の範囲を制限した場合、保険金の支払リスクが軽減されるため、そのぶん保険料が割引されます。

実際にどのくらい保険料が安くなるのか、割引率の目安や保険会社ごとの違いを確認してみましょう。

運転者限定で自動車保険の保険料はどれくらい割引される?

具体的な割引率は保険会社ごとに異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

運転者限定の種類

割引率

本人限定

7〜12%

本人・配偶者限定(夫婦限定)

5〜10%

家族限定

1%

限定なし

割引なし

ただし、上記の割引率は保険料の全体に適用されるわけではありません。たとえば「人身傷害補償には10%」「車両補償には5%」のように、リスクに応じた割引率が個別に設定されるケースが一般的です。

正確な保険料を把握したい場合は、各社の公式ホームページでシミュレーションしてみましょう。

主要な自動車保険会社の運転者限定による割引比較

実際に運転者限定特約を適用した場合、保険料にはどれほどの差が出るのでしょうか。

ここでは以下の条件に基づき、運転者限定特約を適用した場合の保険料を比較しました。

シミュレーション条件

保険期間
2025年5月1日より1年間

契約車両
・メーカー  :トヨタ
・車種    :プリウス
・型式    :MXWH61
・初度登録年月:2025年4月
・用途車種  :普通乗用車

契約条件
・ノンフリート等級:6等級
・記名被保険者  :40歳 
・運転者年齢条件 :35歳以上(保険会社によっては30歳以上補償)
・免許証の色   :ゴールド免許 
・使用目的    :日常・レジャー使用
・年間走行距離  :5,000km
・主に運転する地域:東京都
・AEB(自動ブレーキ装置):あり

補償内容
・対人賠償保険:無制限
・対物賠償保険:無制限
・人身傷害保険:3,000万円(搭乗中のみ補償)
・車両保険  :なし

払込方法
・口座振替
・分割払い(月払い)

限定なし

本人限定

本人・配偶者限定

家族限定

三井ダイレクト損害保険

1,960円

1,780円(約9.2%)

1,790円(約8.7%)

1,940円(約1.0%)

アクサ損保

2,190円

-

2,120円(約3.2%)

-

ソニー損保

2,330円

2,150円(約7.7%)

2,180円(約6.4%)

2,310円(約0.9%)

東京海上

3,860円

3,420円(約11.4%)

3,580円(約7.2%)

-

損保ジャパン

3,896円

3,438円(約11.7%)

3,624円(約7.0%)

-

※()内は「限定なし」と比較した場合の割引率。「-」は取り扱いなし
※自動セットの特約など、細かい補償内容は各社違いがあるため、厳密に同一条件での比較ではありません。

このように、保険会社や限定の種類によって最大で10%以上保険料が下がるケースもあります。多くの保険会社では見積もりシミュレーションが簡単にできるため、実際の条件で確認してみることをおすすめします。

関連記事:ダイレクト型自動車保険に乗り換える際の注意点や手続き方法を解説

運転者限定の注意点と補償対象外となるトラブルを防ぐ方法

運転者限定の注意点と補償対象外となるトラブルを防ぐ方法

「運転者限定特約」には、保険料の負担を減らせるメリットがあります。

一方で、設定を誤るといざという時に補償を受けられず、高額の自己負担が生じる可能性もあるため、代表的なリスクや対処法を理解しておきましょう。

運転者限定特約の補償対象外の人が事故を起こしたらどうなる?

運転者限定特約をセットしている状態で、補償対象外の運転者が事故を起こしても、原則として保険金は支払われません。

例えば「本人・配偶者限定」で契約している車を友人が運転して対人事故を起こした場合、友人または車の所有者が数千万円単位の賠償責任を負う可能性があります。

​実際の運転状況や家族構成を考慮して、適切な運転者の範囲を設定するのが重要です。目先の保険料の割引だけを優先して、運転者の範囲を過度に狭めることは避けましょう。

家族や友人が運転する場合は運転者限定の補償範囲を確認しよう

家族や友人に車を貸す機会がある場合、契約している自動車保険の補償範囲を事前に確認しておきましょう。補償範囲は保険証券や各保険会社のマイページなどを通じて確認できます。

運転者限定の範囲

特に注意したいのは「家族限定」をセットしている場合です。家族限定の場合、補償対象となる家族の範囲は以下のように定められています。

  • 記名被保険者
  • 記名被保険者の配偶者
  • 記名被保険者またはその配偶者と同居している親族
  • 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子

たとえば別居の既婚の子が帰省中に実家の車を運転した場合、「家族限定」では補償対象外となり、原則として事故が発生しても保険金は支払われません。

また「同居の親族」とは、6親等内の血族と3親等内の姻族を指すケースが一般的です。以下の図で補償対象になる人を確認しておきましょう。

親族の範囲

もし補償対象外の人が運転する可能性がある場合、以下の方法を検討してみましょう。

  • 他車運転特約を活用する
  • 一日自動車保険やドライバー保険を契約する

運転する人が「他車運転特約」がセットされている自動車保険に加入している場合、借りた車で起こした事故についても、自身が加入する自動車保険から補償を受けられます。

また、12時間・24時間単位で加入できる「1日自動車保険」や、1年単位で加入する「ドライバー保険」に運転者自身が加入しておくのもひとつの方法です。

関連記事:1日自動車保険とは?どんな時に必要?ドライバー保険との違いも解説

運転者限定を一時的に解除・変更する方法とその手続き

補償対象外の人が車を運転する予定がある場合、運転者限定特約を一時的に解除または変更することが可能です。

一般的には以下の手順で変更手続きを行います。

  1. 保険代理店または保険会社に連絡する
  2. 変更内容や変更日などを伝える
  3. 変更に伴う保険料の差額を支払う

保険会社によっては、事前に指定した日から変更を適用できる場合もあります。また、運転者の範囲を拡大した場合、追加の保険料を支払いますが、元に戻すと払い過ぎた分の保険料(未経過分保険料)は払い戻されるケースが一般的です。

なお、運転者の範囲が保険期間中に変わったにもかかわらず、特約の変更手続きを忘れていた場合に備え「うっかりサポート」を提供している保険会社もあります。うっかりサポートが適用された場合、補償対象者以外が運転して発生した事故についても補償されます。

​ただし、必ずしもすべてのケースで適用されるわけではありません。また、追加保険料の支払いも必要になるため、​補償対象外の人が運転する可能性がある場合は、万が一に備えて事前に手続きをしておきましょう。

まとめ

運転者限定特約は、実際に運転する人だけに補償を絞ることで保険料の割引が受けられる特約です。保険会社やプランによっては、10%前後の割引が受けられるケースもあります。

一方で、補償対象外の人が事故を起こした場合は、保険金が支払われず高額な自己負担が発生するリスクもあるため、ライフスタイルや家族構成に合わせて適切な範囲を設定しましょう。

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