生命保険で配当金を受け取ったら?配当の受け取り方法を解説!
保険の商品には、加入中に配当金を受け取れることがあります。配当金を受け取れるタイプかどうかはあらかじめ決まっていて、「無配当」と記載されていれば配当金は支払われませんが、「5年ごと利差配当付」などの記載があれば「有配当」となり、剰余金があれば配当金が支払われます。本記事では配当についての基礎的なことをご紹介いたします。
保険で受け取れる「配当」とは?
保険の商品によっては、加入中に配当金を受け取れることがあります。配当金を受け取れるタイプかどうかはあらかじめ決まっていて、「無配当」と記載されていれば配当金は支払われませんが、「5年ごと利差配当付」などの記載があれば「有配当」となり、剰余金があれば配当金が支払われます。
配当金の仕組み
保険料は、予定基礎率(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)によって決まります。予定している利率と実際との利率の差が生まれた場合に剰余金が発生し、そこから配当金が支払われます。そのため、「有配当」であっても、剰余金がなければ配当金は支払われません。
具体的な予定基礎率との「差益」は次のとおりです。
・予定死亡率より実際の死亡率の方が低い場合に発生するのが「死差益」
・予定利率より実際の利率の方が高い場合に発生するのが「利差益」
・予定事業費率より実際の事業費率の方が低い場合に発生するのが「費差益」
「死差益」「利差益」「費差益」が剰余金となり、配当金の原資となります。これらのうち、利差益が発生した場合にのみ配当が支払われるのが「利差配当付保険」です。
3利源(死差益・利差益・費差益)から支払われる保険を「3利源配当タイプ」、利差益のみから配当される保険を「利差配当タイプ」と言います。
配当の受け取り方法にはどのようなものがあるのか
「5年ごと利差配当付」など剰余金が発生すると保険契約者に配当金が支払われる場合があります。配当金が支払われる場合、受け取り方法には次の4つの方法があります。なお、保険会社や商品によって受け取り方法が決まっていて、必ずしも4つの方法から選べるわけではありません。
<配当金の受け取り方法>
積立 | 配当金を保険会社に積み立てておく方法です。積み立てた配当金には利息がつき、必要なときに引き出すことができます。引き出さなかった配当金や利息は保険金支払い時にまとめて支払われます。 なお、一度引き出すと再度積み立てることはできません。また利率は金利水準等により変動することがあります。配当金の残高については、保険会社によっては提携ATMで確認することができます。 |
相殺 | 配当金を保険料に充当する方法です。充当された配当金の分だけ保険料は減額されます。 |
買い増し | 配当金を原資に保険金額を買い増す方法です。 |
現金支払 | 配当金を現金で受け取る方法です。 |
配当の種類
配当には通常配当と特別配当の2種類あります。一般的に配当金は、毎年の決算期ごとに支払われますが、これを通常配当といいます。特別配当は、死亡・満期等で保険契約が消滅した場合等で支払われる配当金を指します。
<通常配当と特別配当>
通常配当 | ・3利源配当タイプのうち毎年配当される「毎年配当型」は、契約後3年目の契約応当日から毎年支払われるのが一般的です。 ・利差配当タイプのうち5年ごとの利差益から支払われる「5年ごと利差配当型」は、契約後6年目の契約応当日から5年ごとに分配される配当金です。 |
特別配当 | 長期継続契約に対して支払われる配当金です。 ・死亡や満期などにより保険契約が消滅するときなどに支払われます。 ・過去の通常配当で還元しきれなかった部分や株式の売却益等が主な財源となります。 |
配当があるかどうかの確認の方法
検討中の保険や加入中の保険に配当があるかどうかを確認するためにはどうすればいいのでしょうか。
(1) 保険加入前に配当があるかどうかを確認する方法
保険を検討しているときに配当があるかどうかを確認したい場合、まずはパンフレットやwebページを確認してみましょう。商品名の前後や上に「5年ごと利差配当付」「無配当」と記載されていと思います。記載がない商品は「無配当」の可能性が高いですが、保障内容や特徴などの欄に記載されていることがあります。
配当があるかどうか気になる場合で、パンフレットやwebページでパッと見分からないときは、担当者に聞いたり、電話で問い合わせたりした方が早いでしょう。
(2) 加入中の保険に配当があるかどうかを確認する方法
加入中の保険が配当付きかどうかを確認するには、契約の約款や保険証券を見るといいでしょう。約款は特に、情報量が多いためどこに書いてあるか見つけるのに時間がかかる可能性があります。約款や契約内容のお知らせ、保険証券などにコールセンターの問い合わせ先が書かれていると思いますので、問い合わせてみましょう。
配当の税金について
保険料を支払っているときに配当金を受け取った場合、配当金には課税されません。ただし、保険料には生命保険料控除を適用することができますが、この計算上で受け取った配当金は差し引かなければなりません。たとえば新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)の控除額は次のようになります。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
年間の支払保険料が80,000円の場合、控除額は40,000円ですが、配当金で1,000円受け取っていると、年間の支払保険料は79,000円(80,000円 - 1,000円)となり、控除額は39,750円(79,000円 × 1/4 + 20,000円)と少なくなります。
配当金についての相談例
生命保険文化センターの生命保険相談マニュアルに、配当金についての相談例が記載されています。配当金の仕組みを理解していたり、契約当時の説明を覚えていたりすれば疑問に感じない内容ですが、今回の知識と合わせて知っておくと理解が深まりますので、紹介しておきます。
<配当金についての相談例>
相談1 | 回答1 |
確定年金の年金受取りが開始されたが、契約時に提案書・設計書に書かれた年金額に比べて、実際に受け取れる年金額が大幅に少なかった。 | 個人年金保険の提案書・設計書に記載されている年金額のうち、「増加年金」や「増額年金」は配当金で買増しされる部分であり、保証されたものではありません。 したがって、配当金が低額で推移すると、提案書・設計書に記載された年金額に比べて、実際に受け取れる年金額は大幅に少なくなります。 |
相談2 | 回答2 |
定期保険特約付終身保険を契約していて、終身保険部分の保険料の払込みが満了になったので年金保険に移行することにした。ところが積立配当金がわずかであったため、契約時の提案書・設計書に書かれてある年金額に比べて、実際に受け取れる年金額が大幅に少なくなった。 | 終身保険の保険料払込満了時に年金保険に移行する場合の年金原資は、その時点の終身保険の責任準備金の額に積立配当金をプラスしたものです。 したがって、近年のように配当金が低額で推移すると、積立配当金の額もわずかとなり、年金保険に移行した場合、契約時の提案書・設計書に記載された年金額に比べて、実際に受け取れる年金額は大幅に少なくなります。 |
相談3 | 回答3 |
それまでは保険料の払込金額が少なくてすんだのに、いきなり通常の保険料を払い込むよう案内が送られてきた。 | 配当金を保険料との相殺で受け取る場合、配当金の額によって、「それまで保険料負担が少なくてすんだものが、新たに通常の保険料負担が生じる」ことがあります。 |
出典:生命保険文化センター「生命保険相談マニュアル」
「相談1」と「相談2」については、配当金が予定より少なかったことによる影響で、「提案書・設計書」に記載されている内容と実際との差に疑問を感じたようです。契約時点では理解していても時間が経つと忘れる可能性は十分考えられますので、注意が必要です。
「相談3」はこの記事で紹介した「配当金の受け取り方法」のうち「相殺」に関連した内容です。相殺は、「配当金を保険料に充当する方法で、充当された配当金の分だけ保険料は減額」されますが、配当金が支払われなくなると保険料が上昇してしまうため、保険料の上昇に疑問を感じたようです。保険料の変化は、家計に影響が出る場合がありますので、注意が必要です。
ほとんどの人が保険加入時の説明に納得していると思います。保険加入時に「提案書・設計書」、加入後には「保険証券」を受け取ります。勘違いしそうな点、忘れそうな点は印をつけておくなり、メモ書きしておくなりして後で読み返して分かるようにしておくと安心です。
まとめ
保険を検討しているときには、保障内容や保険料にばかり気を取られ、配当金の有無や配当金の仕組みについては後回しになってしまうかもしれません。この記事で紹介してきましたが、配当金は保険料に影響したり、保険会社の運用成績に影響を受けたりしますので、気になった人は少し調べてみてはいかがでしょうか。