徹底解説!法人保険加入のメリット4つとデメリット3つ
法人の経営者や役員、従業員が約定の保障を受けられる、法人保険。法人税対策ができたり福利厚生を図れたりといったメリットがある反面、いくつかのデメリットがあるのも事実です。この記事では、法人保険加入のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
法人保険加入のメリット
法人税対策ができる
法人保険加入のメリットとしてはまず、法人税対策ができる、という点が挙げられます。
法人の所得に対しては、法人税が課税されます。課税対象となる法人の所得は「当該事業年度の益金額 - 当該事業年度の損金額」によって算出されますので、その年に支払う法人税額を減らすには、損金の額を増やす対策が有効です。
この点、法人保険は支払った保険料の全部または一部を、損金処理することが認められています。つまり、法人保険に加入すれば保険料負担により損金の額が増え、課税対象となる法人の所得を減らして支払う法人税を節約することができるのです。
法人保険は決算直前の加入も可能
当該事業年度の利益がどのくらいになるのかは、決算直前になってみなければわかりません。決算ギリギリになって思っていた以上の利益が出ていることが判明し、法人税対策に頭を悩ませる、というケースもあるでしょう。
法人保険の中には、決算直前であっても加入できるものがあります。申込みと年間保険料の払込を決算までに済ませれば、負担保険料を当該事業年度の損金に算入することができるのです。
損金の額を増やす方法には様々な選択肢がありますが、決算直前になって有効な法人税対策ができるというのは、法人保険ならではの魅力といえるでしょう。
経営リスクに備えられる
法人保険に加入することには、法人に想定される経営リスクに備えられる、というメリットもあります。
法人は赤字の状態が続くと、銀行から融資を受けられなくなったり、取引先の信用を失ったり、業種によっては一過性の赤字でも入札に参加できなかったり、というように様々な不利益を被る可能性があります。また、これは中小企業に多いのですが、会社の売上げの多くを経営者が担っている場合、経営者に万一のことがあると売上げが激減し、赤字状態に陥ってしまうこともあります。
この点、貯蓄性のある法人保険に加入していれば、赤字の年度にこれを解約し、受け取った解約返戻金で赤字の穴埋めをすることができます。また、死亡保障を受けられる法人保険に加入していれば、経営者に万一のことがあった場合に保険金が給付され、これを死亡退職金の支払いや経営者の離脱によって減少した売上げの補填に活用することもできるでしょう。
事業資金や退職金を準備できる
法人は、設備投資費用や修繕費、役員の退職金など、多額の支出に備えて資金を積立てておかなければなりません。
これを現金で積立てる場合、当該事業年度の利益がその原資となります。法人の利益は課税対象となりますので、例えば利益から毎年500万円を積立てる場合、実際に積立てられるのは税引き後の金額となります。
これに対して法人保険を活用する場合、負担する保険料の一部を損金処理することができます。例えば、契約者と解約返戻金の受取人を法人に、被保険者を従業員に、死亡保険金の受取人を被保険者の遺族とする養老保険を活用する場合、負担保険料の半額を損金に算入することが認められているのです。そうすると、現金で積立てる場合と同じく毎年500万円の保険料を負担するとしても、損金算入できない250万円のみ、利益から支払うことになります。
つまり、同じ額の積立てをする場合でも現金で行うのと法人保険で行うのとでは、法人税の負担額や実際に積立てられる金額に、大きな差が生じるのです。
福利厚生に資する
法人保険に加入することには、会社の福利厚生制度を充実させられる、というメリットもあります。
退職金は従業員の老後の生活保障としての性格が強いため、法人が養老保険に加入して退職金の積立てをしてくれているということは、従業員にとって大きな魅力であるといえます。また、契約者を法人、被保険者を従業員とする医療保険に加入すれば、従業員が入院をしたり手術を受けたりした場合に、給付された保険金を原資に見舞金を支給することもできます。
福利厚生制度の整っている会社は従業員にとって魅力的であるため長期雇用を促進する効果が期待できますし、有能な人材を確保するうえでも有利に働くでしょう。
法人保険加入のデメリット
受け取った保険金は課税対象となる
上述のように法人保険には、法人税対策ができるというメリットがあります。しかし、法保険を活用してできるのは、「法人税の繰り延べ」にすぎません。
確かに、法人保険に加入する「入口」の部分においては負担保険料を損金処理することができますが、保険金や解約返戻金を受け取る「出口」の部分においては、これが益金に算入され法人税の課税対象になるのです。
ただし、法人税が課せられるのは、当該事業年度の「利益」に対してです。そのため、赤字の年度に解約返戻金を受け取ったり、給付された保険金を退職金の支払等に充ててこれを損金処理したりすれば、このデメリットに関してはある程度回避できるでしょう。
解約時期によっては損をする
逓増定期保険や養老保険をはじめとする、貯蓄性の高い法人保険は、契約年数の経過に伴い解約返戻率が上がっていきます。解約返戻率の推移は商品によって異なりますが、加入後数年で解約する場合、払込保険料の30%~40%程度しか返還されないことも少なくありません。
つまり法人保険には、早期に解約すると損をする可能性があるというデメリットがあるのです。
法人保険は、商品によって解約返戻率がピークに達する時期が異なります。中には、満期前に解約返戻率がピークに達し、それ以降は徐々に下がっていく商品もあります。そのため法人保険に加入する際は、いつ解約をするのか、そのタイミングをしっかり見据えておくことが大切です。
資金繰り悪化の可能性
法人保険は、一度加入したら解約するまでの間、あるいは満期を迎えるまでの間、毎年保険料を払い続けなければなりません。そのため、あまりに高額な保険料の法人保険に加入すると、それが原因で資金繰りが悪化してしまう可能性があるのです。そして資金繰りの悪化は、経営状態にも大きな影響を及ぼします。
法人税対策のために法人保険に加入する場合も当該事業年度の利益を減らすことばかり考えるのではなく、この保険料を支払い続けられるのか、支払い続けられたとしても会社の資金繰りが悪くなるようなことはないか、慎重に検討する必要があるでしょう。
まとめ
ココがポイント
法人保険はメリット・デメリットを正しく理解することが大切
以上のように法人保険には、様々なメリットがある反面、色々なデメリットも存在します。そしてそのデメリットの中には、経営に深刻な影響を及ぼしたり、払込保険料に比して少ない解約返戻金しか受け取れなかったりと、法人にとって大きな不利益になるものもあります。法人保険への加入を検討するにあたっては、加入しようとしている商品にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、加入した場合にどのようなリスクが想定されるのか、しっかり考えておくことが大切です。