SBI生命保険株式会社
コのほけん!編集部
松本さん
私は大学時代、経済学部で学んでいました。当時、就職活動で金融機関を志す同級生が多く、私も金融機関に関心を持ちましたが、特に生命保険という分野は人の生死との関連が深いことから、他の業界とは異なった、ある種厳粛な意義があると感じました。さらに、私が生命保険に持っているイメージはどちらかというと地味だが、縁の下の力持ちとでも言うのでしょうか。そのようなイメージが私自身の性格にも合っていると思い、ご縁もあって入社しました。
コのほけん!編集部
生命保険業界を志望された当時から商品開発の部門を志されていたのですか?
松本さん
最初から商品開発部門を志望していたわけではありません。私が生命保険業界に入ったのは今から約30年前のことです。最初は東北地方の営業所に配属され、営業の仕事に携わり、基本を学びました。その後の人事異動で商品開発の部門に配属になったのですが、当時、各生命保険会社が売っていた保険商品やその保険料は、一部の会社を除いてほとんど同じという状況で、そもそも保険会社に商品開発という仕事があることすら知らなかったぐらいです。ですが、私が配属された頃から商品の自由競争が進み、商品開発の重要性は年を追うごとに高まってきたと思います。私自身もそれ以来ほぼ一貫して商品開発の仕事に携わっています。
コのほけん!編集部
松本さん
商品開発は会社全体で見ると幅広い業務で、様々なフェーズとタスクがありますが、私が所属する商品部でのコア業務は3つあります。
1つ目は商品企画で、商品のコンセプトを決めることです。どんな商品を作るのかということを決めます。たとえば、医療保険であれば、保障内容や保険料水準などのコンセプトを企画します。
2つ目は約款と事業方法書という文書を作ることです。具体的には、契約内容を明確にすること、商品の取扱範囲等を定めることです。
3つ目は保険料の計算で、これはアクチュアリーという保険数理の専門家によって行われます。
私の現在の立場では、全体を統括し、商品企画や約款・事業方法書の作成を主に行っています。これは作成だけでなく、金融庁に申請する必要もあります。現在、金融庁への申請は、リモートでの面談やメール等を通じて行うのですが、先方からの質問や要望に対応して追加資料を提出する必要があったり、場合によっては商品内容を見直さなければいけないこともあります。
コのほけん!編集部
松本さん
当社はインターネットチャネルを中心とした商品展開を行っておりますので、商品を開発するにあたっては、まずインターネットのお客さまを意識しています。
特に、リテラシーを持っていて、かつ、自分で調べるというある意味アクティブなお客さまのことを「スマートコンシューマー」と呼んでいるのですが、そういったお客さまが納得してお金をかけられるものであることを大事に考えています。
このような考え方に基づき、新商品「SBI生命の終身医療保険Neo」を昨年11月から販売開始しました。この商品には、「リーズナブル」「シンプル」「フレキシブル」という3つの特徴があります。
従来よりも保険料を安くしており、一定の健康状態を満たしたお客さまには優良体料率が適用され、さらに保険料がお安くなることが特徴です。
優良体の判定基準については、過去1年以内の喫煙歴の有無と身長・体重だけを条件 ※1 としています。
※1 適用される保険料率の決定とご契約のお引受けに関する基準は同一ではありません(別途、告知事項がございます)。優良体料率または標準体料率でお申込みいただいたとしても、ご契約のお引受けができない場合や、特別保険料率でのお引受けとなる場合があります。特別保険料率でのお引受けとなる場合、別途お送りする承諾書にてご承諾いただきます。
保障内容はできるだけシンプルにしました。
オンラインでの保険加入においては、お客さまはPCやスマホの画面を見て自分で内容を理解し、判断することが必要になります。
保険商品は一般的に複雑であり、特に医療保険では保障範囲も多岐にわたるため、お客さまのニーズが高い保障に絞ることで、お客さまにとって分かりやすく、スムーズにお申込みいただけることを意識しています。
様々な捉え方ができますが、ここで言うところの「フレキシブル」とは、保険会社として、お客さまのご契約をお引受けする場合の柔軟性を指しています。
医療保険は、一般の死亡保険と比べて、保険に加入する際に細かい告知が必要となり、かつ、引受査定をする時に条件が厳しい傾向にあります。
そのため、なるべく、多くのお客様が保険に加入できるようにしたいということで2つの工夫をしました。
1つ目が「特別保険料制度」、2つ目は「特定疾病・部位不担保法」です。
血圧や血糖値が高い等の事情で、通常の保険料ではご契約のお引受けができない場合でも、少し割増した「特別保険料率」であればお引受けできる仕組み(特別保険料制度)を新たに設けました。
特定疾病・部位不担保法とは、特定の病気や体の部位に関しては、保険の保障の対象とせず給付金はお支払いしない条件でご契約をお引受けし、それ以外の病気・部位については、給付金をお支払いするという仕組みです。その不担保の疾病として、新しく精神疾患を追加しました。
コのほけん!編集部
健康で、保険会社の所定の条件に当てはまる方については保険料をさらにお手頃な価格にしつつ、一方で、今まで病歴により医療保険に加入が難しかった方でも入りやすいように、保険料の割増や病気や部位を不担保とすることで間口を広げたという理解でよろしいでしょうか。たとえば、うつ病の方は保険に加入することが難しいと聞きますが、実際、いかがでしょうか?
松本さん
うつ病については近年お申込みの際の告知が多く、これまで医療保険にご加入できなかった事例も多かったと聞いていますが、「SBI生命の終身医療保険Neo」では、特定疾病不担保の仕組みにより、うつ病の方でもお引受けできる事例が増えています。
コのほけん!編集部
SBI生命の終身医療保険Neoで、SBI生命の所定の条件を満たせば、これまで加入ができなかった方も加入できる可能性があるということですね。
松本さん
そうです。すべての方のご契約をお引受けすることまでは残念ながらできないのですが、従来商品よりも引受の範囲が広がっていますので、ぜひご検討いただければと思います。
おすすめのポイント
コのほけん!編集部
松本さん
すべての方におすすめしたいのですが、特におすすめするとしたら、この商品の特徴である優良体料率の条件に合うお客さまでしょうか。また、これまで一般的な医療保険へのご加入が難しかった方も、お手頃な保険料でご加入いただける可能性があるので、引受範囲の拡大の条件に合うお客さまにもおすすめです。
「SBI生命の終身医療保険Neo」おすすめはこんな人
SBI生命の「SBI生命の終身医療保険Neo」商品詳細ページはこちら
コのほけん!編集部
松本さん
先ほどお話をした「シンプル」という商品コンセプトに関わってきますが、保障内容が「シンプル」であることは、裏を返せば、保障内容のパターンが少ないということに繋がります。
保険商品として、こういう保障がつけられます、こんな保障もありますと幅広い保障を揃えて、お客さま自身に合ったものを選んでいただくという考え方や販売の仕方もあるのですが、メインチャネルがインターネットであることを考えた時に、保障を複雑にしてしまうということを避けたい、意図的にシンプルにしていこうという方針であるので、限られたパターンの中で、どうやってお客さまのボリュームゾーンに合致させるかというところが難しかったといえます。
もちろんお客さまのニーズを把握するためのアンケート等を実施し、確認したうえで保障内容を絞り込んでいるのですが、お客さまのニーズは十人十色であり、また時の経過と共にニーズも変化するので、絶対的正解はないと思っています。最終的には、私自身の経験値を基に判断している部分もありますが、商品は一度販売したらそれで終わりではありません。実際に保険商品を販売した後もお客さまの意見をうかがって改善していくということが必要です。
もう一つ苦労した点は「プライシング」、いわゆる保険料の設定、値付けと言われる部分です。ここが一番苦労したと言っていいと思います。
生命保険事業は公共性の高い事業であり、万一生命保険会社の経営状況が悪化すると経済に与える影響が大きいことから、国の免許制となっています。新しい保険商品を作る場合も、先ほどお話しした通り金融庁に申請して認可を取得する必要があります。
保険料は、純保険料というお客さまへの保険金等の支払いに充てる部分と、付加保険料という経費に充てる部分から成り立っています。金融庁に新しい保険商品の認可申請をした場合、主に純保険料の設定が合理的かどうか等の観点から審査が行われます。
たとえば、今までの保険料よりも安くしたいといった場合も、安くできるという根拠がないと認められません。
コのほけん!編集部
保険料が安くなるということは消費者にとってメリットだと思いますが、保険会社の事業が継続していくために、何故、保険料の割引ができるのかという根拠を示す必要があるということでしょうか?
松本さん
そうです。当然、データが必要となります。
保険料を安くできる根拠として、保険金等の支払いが起きる可能性が少ないということをデータで示す必要があります。たとえば、規模の大きな保険会社であれば、膨大なお客さまのデータ等を活用することが可能かと思われますが、当社の場合、活用可能なデータがありませんでした。
合理的に保険料を算出する必要があるのですが、優良体料率を採用するにあたり、どういうデータが必要で、どうすれば目標としている保険料水準が達成できるか等を見極めるのに半年くらい検討しました。
優良体料率もどういう条件にするかによって変わってきます。
漠然とした表現になりますが、健康状態がものすごくいい人ほど、保険料をもっと安くすることは理屈としては可能です。ただ、その健康状態の良さのハードルを上げすぎてしまうと、その条件に当てはまる人の数自体が非常に少なくなってしまい、商品として成立しません。
そのため、どういう条件であれば、どの程度保険料を割り引くことができるのか、なおかつ、大体どのくらいの人数が加入できるかという計算がセットで必要になります。
最終的には、最初にお話した通り、過去1年以内の喫煙状況と身長・体重だけになったのですが、当初は血圧やメタボなども条件の候補として入れていました。試算した結果、保険料が安くなるメリットよりも、保険加入対象者が減るデメリットの方が大きくなってしまいました。
そのため今の形に落ち着くまでに半年かかって、その後、今回の医療保険の保障内容に必要なデータを取得・分析し、事業方法書や普通保険約款、保険料及び責任準備金の算出方法書等を準備のうえ、金融庁に提出していろいろなやり取りを経て、実際の販売までにはさらに1年半ほどかかりました。
プライシングはすべてアクチュアリーの作業であり、このような地道な作業を粘り強くやり遂げたアクチュアリーのメンバーには本当に感謝しています。
生命保険会社の商品開発には、根拠となるデータが不可欠であり、そのためには時間がかかることがわかりました。適切なデータを収集して分析することは、生命保険商品の有効性や需要などを把握するために欠かせません。市場動向や顧客ニーズなどを把握して、適切な保険商品を開発することが重要になります。
「SBI生命の終身医療保険Neo」は、そうした開発経緯を経て、「リーズナブル」「シンプル」「フレキシブル」という3点にこだわって作られた保険商品であることがわかりました。
おすすめのポイント
「SBI生命の終身医療保険Neo」おすすめはこんな人
本インタビューがお客さまの保険選びの参考になれば幸いです。