自動車保険

法人の自動車保険とは?個人契約との違いや注意点、おすすめの保険会社も紹介!

法人が事業で自動車を使用する場合、万が一の事故に備えて自動車保険に加入することは、企業の社会的責任という観点からも重要です。

実際、業務中の事故は損害賠償や信用を失うリスクがあり、場合によっては事業の継続に影響を与える可能性もあります。このようなリスクを踏まえると、法人として最適な自動車保険を選ぶことは経営上の重要課題といえるでしょう。

とはいえ、「どの保険が自社に合っているのか?」「個人契約と何が違うのか?」といった疑問や不安を抱えている担当者の方も多いはずです。

この記事では、法人向け自動車保険の基本的な仕組みや個人契約との違い、さらにメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 法人向け自動車保険には、複数の車両をまとめて管理できる点や、補償範囲の広さ、保険料を経費として計上できることなど、個人の契約にはない経営面での様々な利点がある。
  • フリート契約の場合、事故発生の有無が保険料全体に大きく影響するため、事故防止への取り組みや、安全運転を推進する体制づくりが重要になる。
  • 法人向け自動車保険の補償内容や特約、年齢条件の設定などは事業の実態に合わせるとよい。保険会社の事故対応やサポート体制も必ず確認するのがおすすめ。

法人で自動車保険を契約するメリットとデメリット

法人で自動車保険を契約するメリットとデメリット

法人契約の自動車保険とは、契約者や記名被保険者(補償の対象者)を法人とする保険のことです。法人で自動車保険を契約する場合、個人契約とは異なるメリットやデメリットがあります。

法人の自動車保険の特徴とメリット

法人向け自動車保険の主な特徴・メリットは、以下の通りです。

  • 複数の車両をまとめて管理できる
  • 幅広い運転者・車種に対応できる
  • 事業活動に合わせた特約をセットできる
  • 保険料を経費として計上できる

所有・使用する自動車が10台以上の場合、「フリート契約」と呼ばれる法人向けの特別な契約形態を選べます。

所有・使用する自動車が9台以下の場合に適用される「ノンフリート契約」の場合、自動車1台ごとに契約が必要ですが、フリート契約の場合は契約者単位(法人ごと)の契約になるため、複数台をまとめて1つの契約で管理することが可能です。

自動車保険の契約形態

フリート契約の場合、最大70〜80%の割引率が適用されるため、ノンフリート契約(割引率は最大63%)よりも保険料を抑えられるメリットもあります。

また、役員や従業員など、業務で自動車を運転する可能性のある人を幅広く補償対象に設定できる点も特徴です。個人のように運転者を限定することによる割引は受けにくいものの、従業員の入れ替わりなどにも柔軟に対応できます。

個人向けの自動車保険では「自家用8車種(5車種)」と呼ばれる自動車しか契約できないケースが一般的です。しかし、法人向け自動車保険ではトラックやタクシーなどの「営業用」の自動車の契約にも対応しています。

自家用8車種とは

以下の用途と車種の自動車のこと。

  • 自家用普通乗用車
  • 自家用小型乗用車
  • 自家用軽四輪乗用車
  • 自家用小型貨物車
  • 自家用軽四輪貨物車
  • 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下・0.5トン超2トン以下)
  • 特種用途自動車

さらに、法人向けの自動車保険には、業務で預かった積荷に対する損害を補償する特約など、事業活動特有のリスクに対応するための特約が用意されている場合があります。個人向けの自動車保険よりも、事業に付随する幅広いリスクに対応できる点も大きな特徴です。

なお、法人向け自動車保険の保険料は、原則として損金算入が可能です。

法人の自動車保険のデメリット

法人向け自動車保険のデメリットは以下の通りです。

  • 個人向け自動車保険よりも保険料は高めに設定されている
  • フリート契約の場合は事故を起こすと保険料が割高になる

法人向け自動車保険では、複数の社員が自動車を運転する可能性があるため、基本的に運転者を限定できません。

また、業務で使用する場合、個人に比べると使用頻度が多くなりやすいため、事故の発生リスクは高くなります。そのため、1台あたりの保険料は個人向けの自動車保険よりも高めに設定されているケースが一般的です。

また、フリート契約とノンフリート契約では保険料の仕組みが大きく異なります。

フリート契約

ノンフリート契約

割引の適用単位

契約者ごと

自動車1台ごと

割増・割引を決定する要素

  • 前年のフリート割増引率
  • 総契約台数
  • 損害率(保険料に対する支払保険金の割合)
  • 前契約のノンフリート等級
  • 事故有係数適用期間
  • 保険期間
  • 事故件数
  • 事故内容

フリート契約には「等級」の概念がないため、契約全体の損害率などによって翌年度の割引率が大きく変動する可能性があります。

例えば、1台の自動車が大きな事故を起こして多額の保険金支払いが発生した場合、契約全体の割引率が下がり、翌年度の保険料が大幅に上昇するリスクがあるのです。

法人の自動車保険の補償内容とおすすめの選び方

法人の自動車保険の補償内容とおすすめの選び方

法人向け自動車保険を契約する際には、事業内容や自動車の使用状況に合わせて補償内容を決めましょう。

対人・対物など基本的な補償内容を確認する

法人向け自動車保険を契約する際は、まず基本的な補償内容を確認しておきましょう。

補償項目

補償内容

対人賠償保険

自動車事故により他人を死傷させてしまい、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる。

対物賠償保険

自動車事故により他人の財物(自動車、家屋、電柱など)に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる。

人身傷害保険

契約車両に搭乗中の人が自動車事故により死傷した場合に、過失割合にかかわらず保険金が支払われる。

車両保険

契約車両が事故や盗難、自然災害などにより損害を被った場合に保険金が支払われる。

自賠責保険だけではカバーしきれない高額な賠償に備えるため、対人・対物賠償の保険金額は「無制限」で契約するのが一般的です。

また、人身傷害保険は治療費や休業損害などを幅広く補償できます。従業員の福利厚生という観点からも、無制限に設定しておいた方が良いでしょう。

車両保険は保険金額によっては保険料が高くなることもあるため、事業リスクに応じて免責金額(自己負担額)や補償範囲(一般条件かエコノミーか)を細かく設定することをおすすめします。

法人向け自動車保険特有の特約を確認する

法人向けの自動車保険には、個人向け自動車保険にはない特約が付帯できる場合があります。

補償項目

補償内容

運送業者賠償責任保険

運送業務中に預かった荷物に損害を与えてしまった場合に、荷主に対する賠償責任を補償する。

企業・団体見舞費用特約

対人・対物事故を起こし、相手方に見舞金を支払った場合の費用を補償する。

事業用積載動産特約

衝突や盗難、自然災害などによってトランクや荷台に積んだ商品や什器などが損害を受けた場合に補償する。

事業内容やリスクを分析した上で、必要な特約を選択しましょう。

年齢条件を適切に決める

法人向け自動車保険を契約する際は、年齢条件を適切に設定しましょう。

年齢条件とは、補償対象となる運転者の年齢を限定するものです。年齢条件に該当しない人が運転をして事故を起こしても、原則として保険金は支払われません。

法人向け自動車保険の場合、年齢条件は以下の中から選択するケースが一般的です。

  • 年齢問わず補償
  • 21歳以上
  • 26歳以上

役員や従業員など、業務で運転する可能性のある人が幅広く補償されるよう設定しましょう。若い従業員が運転する可能性がある場合は、年齢条件を緩めるか、全年齢補償(年齢問わず補償)にする必要があります。

なお、フリート契約の場合、年齢条件は設定できません

法人の自動車保険と個人の自動車保険の違いと注意点

法人契約と個人契約の自動車保険は、契約の対象や補償内容などが大きく異なります。それぞれの特徴や、法人・個人間で契約を引き継ぐ方法などを理解しておきましょう。

法人契約・個人契約による自動車保険の違いとは

法人契約の自動車保険と、個人契約の自動車保険の違いは以下の通りです。

法人契約

個人契約

契約者

法人

個人

記名被保険者

法人

個人

運転者の範囲

限定できない

限定できる

使用目的

業務使用のみ

  • 日常・レジャー使用
  • 通勤・通学使用
  • 業務使用

フリート契約

可能

不可

免許証の色による割引

なし

あり

対応車種

全用途車種

自家用8車種

経費計上

可能

使用目的が「業務使用」であれば可能

法人向け自動車保険は、補償対象者や契約できる用途車種の範囲が幅広く、事業で利用することを前提として柔軟に契約内容を決められるのが特徴です。

一方、個人向け自動車保険は運転者の範囲や使用目的、免許証の色など細かく条件を設定することで、保険料を調整しやすいという利点があります。

なお、実際の契約条件は商品によって異なるため、保険会社に問い合わせて確認することをおすすめします。

法人・個人間で自動車保険の名義変更・等級の引き継ぎはできる?

個人事業主が法人を設立した場合や、法人を解散して個人事業主になる場合など、一定の条件(事業の継続性が認められる、車両の所有者・使用者が同一であるなど)を満たせば、名義変更をして等級を法人・個人間で引き継げる可能性があります。

ただし、等級継承が認められるかどうかは各保険会社の判断によるため、該当する可能性がある場合は、必ず事前に相談して手続きを進めましょう。登記簿謄本や決算書などの書類提出が必要になるケースもあります。

関連記事:自動車保険の等級とは?スタートは何等級から?他社・親子の等級引継ぎのポイントも解説

おすすめの法人向け自動車保険を紹介

おすすめの法人向け自動車保険を紹介

多くの保険会社が法人向けの自動車保険を取り扱っていますが、どのような点に注目して比較検討すればよいのでしょうか。

自社に最適な保険を選ぶためにチェックすべきポイントや、おすすめの保険商品を紹介します。

法人向け自動車保険に強い保険会社のポイント

法人向けの自動車保険を選ぶ際は、以下のポイントに注目して保険会社を選びましょう。

  • フリート契約を取り扱っているか
  • 業種別のリスクに対応できる商品があるか
  • 事故対応は丁寧か

10台以上車両を保有している場合は、フリート契約を取り扱っている保険会社を選ぶのがおすすめです。

フリート契約の実績が豊富な保険会社を選ぶと、事故防止支援やリスクコンサルティングなどのサービスを受けられる場合もあります。ダイレクト型(通販型)よりも、代理店型の保険会社の方がフリート契約を取り扱っている可能性は高いでしょう。

また、運送業や製造業など、業種特有のリスクに対応できる商品を取り扱っている保険会社を選べば、きめ細かいニーズに対応できます。

万が一の事故時に迅速かつ適切な対応ができる保険会社を選ぶことは、企業の信用維持にもつながります。24時間対応の事故受付や、専任の担当者によるサポート体制が整っているかを確認しましょう。

単に保険料が安いところを探すのではなく、補償内容やサービス面を重視して選ぶことをおすすめします。

おすすめの法人向け自動車保険

おすすめの自動車保険を代理店型(対面型)とダイレクト型(通販型)に分けて紹介します。

代理店型(対面型)

代理店型の自動車保険は、保険代理店の担当者と直接相談しながら、自社のリスクや要望に応じたオーダーメイドに近い保険プランを設計できるのが魅力です。

フリート契約のように契約内容が複雑になりやすい場合でも、対面で丁寧に説明してもらえるため、理解を深めやすいでしょう。

事故発生時のサポートや車両の入れ替え、名義変更などの各種手続きも、日頃から付き合いのある担当者が窓口となるため、親身な対応に期待できます。

東京海上日動火災保険

全国に200以上の損害サービス拠点があり、10,000名以上の損害サービス担当スタッフによる事故対応サポートを受けることができます。

あいおいニッセイ同和損保

安全運転スコアに応じた保険料割引・安全運転アドバイスなどのサービスがあります。

損保ジャパン

受託貨物賠償責任特約や安全運転教育費用特約など、事業者向けの特約が充実しています。

ダイレクト型(通販型)

法人契約に対応しているダイレクト型の自動車保険(ネット保険)は多くありませんが、保険会社によっては、個人向け商品をベースに法人契約にも対応している場合があります。

代理店型とは異なり、車種の制限(「自家用5車種に限る」など)を設けており、ノンフリート契約のみの取扱いとなるケースが一般的です。そのため、トラック・バス・タクシーなどの営業用自動車は契約できない可能性もあります。

一方で、代理店を通さずインターネットや電話で保険会社と直接契約するため、中間コストを削減でき、保険料を抑えやすい点は魅力です。保有台数が少なく、シンプルな補償内容を求める場合や、補償内容を自分で判断して決められる場合に向いています。

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関連記事:ダイレクト型自動車保険に乗り換える際の注意点や手続き方法を解説

まとめ

法人向け自動車保険には、複数の車両を一括して契約・管理できる、保険料を経費として処理できるといった特徴があります。さらに、業種ごとのリスクに対応する特約を追加できる点も法人契約ならではの強みです。

ただし、個人契約と比べて保険料が高めに設定されていることが多く、フリート契約の場合は事故の発生状況によって翌年度の保険料が大きく変動する点には注意が必要です。

実際に保険を検討する際は契約内容の柔軟性、事故時の対応力、そして自社の業種や使用状況に適した補償内容が用意されているかを基準に、比較・検討しましょう。

「どの保険を選べばよいか分からない」「自社に合った補償がどれか判断が難しい」と感じた場合は、「コのほけん!」の無料オンライン保険相談を活用してみてください。

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