自転車保険の義務化について解説!入らないとどうなる?罰則はある?
自転車は、移動手段としてもスポーツ・レジャーなどに利用されますが、事故やトラブル、盗難などのリスクが伴うため、自転車保険が必要となります。本記事では、自転車保険の義務化について、入らないとどうなるか、罰則はあるか、自転車保険を加入するときの注意点などを解説します。
自転車保険とは?
自転車保険とは、自転車に関連する事故やトラブル、盗難などのリスクをカバーする保険のことです。
保険がカバーする範囲(補償範囲)は保険会社によって異なります。一般的には自転車の修理費用や盗難の賠償、交通事故による負傷や死亡などに対する賠償などが含まれます。また、保険料や保険金額も保険会社や保険商品によって異なります。
自転車保険に加入することで、自転車に乗ることで発生するリスクがもたらす経済的負担を最小限に抑えることができます。
自転車保険にはいくつかの種類があって、傷害保険、自動車保険や火災保険等に付帯(ついている)の個人賠償責任補償特約でカバーされるケースと、単体の自転車保険等があります。
自転車保険が必要になると考えられるケース
- 自分が加害者になるパターン:自転車のブレーキが間に合わず、歩行者と接触、歩行者が全治6ヶ月のケガを負った
- 自分が被害者になるパターン:道路で走行中に転倒し、自動車と接触、全治3ヶ月のケガを負った
自転車保険の補償内容(一例)
補償 | 補償の内容 |
損害賠償責任への補償 | 自転車事故により他者へ損害を与えた場合の賠償責任による補償が受けられる |
死亡保険金 | 自転車事故により被保険者死亡の場合に死亡保険金が支払われる |
自分自身に関する入院給付金 | 自転車事故により、被保険者が入院・手術をした場合に、入院給付金や手術給付金を受け取れる |
示談交渉サービス | 被保険者の代わりに事故の相手方との調整を行う |
弁護士費用 | 事故の被害を受け、相手方への損害賠償請求を弁護士に委任した場合に負担した費用が補償される |
車両盗難特約 | 自転車が万一の盗難に遭った場合に、保険金を受けとれる |
いつから自転車保険が義務化になった?義務化になった背景
自転車保険の義務化は、自治体の条例等で定められています。
日本で初めて自転車保険の義務化を条例で制定したのは「兵庫県」(平成27年10月)でした。
義務化の背景には、自転車の交通事故によって被害者に後遺症が残ってしまう事例や死亡する事例が相次いで発生し、裁判で高額の賠償の判決が相次いだことが挙げられます。自転車による交通事故のリスクが高いこと、加害者が被害者に対する賠償責任を果たすための能力を持っていないといった問題を解決することが目的です。
自転車保険の義務化の時期は地域によって異なります。自転車に関連するリスクを最小限に抑え、被害者に対する責任を持っていることを前提として設けられました。
地方公共団体の条例の制定状況(令和4年4月1日現在)
(国土交通省調べ)
※引用元:自転車活用推進官民連携協議会
自転車保険に入らないとどうなる?罰則はある?
自転車保険に入らないと、自転車に関連する事故やトラブル、盗難などのリスクが生じた場合に、自分自身で費用や負傷などに対する責任を負うことになります。
たとえば、自分が加害者となった場合、被害者からの賠償請求に対して、高額な賠償金額を全額自己負担することになります。
なお、現状では、自転車保険に入らないことによる罰則はありません。
次の表は、自転車事故の賠償額の事例です。
賠償の高額事例
賠償額(万円) | 裁判所 | 判決日 | 被害者 | 被害内容 | 加害者 |
9,521 | 神戸 | 平成25年7月4日 | 62歳女性 | 歩行者 後遺障害 | 11歳小学生 無灯火 |
9,266 | 東京 | 平成20年6月5日 | 24歳男性 | 自転車運転 後遺障害 | 男子高校生 交通違反 |
6,779 | 東京 | 平成15年9月30日 | 38歳女性 | 歩行者 死亡 | 男性 交差点進行 |
5,438 | 東京 | 平成19年4月11日 | 55歳女性 | 歩行者 死亡 | 男性 信号無視 |
4,746 | 東京 | 平成26年1月28日 | 75歳女性 | 歩行者 死亡 | 男性 信号無視 |
※出典:国土交通省 第1回 自転車の運行による損害賠償保障制度のあり方等に関する検討会 配付資料 – 国土交通省
繰り返しになりますが、自転車保険に入らないということは、自転車に関連するリスクを最小限に抑えられず、被害者に対する責任を果たせないことを意味します。
自転車保険に加入するときの注意点
まず、自転車保険に加入する必要があるかどうか確認をします。次の4つのすべてに当てはまらないのであれば、自転車保険に加入しましょう。
自転車保険に加入する必要があるかどうかのチェックポイント
- 個人賠償責任保険に入っていないかどうか?
- 傷害保険、自動車保険、火災保険等に個人賠償責任補償特約がついていないかどうか?
- 共済やPTAや学校等で団体加入する保険に個人賠償責任保険がついていないかどうか?
- 利用している自転車に、TSマークがついていないかどうか?
TSマークは、自転車安全整備店に勤務する自転車安全整備士が、点検確認した安全な自転車に貼るシールです。点検日から1年以内のTSマークが貼られた自転車の事故によって他人に死亡又は重度後遺障害を負わせたことによる法律上の賠償責任が補償されます。
※TSマークの有効期間を過ぎた場合は、自転車安全整備店で点検確認を行いましょう。
※TSマークの色によって、賠償責任の補償限度額が異なります(赤色1億円、青色1,000万円)。
自転車保険に加入するときの注意点としては以下が挙げられます。
- パンフレットや保険約款などを詳細に読んで理解すること
- 保険内容と保険金額(補償限度額)を適切に選ぶこと
- 自身のニーズやリスクに合った保険を選ぶこと
自転車保険に加入するときには、保険会社や代理店などからの情報を収集して、保険内容や保険料、サービスなども比較して、自分自身に適した保険を選ぶことが重要です。
パンフレットや保険約款などを詳細に読んで理解すること
自転車保険は、パンフレットや保険約款に重要な事柄が記載されています。約款には、保険内容、保険金額、保険期間などが明示されています。よく読んで、保険料や保険内容、期間などについて理解することが大切です。
補償内容と保険金額(補償限度額)を適切に選ぶこと
自転車保険には、事故保険や盗難保険など様々な補償内容があります。自分のニーズやリスクに合った補償内容を選ぶことが大切です。特に、保険金額(補償限度額)に関しては、対人に関しては可能であれば無制限、難しければ1億円を設定したいところです。
自身のニーズやリスクに合った保険を選ぶこと
自転車の使用頻度や走行距離、使用するエリアなどによってリスクが異なります。このため、自分のニーズやリスクに合った保険を選ぶことが大切です。保険内容や保険金額、保険期間などを考慮し、自身のニーズに合った保険を選ぶことが大切です。
自動車保険と同様に、最近の自転車保険もリスク細分型が主流になっています。
関連記事:自転車保険は強制保険にすべきか?その必要性と社会的意義について
まとめ
自転車保険は、自転車に関連する事故やトラブル、盗難などのリスクをカバーすることができます。今後、国の法律により義務化された場合には、自転車保険に入らないといった違法行為に対して罰則が設けられる可能性もあります。
自転車保険に加入するときには、保険規約や保険料、保険内容などを詳細に読み理解し、自分に合った保険を選ぶことが重要です。
自転車保険は、自転車に関連するリスクを最小限に抑え、被害者に対する賠償責任を果たすことができるようになります。