要注意!一時払い終身保険のデメリットとは?選び方のポイントも解説
退職金など、まとまった資金の運用先として「一時払い終身保険」を検討している人もいるでしょう。一度の支払いで一生涯の保障が手に入り、解約するタイミングによっては払い込んだ保険料よりも多くの解約返戻金を受け取れる可能性もあるため、魅力的に映るかもしれません。
しかし、安易に契約すると後悔する場合もあるため、デメリットやリスクを把握しておきましょう。
この記事では、一時払い終身保険の仕組みや主なデメリットとメリット、選び方のポイントをわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 一時払い終身保険は、一度の支払いで一生涯の保障を確保できるが、早期解約による元本割れリスクがある。
- 一時払い終身保険で生命保険料控除を受けられるのは保険料を払い込んだ年の1回のみであり、節税効果は限定的である。
- 一時払い終身保険は大きな資金を長期間拘束するため、他の運用機会を失う可能性がある。よって「余裕資金」を保険料支払いに充てることが望ましい。
一時払い終身保険とは

一時払い終身保険とは、契約時に保険料全額をまとめて支払うタイプの終身保険です。
被保険者が亡くなったときや、所定の高度障害状態になったときに、保険金が支払われます。解約しない限り、一生涯にわたって保障が続く点が特徴です。
また、解約時には契約からの経過期間に応じた解約返戻金を受け取れます。
契約後の保険料の支払いはないため、退職金など、まとまった資金の運用先のひとつとして検討されることが多い商品です。
なお、日本円で運用する「円建一時払終身保険」のほかに、米ドルや豪ドルなどの外貨で運用する「外貨建一時払終身保険」があります。

一時払い終身保険のデメリットとは
一時払い終身保険には、主に以下のようなデメリットがあります。
- 早期解約すると元本割れするリスクがある
- 生命保険料控除を受けられるのは1回のみ
- まとまった資金が必要で機会損失につながる可能性がある
メリットだけではなくデメリットにも目を向けた上で、慎重に判断しましょう、
早期解約すると元本割れするリスクがある
一時払い終身保険を早期に解約すると、払い込んだ保険料の総額よりも解約返戻金が少なくなり、元本割れを起こす可能性があります。

払い込んだ保険料は全額が運用に回されるわけではなく、一部は保険会社の運営費用や、将来の保険金支払いのための財源などに充てられます。
そのため、契約して間もないうちに解約すると、これらの費用が差し引かれるため、解約返戻金は少なくなってしまうのです。
どのくらいの期間で解約返戻金が払込額を上回るかは、商品や契約年齢によって異なります。一般的に5〜10年程度での解約は元本割れのリスクがあると考えておくとよいでしょう。
一時払い終身保険は、あくまで長期間使う予定のない余裕資金で契約することをおすすめします。
生命保険料控除を受けられるのは1回のみ
生命保険料控除とは、1年間に支払った保険料の金額に応じて、その年の所得から一定額を差し引ける制度です。所得が少なくなることで、所得税や住民税の負担を軽減できます。
「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険控除」の3つの控除枠(※契約日が2011年12月31日以前の場合「介護医療保険料控除」は対象外)があり、それぞれ所得税は最大4万円、住民税は最大2.8万円の所得控除が受けられます。
■ 新制度(契約日が2012年1月1日以降)
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険控除
各控除の上限額 | 3種類合計の上限額 | |
---|---|---|
所得税 | 4万円 | 12万円 |
住民税 | 2.8万円 | 7万円 |
■ 旧制度(契約日が2011年12月31日以前)
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険控除
各控除の上限額 | 2種類合計の最大額 | |
---|---|---|
所得税 | 5万円 | 10万円 |
住民税 | 3.5万円 | 7万円 |
生命保険料控除は、保険料を払い込んだ年にしか適用されません。保険料を一括で払い込む一時払い終身保険の場合、控除を受けられるのは保険料を払い込んだ年の1回のみです。
月払い(年間払込保険料10万円)の終身保険を契約した場合、10年経過時点での払い込み保険料総額は100万円で、控除合計額は40万円(=4万円×10年)です。
一方、一時払い保険料100万円の一時払い終身保険を契約した場合、控除を受けられるのは初年度のみのため、控除額は4万円となり、控除額に36万円もの差が生じます。
このように、長期間にわたって保険料を支払う契約と比べると、一時払い終身保険の税制上の恩恵は限定的です。所得税や住民税の税率が高い人ほど、節税効果に大きな違いが出るため、注意しましょう。
まとまった資金が必要で機会損失につながる可能性がある
一時払い終身保険では最低保険料が決まっている商品が多く、最初に100〜200万円程度の資金が必要になるケースが一般的です。一方で、早期解約すると元本割れにつながるため、一度預けた資金は長期間拘束されることになります。
一時払い終身保険は死亡保障があり、一定年数が経過すれば払込保険料を上回る可能性があるという点で、安定した運用に期待できるものの、投資信託や株式など他の金融商品に比べると大きなリターンには期待できません。将来インフレが進行した場合、受け取れる保険金や解約返戻金の価値が実質的に目減りしてしまう可能性もあります。
資金が固定されることで、より高いリターンを狙う選択肢を失ってしまうことは、一時払い保険のデメリットといえるでしょう。
一時払い終身保険の主なメリット
一時払い終身保険にはデメリットだけではなく、以下のようなメリットがあります。
- 契約した時点で一生涯の保障を確保できる
- 相続対策として活用しやすい
- 長期間継続すると解約返戻金が払込保険料を上回る場合がある
加入目的によってはメリットの大きい保険です。
契約した時点で一生涯の保障を確保できる
一時払い終身保険のメリットは、契約時に保険料を全額払い込むことで、その後の負担なく一生涯の死亡保障を確保できる点です。
月払いや年払いの保険では、収入の減少などによって保険料の支払いが困難になると、契約が失効して保障がなくなってしまうリスクがあります。
一方、一時払い終身保険は一度手続きを済ませれば、解約しない限り万が一のときの備えが継続するため、保障が必要になる可能性が高い高齢期に、保障が途切れる心配がありません。
なお、契約から一定年数が経過すると、払い込んだ保険料を上回る死亡保険金が支払われる商品が多くなっています。
相続対策として活用しやすい
一時払い終身保険は、相続対策の観点でも大いに役立ちます。
死亡保険金は、保険金受取人に指定された人の「固有の財産」とみなされます。遺産分割協議の対象外となるため、遺産争いを避けながら、渡したい人に確実に資産を残すことが可能です。
また、被相続人が亡くなると銀行口座は凍結され、預金の引き出しには複雑な手続きが必要になる場合も少なくありません。しかし、死亡保険金は受取人が請求すれば5営業日程度で受け取れるため、当面の生活費や葬儀費用に充てられ、遺族の金銭的な負担を軽くできます。
さらに死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。例えば、法定相続人が3人(配偶者、子2人)いるケースで、現金1,500万円を残した場合、1,500万円全額が相続税の課税対象です。一方、1,500万円を一時払い終身保険で残した場合、保険金として受け取る1,500万円には相続税がかかりません。

このように、一時払い終身保険を活用することで、課税対象となる遺産を圧縮し、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。
関連記事:一時払い終身保険で相続対策はできる?メリットと注意点を徹底解説
長期間継続すると解約返戻金が払込保険料を上回る場合がある
一時払い終身保険で払い込んだ保険料の一部は保険会社によって運用されるため、解約時には「解約返戻金」が戻ってきます。
契約期間が経過するほど解約返戻金は増えていく傾向にあるため、一定期間を超えると解約返戻金が払込保険料を上回ることがあります。
この特徴を利用して、子どもの教育資金や自身の老後資金を計画的に準備する手段として活用することも可能です。
なお、一時払い終身保険の解約返戻率(解約返戻金額÷払込保険料総額)が100%を超えるまでの期間は、平準払い(月払いや年払いなど)の終身保険よりも短くなる傾向があります。
一時払い終身保険の選び方のポイント
デメリットとメリットを踏まえ、自分に合った一時払い終身保険を選ぶにはどうすればよいのでしょうか。契約後に後悔しないために、確認すべき3つのポイントを解説します。
加入目的と払込可能額を明確にする
まずは、何のために保険に加入するのか、目的をはっきりさせましょう。
加入目的によって、必要な保障額は変わります。例えば、相続対策が目的であれば、どの相続人にいくらの資産を確実に残したいのかを明確にします。自身の葬儀費用に備えたいのであれば、一般的な費用の目安である200万円程度を基準に考えるとよいでしょう。
必要保障額が明確になったら、次にその保険料を支払う余裕があるかを確認しましょう。当面使う予定のない「余裕資金」を一時払いの保険料に充てることをおすすめします。
各社の返戻率をチェックする
複数の保険会社から見積もりを取り寄せ、「解約返戻率」の推移を比較しましょう。
同じ保険料を払い込んでも、商品によって解約返戻金の増え方は異なります。比較する際は、以下の点を確認してください。
- 返戻率が100%を超えるタイミング
- 5年後、10年後、20年後の返戻率
- 契約時の積立利率や最低保証利率
- 積立利率の見直しの有無やタイミング
契約日時点での積立利率が一定期間(5年や10年など)適用される商品も多いため、契約タイミングについては慎重に検討しましょう。
外貨建ての場合は為替リスクや手数料を確認する
外貨建一時払終身保険は円建一時払終身保険に比べて予定利率が高い傾向にあり、より高いリターンに期待できるのが魅力です。
しかし、外貨建て商品には保険料の払込み時や、保険金・解約返戻金の受取り時の為替レートによって、円換算したときの金額が変動する「為替リスク」があります。契約時よりも円高が進んだ場合は、保険金額や解約返戻金額が払込保険料を下回り、元本割れするケースも少なくありません。
また、円を外貨に換えたり、外貨を円に換えたりするときに「為替手数料」がかかります。
円建てよりも複雑な仕組みの商品も多いため、為替リスクや手数料について十分に説明を受け、納得したうえで契約するようにしてください。
関連記事:今注目のドル建て一時払い終身保険とは?仕組みと注意点、選び方のポイントを徹底解説!
まとめ
一時払い終身保険は、契約した時点で一生涯の保障を確保でき、長期的に見れば資産形成や相続対策に役立つ可能性がある商品です。
一方で、早期解約による元本割れリスクや資金の長期固定化による機会損失、生命保険料控除が1回しか適用されないといったデメリットも存在します。
これらのメリット・デメリットを天秤にかけ、自身のライフプランや資産状況、保険の加入目的に照らし合わせて、慎重に契約を判断しましょう。
判断に迷う場合はコのほけん!の無料保険相談を活用し、専門家の意見を聞いてみるのもおすすめです。