賃貸なら火災保険や家財保険に自分で加入しなくてもいい?賃貸における火災保険・家財保険の必要性を解説!
マイホーム(戸建て・分譲マンション等)を購入する場合は火災保険へ加入しますが、賃貸物件に入居する際は家財保険と個人賠償責任保険へ加入することが一般的です。本記事では、賃貸物件における火災保険・家財保険の必要性や加入の際の注意点、また保険の選び方などについて解説します。
賃貸なら火災保険(家財保険)・借家人賠償責任保険・個人賠償責任保険に加入!
マイホームを購入する場合は火災保険の加入、賃貸には火災保険(家財保険)・借家人賠償責任保険・個人賠償責任保険の加入が一般的です。
火災保険は、自宅が火災などの災害にあい、家や家財が燃えたり壊れたりしたときに発生する経済的損失に備える保険です。購入した物件の場合、建物のみや、建物と家財の両方に火災保険をかけることが多いようです。
一方で、家財保険は、自宅が火災をはじめとする災害やトラブルで、家財が壊れるなどの損害を受けたときの経済的損失に備える保険です。
なお、賃貸物件を借りている人は、建物部分についての火災保険の加入は不要です。賃貸物件は、建物のオーナー(大家さん)が火災保険に加入しており、部屋を借りている人が建物に対する補償に申込をする必要がないためです。
一方で、ご自身の家財に対する補償や、何らかの不測の事態での損害を与えてしまった場合に保険に加入して備える必要があります。
関連記事:火災保険の基礎知識
賃貸物件の現状回復義務には家財保険で備える
一般的な賃貸借契約では、賃借人は借りていた物件を退去する場合、借りてから生じた損傷を回復(損傷がない状態にする)して明け渡さなければならない「原状回復義務」もしくは「原状復帰義務」が定められていることが多いです。
生活をする中で、誤ってフローリングや壁紙を傷つけてしまった、汚してしまった等があり、借りている部屋から引っ越す場合は、元の傷のない、もしくは汚れのない状態に戻す必要があります。
入居時に敷金を支払っている物件は清掃費用を敷金から捻出することが多いのですが、この敷金でまかないきれない場合は、原状回復費用を請求される可能性があります。
また、自分自身の失火による火災が発生して、借りている部屋を原状回復(借りた当時と同じ状態)した状態で大家さんに返せない場合、民法第415条の債務不履行となり損害賠償責任が発生します。
賃貸住宅では、大家さんへの高額になりがちな賠償責任のために、家財保険に加入する必要があります。
賃貸契約する際の加入条件となる火災保険は、「借家人賠償責任保険」が含まれたものが一般的です。
火事が起きた場合の責任は?
日本は、民法の失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)で、重大な過失がない限り、自分が原因の火災で隣の家に火が燃え移っても損害賠償する必要はありません。
それは、近所の家からの火災・もらい火などで、自分の家が損害を受けた場合は賠償されないということを意味しています。
失火原因の相手方が、家具や財産の弁償をするなら良いのですが、この失火責任法により、もらい火による損害は原則、賠償しなくても良いため、ご自分で備える必要があります。
家電や家具、衣類などの一つ一つは大したことがないのですが、火事で全て焼けてしまった場合、買い揃えるのにかなり費用が必要になります。そんなときに、家財保険が役に立ちます。
賃貸住宅用の火災保険の補償は大きく3つ
賃貸住宅用の火災保険は主に3つの補償で構成されます。
(1)家財保険
自分の部屋の中に所有している家具・家電、衣服など、自分の財産(家財)の損害を補償します。
〈補償の例〉
落雷により、パソコンがショートした、火災で家具・家電が焼失した 等
関連記事:家財保険とは?メリット・デメリット、火災保険との違いや商品の選び方について解説
(2)借家人賠償責任保険
借家人とは、賃貸を借りている人のことで、部屋を借りている人が自分の過失で、借りている部屋や建物に損害を与え、その物件の所有者に対して法律上の損害賠償責任を負ったとき、その賠償責任を補償する保険です。
借家人賠償責任保険の加入が賃貸契約の条件になっていることが多いです。
部屋を借りている人が、誤って火災などを起こし被害にあった場合、大家への損害賠償がされないと、大家さんが損失をうけることになってしまいます。
マンションやアパート等の集合住宅は、賠償額も高額になることもあるので、必ず加入しましょう。
〈補償の例〉
水道栓を誤って破損し、水漏れで階下の部屋まで水浸しになり、床等の修繕費の請求をされた 等
(3)個人賠償責任保険
(2)の補償は賃貸契約に関するものだけであるため、それ以外の日常のトラブルなどで他人にケガをさせる、他人の財物を壊すなどに行為により、法律上の損害賠償責任を負った場合の補償です。
(他人の財物の場合、「借りているもの」については補償の対象外となります)
〈補償の例〉
水道栓を誤って破損し、水漏れで階下の部屋まで水浸しになり、階下の住人から漏水で破損した家電製品の修理代を請求された 等
仮住まいの家賃や片づけ費用などのまとまった出費も補償
火災保険(家財保険)は、火事や水災等の自然災害によって発生した損害への補償「損害保険金」だけではなく、仮住まいの家賃や片付けなどの諸費用を補償する「費用保険金」というものもあります。「費用保険金」が基本補償に含まれているかどうか、含まれていなければ、オプションとして追加できるかどうか確認しましょう。
火災保険(家財保険)で補償されない損害
近年は台風による大雨以外にも線状降水帯による集中豪雨やゲリラ豪雨の影響で、洪水や土砂崩れが発生し、住宅に大きな被害が出ることがあります。この損害は火災保険で補償されるのでしょうか?
水害による損害は、加入している火災保険の種類で補償される場合・補償されない場合があるため、要注意です。
賃貸住宅用の火災保険(家財保険)でも、補償内容が絞られた火災保険(家財保険)だと水災が補償されない可能性もあるため注意が必要です。
また、地震による火災や津波などによる被災について、火災保険(家財保険)の補償対象外となるので、地震保険についても検討すると良いでしょう。
関連記事:地震保険の必要性|保障内容やマンション・戸建てのケース別に解説
賃貸契約時の火災保険(家財保険)は、自分で選べる?
賃貸契約と火災保険(家財保険)契約は全く違うものであるため、部屋を借りる人がどの火災保険(家財保険)に加入するかを自分で選べます。
不動産業者から紹介された火災保険(家財保険)を必ず契約しなきゃいけないというわけではありません。
次は、火災保険の加入時の注意点を解説いたします。
不動産会社紹介の火災保険に加入する
賃貸の場合、契約や更新の際に不動産会社紹介の火災保険(家財保険)に加入することが多いかと思います。
賃貸用の火災保険(家財保険)は、大家さんが求める契約条件(補償金額や補償内容)をクリアできれば、自分でどの火災保険に加入するか選ぶことができます。
他の火災保険(家財保険)と比べる時間がない場合、不動産会社紹介の火災保険に加入するのが一番簡単です。ただ、補償内容、補償の金額設定などがご自分の必要としているものかどうかは、その場で決定せず、よく検討したうえで加入することが大切です。
注意点は、家財評価額が適切であるかどうかです。家財評価額が実際の価値よりも高く設定されている場合は余分な保険料を払うことになり、逆に、評価額が安すぎると、損害がおきた場合に家財補償が足りなくなる可能性があります。
火災保険(家財保険)で設定する保険金額は、今あなたが所有する家財の総額がどのくらいで、再度購入する場合にいくらになるのか、その金額をカバーできるよう、余裕のある金額で設定することがおすすめです。
他の賃貸用家財保険と比較して自分で加入する
繰り返しになりますが、賃貸借契約と火災保険契約(家財保険契約)は全く別のものです。
不動産会社紹介の火災保険に加入しなければいけないという決まりはありません。不動産会社指定の火災保険ではなくても、自分で選んで加入した火災保険(家財保険)の補償内容を不動産会社に説明し、不動産会社から大家さんに火災保険(家財保険)加入済であることを伝えてもらいましょう。
火災などの災害で住宅が被災すると、生活基盤が失われ、生活再建のために多額の費用が必要となります。特に、賃貸住宅は、原状回復義務により、大家さんへの高額の損害賠償責任を負う可能性があります。
まとめ
ここまで賃貸住宅の火災保険(家財保険)の必要性についてみてきました。チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 賃貸住宅でも火災保険(家財保険)は必要
- 賃貸住宅の場合、建物に対する補償は不要
- 賃貸住宅で必要な補償は、家財保険・借家人賠償責任保険・個人賠償責任保険の3つ
- 費用保険金が出るかどうかをチェック
- 賃貸契約でも、不動産会社指定の火災保険加入でなくてもよい
- 借家人賠償責任保険の加入が賃貸契約の条件になっていることが多い
火災保険というと、火事による損害を補償するものというイメージが強いかと思います。実は、火災などの損害以外にも、部屋のトラブル時の損害補償など、まとまった出費をサポートする補償がついている、もしくは、つけられる場合があります。
賃貸住宅でも、火事や自然災害、その他のリスクに備える必要はあるため、火災保険について検討をしましょう。