自転車保険にはどう入るのがおすすめ?加入方法や補償内容・プランの違いを解説
自転車保険と一言で言っても、加入方法もいろいろあれば、補償内容やプランも様々です。そのため、ご自身にあった自転車保険選びを行わないと、必要のない補償を付加したり、必要にもかかわらず補償がつけられていないといった問題が発生する可能性があります。
そこで、自転車保険にどう入るべきか、加入方法や補償内容・プランの違いについて解説していきたいと思います。この記事をお読みになることで、ご自身またはご家族の自転車保険にどう入るべきかがわかるようになることでしょう。
この記事のポイント
- 現在、自転車保険は全国34都府県で加入が義務化されており、国は2025年度までに自転車保険の加入率75%を実現するという目標を掲げている。
 - 自転車事故による損害賠償は過去に9,000万円を超える判決が出たこともある。賠償金が高額になるリスクも踏まえ、自転車保険の賠償責任補償額は1億円以上が望ましい。
 - 自転車保険の加入方法はネットや代理店経由、またクレジットカードやTSマーク付帯の保険を使うなど選択肢は多様。プランも賠償責任のみのシンプルなものからロードサービスなどを含む手厚いものなどがある。
 
自転車保険を選ぶ前に!押さえておきたいポイントと加入のメリット

自転車保険を選ぶ前に、そもそもなぜ自転車保険に入るべきなのか、昨今の状況について解説します。そのうえで、自転車保険に加入するメリットについて解説します。
自転車保険加入率の上昇とニーズの高まり
au損保「2024年度自転車保険加入率調査」によれば、自転車の事故に備える保険に加入しているかどうか調査したところ、「加入している」、「おそらく加入している」と答えた人をあわせると調査対象者の65.6%となったようです。前年度調査よりは上昇しなかったものの、同調査が2018年度から始まってから自転車保険加入率は上昇傾向にあります。
その理由として、34都府県において実施されている、自転車保険の加入義務化が挙げられます。
最近では自転車事故によって他人の生命や身体を害した場合に、加害者に対して数千万円の高額賠償を命じられる判決も出ていることから、万が一の場合に備えて自転車保険に加入するように義務化する地域が増えているのです。もちろん、被害者救済という側面も含まれています。
2021年に国土交通省から公表された「第2次自転車活用推進計画」によると、2025年度に保険加入率の数値目標を75%としています。そのため、今後も自転車保険のニーズは高まることでしょう。
関連記事:自転車保険の義務化について解説!入らないとどうなる?罰則はある?
自転車保険に加入するメリットとは
それでは、自転車保険に加入するメリットには何があるのでしょうか?自転車保険では、自転車の運転中に生じる事故に対して補償を受けることができます。この補償の主なポイントは2つあります。
1つは、自転車を運転中に衝突等により相手をケガさせる、相手が携帯する財物を破損させた場合の損害賠償に対する補償です。
もう1つは、自転車を運転中に衝突等によりご自身がケガをした場合の医療面の補償です。
一般社団法人日本損害保険協会によれば、男子小学生による自転車事故により後遺障害を負った女性に、2013年に9,521万円の損害賠償を支払う判決が出ています。
■ 賠償金が高額となった主な自転車事故
判決認容額(※)  | 事故の概要  | 
|---|---|
9,521万円  | 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。( 神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)  | 
9,330万円  | 男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決)  | 
9,266万円  | 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決)  | 
6,779万円  | 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決)  | 
5,438万円  | 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決)  | 
(※)判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額(金額は概算額)。上記裁判後の上訴等により、加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性がある。
※引用:日本損害保険協会ホームページ
これだけの高額賠償となると、一般のご家庭で対応できるような金額ではないため、自転車保険の保険金である程度カバーできるようにしておく方が良いといえるのです。また、万が一の賠償事故のためにも、ご自身が自転車事故でケガをした場合においても、自転車保険に加入しておくべきといえます。
なお、自転車保険はプランにもよりますが、月々数百円程度から加入できます。負担もそれほど大きいわけではなく、しかしながら万が一の時には大きな負担軽減となりえる点が自転車保険のメリットです。
自転車保険の補償内容とは?各プランの特色を解説
それでは、具体的な自転車保険の補償内容について見ていきましょう。
どのようなプランがあるのか、そしてどういうケースの場合にどんな補償を得ておくべきなのか、確認していきましょう。
シンプルな賠償責任補償中心のプラン
まずはシンプルなケースを考えていきます。シンプルに自転車保険を考えるならば、万が一の損害賠償責任を負った場合に、支払いができるようにする賠償責任補償中心のプランが良いでしょう。
この際には、賠償責任補償額は1億円以上としておくことが望ましいです。なぜならば、上記事例でも見たように、1億円近い損害賠償が判決として出ているケースもあるからです。金銭的な面で悩みたくない方は、補償額を1億円以上または無制限に設定しておくと安心できるでしょう。
なお、一般的な自転車保険の場合、事故相手への損害を補償する個人賠償責任保険と、運転者のケガ等に備える傷害保険がセットになっています。仮に相手への補償のみで良いという場合には、個人賠償責任保険のみに加入するという方法も検討できます。すでに個人賠償責任保険に加入されている場合には別途加入する必要がない場合もあります。
ロードサービスや弁護士費用特約を充実させるプラン
一般的な賠償責任の他に、ロードサービスや弁護士費用特約を充実させることで、自転車事故を総合的に補償できるプランがあります。賠償責任だけではなく幅広い補償を得たい方に向いています。
自転車で遠方に出かけた際に事故にあった。自転車が自走できなくなり、帰れなくなるのが怖い。こうした場合に心強いのがロードサービスです。ロードサービスとは、自転車が自走できなくなった場合に、指定の場所まで無料で運んでくれるサービスです。
弁護士費用特約とは、自転車事故の被害にあった場合に、示談交渉の弁護士費用を補償してくれるものです。
一般的に加害者の場合には保険会社の担当者が加害者の代理としてなります。一方で被害者の場合には、保険等に加入していない場合、自分で示談交渉を行うか弁護士に自腹で示談交渉のお願いをしなければなりません。しかしながら、弁護士費用特約を付加することで、弁護士費用を気にすることなく弁護士に示談交渉を任せることができます。
これにより、示談交渉を有利に進めることができる可能性があります。
関連記事:弁護士費用保険とは?個人で入れる?利用するメリット・デメリットなどを解説
家族全員の補償を充実させるプラン
ご自身だけではなく家族全員のことも考えて補償を受けたい。こうした場合には、家族全員の補償を充実させるプランを検討しましょう。いわゆるファミリー向けの自転車保険です。
ファミリー向けの自転車保険に加入すると、被保険者本人だけではなくご家族の補償も受けられます。同居しているご家族だけでなく、生計が同一の未婚のお子さんなども対象となります。
家族一人一人が別々に自転車保険に加入するよりも割安になることが多いといえるため、保険料の面からもメリットがあります。
自転車保険の加入方法とそれぞれのメリットを解説

それでは、自転車保険に加入するにはどのように行えばよいでしょうか。
大きく分けて3つのパターンがあります。それぞれのメリットを知ることで、どの方法で加入するのがご自身にとって向いているのか検討していきましょう。
自転車保険にネットから加入するメリットとは
まず1つ目の方法として、インターネットから自転車保険に加入する方法が挙げられます。メリットとしては、24時間どこからでも手続きができること。わざわざ保険代理店等に出向く必要がありません。
また、どういった補償がご自身ないしはご家族に必要かがわかっている場合には、豊富なオプションから必要なものをピックアップできます。インターネット上で様々な自転車保険と比較しながら検討できる点もメリットと言えます。保険料も対面での加入に比べると割安な場合が多いです。
そのため、どういった自転車保険に入るべきかを理解し、ご自身でプランを選ぶことができる方に向いています。
自転車保険に代理店から加入するメリットとは
次に、保険代理店で自転車保険に加入する方法が挙げられます。
例えば、既に代理店で他の保険に加入している場合には気軽に相談にいけることでしょう。また、保険に関する知識があまりなく、結局どの自転車保険に入るのが最も望ましいのかわからないといった場合には、プロに相談するのが一番の近道になります。保険の補償が重複しないような設計もしてくれることでしょう。
そのため、ご自身で保険を選ぶ自信のない方や加入する保険なども総合的に勘案して決めたいという方は代理店での加入にメリットがあるといえます。
クレジットカードやTSマーク付帯の保険を活用する方法も
クレジットカードによっては、個人賠償責任保険をカードのオプションとして利用できるものがあります。この個人賠償責任保険は、自転車での事故に限らず様々な状況における損害賠償を補償します。
あくまでも損害賠償が中心となるため、自転車保険に比べると保険の保障内容は狭まりますが、クレジットカード付帯の個人賠償責任保険を付帯することで自転車事故に対応する方法も検討できます。保険料も年間で数千円程度と、自転車保険の保険料よりも低く抑えることができる場合があります。
もう一つ、TSマーク付帯の保険を活用することも検討できます。TSマークとは自転車安全整備店に勤務する自転車安全整備士が点検整備し安全である普通自転車に貼るシールのことです。このシールがあることで整備が安全であるお墨付きを得ているのと、傷害保険と賠償責任保険が付帯されます。
また、自転車を購入したお店でTSマークを貼ってもらうなど、購入時に加入できるメリットがあります。
TSマークとは
青色TSマークと赤色TSマークに加え、令和4年12月から緑色TSマークが加わり、現在3種類のTSマークがあります。
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青色TSマークは賠償責任限度額が1,000万円、傷害補償は入院15日以上で一律1万円、死亡・重度後遺障害(1~4級)で一律30万円です。
赤色TSマークでは、賠償責任限度額が1億円、傷害補償は入院15日以上で一律10万円、死亡・重度後遺障害(1~4級)で一律100万円、この他被害者見舞金(入院15日以上)として一律10万円が支給されます。
新しく追加された緑色TSマークは賠償責任限度額が1億円で示談交渉サービスが付いています。なお全ての人身事故が賠償責任補償の支払対象となっています。傷害補償は入院15日以上で一律5万円、死亡・重度後遺障害(1~4級)で一律50万円が支給されます。
種別  | 賠償責任補償(限度額)  | 傷害補償(限度額)  | その他補償  | 
青色TSマーク  | 1,000万円  | 
  | |
赤色TSマーク  | 1億円  | 
  | 被害者見舞金:入院(15日以上)で(一律)10万円  | 
緑色TSマーク  | 1億円  | 
  | 示談交渉サービス付き  | 
補償額という観点からは、緑色TSマークや赤色TSマークの方が望ましいでしょう。こうした、クレジットカードやTSマーク付帯の保険を活用する方法も検討できます。
まとめ
以上、自転車保険の加入の背景から自転車保険のメリット、補償内容、加入方法について見てきました。自転車事故は自転車に乗る限り誰にでも起こりえます。そのため、補償内容やプラン、ご自身にとって都合の良い加入の仕方などから、どの方法で加入するか決めていきましょう。
なお、ある程度保険の知識がある方は、インターネットでの加入やクレジットカード、TSマーク付帯の保険から検討すると保険料の面でメリットを享受できると思います。一方、保険の知識が乏しい方や、総合的な保険プランを検討したい方は代理店でじっくり説明をききながら最終的な決定を図るのが望ましいといえます。
まずは基本的な考え方を本記事で知り、実際に自転車保険に加入できるようにしていきましょう。





