更新日:2025年10月31日
2015年10月に、兵庫県が初めて自転車保険の加入義務化を導入してから現在に至るまで、多くの自治体で自転車保険の加入義務化が進んでいます。「なぜ義務化が進んでいるのか」また、「自転車保険とは一体どういった保険かわからない」と思う方もいると思います。そこで、この記事では自転車保険の基礎知識について解説します。自転車保険の加入が義務化された背景をもとにしつつ、どのように自転車保険を選んでいけばよいのか、具体的に解説していきたいと思います。
国土交通省によれば、令和6(2024)年4月1日現在において自転車保険の加入を義務化する地方自治体は34都府県、また努力義務とするのが10道県となっています。
多くの自治体で義務化が進む自転車保険ですが、なぜ義務化に踏み切る自治体が増加しているのでしょうか。

その背景には、自転車事故による高額な損害賠償を命じる判決が出ていることにあります。
例えば、一般社団法人日本損害保険協会によれば、2013年に男子小学生による自転車事故により後遺障害を負った女性に、9,521万円の損害賠償を支払う判決が出ています。
■ 近年の自転車事故
判決認容額(※) | 事故の概要 |
|---|---|
9,521万円 | 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。 女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。( 神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決) |
9,330万円 | 男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。 警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決) |
9,266万円 | 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。 男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決) |
6,779万円 | 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。 女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決) |
5,438万円 | 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。 女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決) |
(※)判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(金額は概算額)。上記裁判後の上訴等により、加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性があります。
※引用:日本損害保険協会ホームページ
こうした高額な損害賠償に対応するためにも、自転車保険の加入義務化が進んでいるといえます。
手軽に利用できる自転車ですが老若男女問わず、思わぬ事故を起こしかねない側面があります。被害者救済の観点から、自転車保険が重視されるようになってきています。
具体的に、自転車保険とはどのようなものなのでしょうか?自転車保険の補償内容について解説していきます。
自転車保険は、個人賠償責任の補償と傷害補償がセットになっているケースが多いです。
個人賠償責任の補償とは、自転車事故により被害を受けた被害者に対する賠償を行うものです。もう一つの傷害補償とは、自転車を運転する運転者自身のケガを補償するものです。

なおすでに、火災保険や自動車保険に個人賠償責任保険がついている方は、自転車保険には加入する必要がないという考え方もできます。
自治体による加入義務化が進んでいるのは、この個人賠償責任の部分となります。しかしながら、個人賠償責任保険では、運転中の方がケガした場合の補償である傷害補償はカバーされません。
また、損害賠償時の補償金額が不足しないかどうかの確認も必要です。そのため、両面をカバーしたい、補償を拡充したい方は自転車保険に加入すべきといえます。
自転車保険では、メインとなる個人賠償責任補償と傷害補償の他に、特約やロードサービスがついている場合があります。
特約とはオプションで付加できる補償です。例えば、示談交渉サービスという特約は自転車事故の加害者になった場合に、加害者に代わって被害者との示談交渉を行ってくれます。
また、自転車のロードサービスでは、自転車の事故や故障により自力で走行ができなくなった場合に、希望する場所まで自転車を搬送してもらえます。自転車事故だけに限らず、サイクリング中のパンクやチェーンが外れた場合などの故障でも利用できます。特に遠方での事故や故障の際にはありがたいサービスと感じられるかもしれません。
こうした特約やロードサービスが自転車保険によっては付加できる場合があります。必要かどうかを含めて、自転車保険に加入する際の検討材料とすると良いでしょう。
自転車保険のおすすめの選び方について、複数のパターンにわけて解説をしていきます。
自転車保険とひとことで言っても、誰が加入者になるのかによって複数のパターンに分けることができます。
まず、18歳未満のお子様がいる場合の選び方を説明します。もし自転車に乗るのがお子さんだけの場合には、個人向けのプランを選択されると良いでしょう。
保険会社の中には、18歳未満のお子様向けの自転車保険を扱っている場合があります。 お子様向けプランでは個人賠償責任のほか、ケガや偶発的な事故での手術保険金、入院保険金、死亡・高度障害保険金など補償を付加することが可能です。
家族で自転車をよく使う方の場合は、個人型ではなく家族型の自転車保険を選ぶと良いでしょう。
家族型に申し込むほうが、個人で複数申し込む場合よりも月々の保険料を抑えることができます。

家族型の自転車保険はさまざまな保険会社が販売しています。是非保険の専門家に相談しながらご自身やご家族に合う自転車保険を選んでいくと良いでしょう。
警察庁によれば、自転車乗用中の死者数のうち、6割超が65歳以上の高齢者となっています。そのため、高齢者の方が自転車に乗るときは、補償が充実している自転車保険を選択すべきといえます。
自転車保険の中には、年齢制限があるものとないものがあります。高齢者の方は、まずご自身の年齢で加入できるものを探す必要があります。
例えば、年齢制限がない商品もあれば70歳以上のシニア世代専用の自転車保険などもあります。
こうした高齢者向け、または高齢者でも加入できる自転車保険から、補償額などを考慮して選択していくとよいでしょう。
最後に、自転車保険のおすすめの入り方について解説していきます。
現在では、様々な加入の仕方がありますので、ご自身にとってどの入り方が良いか考えていきましょう。
まず、1つ目が保険代理店から入る方法です。保険代理店で入る大きなメリットは、保険のプロがご自身やご家族の状況を考慮しつつ、最適な自転車保険を提案してくれる点です。特に保険の知識のない方は、専門家である保険代理店のスタッフと相談しながらじっくり決めていくことで安心感が増すでしょう。
また、万が一のことがあれば保険代理店に相談すればスムーズに保険金の支払いの手続きなどサポートしてくれるでしょう。
そのため、どの自転車保険に入るべきかわからない、誰かに相談しながら決めていきたい方は、保険代理店から入ると良いでしょう。
保険の知識があり、自分で自転車保険を選択できるという方は、ネットで入るという方法が検討できます。ネットから入ることで、手間をかけずに申し込みが可能となります。
ただし、ネットから入る場合には、ご家族にどんな自転車保険に加入したかしっかり伝えておく必要があります。ご家族に保険の知識がない場合には、いざという時にどう対応してよいかわからない可能性があるためです。
そのため、ご家族にも説明しつつ、ご自身の知識で自転車保険に加入できる方はネットから入る方法でよいでしょう。
コンビニで手続きできる自転車保険もあります。
コンビニでも自転車保険に加入できる点を知っておくと、気軽に申し込みができます。自宅の近くに保険代理店がない場合や、ネットで入るよりも説明を聞きながら自宅近くのコンビニで加入する方が良いと感じる方は、コンビニで加入する方法も検討してみましょう。
以上、自転車保険の基礎知識から、自転車保険の選び方、入り方について解説を行いました。
自転車保険の重要性は日に日に増しており、どんな補償を重視するか、個人なのか家族なのか、高齢者向けなのかなどで複数の自転車保険プランにわかれます。自転車保険ひとつとっても奥が深いのです。
ご自身にとってどの自転車保険がよさそうか選択できるようになることが一番ですが、不安な方は保険代理店に相談しながら最適な保険プランを選択できると良いでしょう。
自転車保険をテーマにしたコラムの一覧です。『自転車保険とは?』『自転車保険の必要性は?』などの話から基礎知識の解説など、役立つトピックスを掲載しています。