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個人年金保険

付加年金とは?メリット・デメリットや加入方法をFPがわかりやすく解説します

日本における公的年金制度は、要件を満たしていれば生涯年金を受け取ることができるありがたい制度ですが、年金額は決して十分な金額ではありません。働けるうちに少しでも年金額を増やしたい。そんな希望をかなえられる付加年金制度についてくわしくお伝えします。

付加年金とは?

付加年金は、国民年金の一般保険料に加えて、付加保険料を納めることで、将来受け取る老齢基礎年金に付加年金が上乗せされるという制度です。国民年金保険料のように、対象の年齢になると日本年金機構から連絡がくるものではなく、任意に加入できる制度なので、加入したい場合は別途申し込みが必要です。

将来受け取れる金額

付加年金の年金額は200円×付加保険料納付月数です。

現在国民年金は20歳から60歳まで納めることになっていますから、40年間付加保険料を納付した場合

200円×480ヵ月=96,000円

となり、96,000円が老齢基礎年金に上乗せされます。

令和6年度の年金額※は保険料を40年間満額納めた場合、月額68,000円ですから

68,000円×12ヵ月=816,000円(年金額)

816,000円+96,000円(付加年金額)=912,000円

を受け取れる計算です。長く積み立てれば、大きな上乗せになることがわかります。

令和6年度の年金額の例

令和5年度 (月額)

令和6年度 (月額)

国民年金※1

(老齢基礎年金(満額):1人分)

66,250 円

68,000 円

(+1,750 円)

厚生年金※2 (夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)

224,482 円

230,483 円

(+6,001 円)

※1 昭和 31 年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額 67,808 円(対 前年度比+1,758 円)です。

※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

※参照:厚生労働省プレスリリースR6.1.19「令和6年度の年金額改定について」 


月々支払う金額

では、付加年金を上乗せするためにはいくら保険料を支払えばいいのでしょう。

国民年金の定額保険料に月額400円をプラスして納付します。

付加保険料は基本的に、国民年金保険料に上乗せされ、付加保険料込みの金額を納める形になります。ただし、国民年金保険料を前納で納付済みの場合は、納付書が別途送られ金融機関やコンビニで納めます。また、付加年金加入の申出をしてから1~2ヵ月は、金融機関との手続きの関係で付加保険料込みで引落しができない場合があります。その間は納付書で納めます。

国民年金保険料には前納による割引がありますが、付加保険料込みでも前納割引は適用されます。

・令和5年度の国民年金保険料は月額16,520円。付加保険料をプラスすると16,920円です。

・付加保険料込みの保険料を毎月納めた場合の年間保険料 203,040円

・付加保険料込みの保険料を1年分前納した場合の年間保険料 199,430円

となり、年間3,610円安くなる計算です。

この例は現金納付の場合で、口座振替の場合はさらにお得で年間4,250円安くなります。まとまった納付が可能な場合は、2年まで前納できますから利用しましょう。


加入対象者

付加年金に加入できる人は、国民年金保険料を納付している第1号被保険者が対象です。厚生年金保険料を払っている、第2号被保険者、第2号被保険者の扶養となり国民年金保険料を納付していない第3号被保険者も対象外です。

また、国民年金保険料の納付を免除されている人は、全額・4分の3・半額・4分の1など免除の種類にかかわらず、付加年金に加入できません。前年所得が基準以下の大学・専門学校生などを対象とした、国民年金保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を適用中の人も加入できません。

免除とは異なりますが、国民年金の上乗せとして運営されている国民年金基金に加入している人も対象外です。

例外として、「産前産後期間の免除制度」適用中の人は、他の免除制度とは異なり、免除期間中でも付加保険料を納付できます。

付加年金のメリット・デメリット

付加年金は手軽に加入できる公的制度ですが、メリットばかりではなくデメリットもあります。ポイントは次の通りです。

メリット

①毎月の付加保険料が400円なので、支払いの負担が少なくて済みます。

②老齢基礎年金に上乗せされる年金額は「200円×付加年金保険料を支払った月数」です。1年分の付加保険料は2年間の年金受給で取り戻せるため、効率的に年金が増やせます。

例 付加保険料を20年間支払った場合

・400円×240ヵ月=96,000円(付加保険料総額)

・200円×240ヵ月=48,000円(老齢基礎年金に上乗せされる年金額)

2年で96,000円の付加保険料が相殺されるので、3年目からは丸々お得になる計算です。

 

③年金を繰下げした場合、付加年金も一緒に繰下げられ、年金額が増やせるので、繰下げ効果が広がります。

例 40年間保険料満額納めた人の令和6年度の年金額に20年間付加保険料を払った場合

年金額816,000円+付加年金額48,000円=年金総額864,000円

5年間繰下げ 付加年金がない場合 816,000円×1.42=1,158,720円(342,720円増)

      付加年金がある場合 864,000円×1.42=1,226,880円(362,880円増)

(繰下げの増額率は月0.7% 5年繰下げで42%増)

④付加年金は個人の事情によって加入や脱退が自由にできます。

付加年金は任意に加入する制度なので、加入する時期も任意に選べますし、脱退することも自由です。加入・脱退には申請が必要になります。


デメリット

①年金受給開始から2年以内に亡くなってしまった場合、付加保険料の払込総額と比べると総額を割ってしまう場合があります。

②iDeCo(個人型確定拠出年金)と付加年金を同時に加入している場合、iDeCoの掛金の限度額が減額されます。第1号被保険者のiDeCoの掛金上限は68,000円、付加保険料は400円ですので、iDeCoの掛金は67,600円上限になりそうですが、iDeCoの掛金は1,000円単位なので、掛金は67,000円になってしまいます。

 ③年金を繰上げした場合、付加年金も一緒に繰上げられ、年金額が減ってしまうので、減額幅が大きくなってしまいます。

例 40年間保険料満額納めた人の令和6年度の年金額に20年間付加保険料を払った場合

年金額816,000円+付加年金額48,000円=年金総額864,000円

5年間繰上げ 付加年金がない場合 816,000円×0.76=620,160円(195,840円減)

        付加年金がある場合 864,000円×0.76=656,640円(207,360円減)

(繰上げの減額率は月0.4% 1962年4月1日以前生まれの場合0.5% 例は0.4%で試算)

付加年金の加入方法

実際に加入するにはどうしたらいいのでしょうか。

付加年金の加入手続きは、現在住んでいる地域を管轄する市区町村役場や、年金事務所の保険年金課で行います。

準備するものは、

・年金手帳

・基礎年金番号通知書またはマイナンバーカード

・本人確認書類(申請者本人が確認できる運転免許証・マイナンバーカードなど)

手続きは、国民年金被保険者関係届出書(申出書)を使い、該当の付加保険料納付申出を選んで申請します。加入と同じく脱退したい場合も同じ届出書で申請ができます。

申請後、付加保険料込みの納付書が送られますので、金融機関やコンビニなどで納める流れです。

国民年金保険料は口座振替で納めているという方が多いかもしれません。その場合は、付加保険料込みの金額が引落されますが、申出後数か月は付加保険料のみ納付書で金融機関やコンビニ等で納めることになる場合もあります。

詳しくは、お近くの役場、年金事務所に問い合わせてみましょう。

付加年金以外で年金受給額を増やす方法

 ここまで、付加年金について説明してきました。他に将来の年金額を増やす方法をいくつか紹介します。

年金の繰下げ

現在老齢基礎年金の受給開始年齢は65歳ですが、年金の受給開始時期を遅らせることで将来の年金額を増やすことができます。

毎年誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」にも記載されていますが、75歳まで受給開始を遅らせることができ、最大84%年金額を増やすことができます。

増額率=0.7%×65歳の誕生日前日を含む月から繰下げ申請前月までの月数

令和6年度の年金額816,000円(40年満額納めた場合)で考えると5年繰下げで、1,158,720円、10年繰下げると、1,501,440円となり、大きく年金額を増やすことができます。付加年金も繰下げの対象ですので、併用すると上乗せ額がさらに広がります。

付加年金の対象者となる第1号被保険者の方は自営業者の方が多く、定年制がない場合が多いので、長く働き、収入を得られるのであれば、その間年金受給を遅らせ、将来の年金額を増やす方法をとることも選択肢のひとつといえます。

関連記事:仕事をしながら受け取る老齢厚生年金はいくらもらえる?個人年金保険との関係性

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは公的年金の不足分を補うことを目的とし、自助努力のために国が整備した制度です。厚生労働省と国民年金基金連合会が管轄しています。

20歳から60歳まで(国民年金任意加入の方または社会保険加入の方は65歳まで)積立ができます。積立てる掛金は月5000円からで、付加年金の対象となる第1号被保険者は上限月68,000円までかけることができます。

iDeCoの特徴の一つは、積立てるだけでなく、積立てた資産を投資信託を使って運用し増やしていくことができるところです。そして、国が整備した制度というところに、大きなメリットがあり、大きな税制優遇が、資産形成を後押ししてくれます。

税制優遇は3つ

1:掛金全額が所得控除の対象

2:投資信託の運用益が全額非課税

3: 受取る時に退職所得控除が使える

お金を貯めることで所得控除が受けられる制度は今までになく画期的な制度といえます。

注意点としては、iDeCoは公的年金を補うための制度であることから、60歳になるまでは引き出せない決まりがあることです。これはデメリットのように見えますが、老後のために使う目的と考えると、メリットでもあります。有効に活用しましょう。

関連記事:iDeCoの特徴と3つの節税ポイント、NISA、個人年金保険の活用方法を解説

個人年金保険

私的年金のひとつとして、民間保険会社の商品である個人年金保険に加入する方法があります。

個人年金保険は、公的年金受取が始まる65歳まで保険料を積み立て、65歳から公的年金の上乗せとして、定額年金を受け取るというような仕組みです。保険料支払い期間や、年金受取開始時期、保険料、年金額などは、希望に合わせ様々な設定ができます。また、契約時にいくつかの要件を満たした場合、「個人年金保険料税制適格特約」を付加できます。この特約を付加することで、上限はありますが、年間支払った保険料が一般生命保険料控除とは別枠の所得控除を受けられるメリットがあります。

年金受取期間は5年・10年などの有期と、一生涯年金を受け取れる終身年金があり、公的年金の不足分の穴埋めに役立つでしょう。

関連記事:個人年金保険がおすすめしないと言われる理由とは?必要な人・不要な人も解説

まとめ

付加年金は、毎月400円の追加保険料で手軽に年金を増やせる制度です。付加年金の対象になる第1号被保険者は、厚生年金加入者に比べ、将来の年金額が少ないのが現状です。毎年送られる「ねんきん定期便」を参考に、将来もらえる年金額を把握し、付加年金をはじめとするさまざまな制度や保険を使って、早い段階から将来に備えましょう。

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