名前の通り、生涯にわたり死亡保障が続く終身保険。
この保険にはどんな種類があり、どのような保障を受けられるのでしょうか。また、終身保険選びや保障内容の見直しは、どのように進めていけばいいのでしょうか。
この記事では、終身保険の特徴と商品選びのポイントについてわかりやすく解説します。
終身保険は、被保険者が死亡、あるいは高度障害状態など生命保険会社所定の状態になった場合に保険金を受け取れる、生命保険の一種です。同じ生命保険に分類される商品には定期保険や収入保障保険などがありますが、終身保険とは以下の2点が異なります。
① 保険期間が生涯にわたり続く
② 掛け捨てではない(解約返戻金がある)
また、定期保険や収入保障保険は「遺族の生活資金の確保」を主たる目的として加入し、保険金額もある程度まとまった金額に設定するケースが一般的です。終身保険はこれらの生命保険に比べると保険料が割高で、遺された家族の生活資金をこれだけで確保しようとすると、保険料がかなり高くなってしまいます。そのため終身保険は、葬儀費用や相続資金の確保、貯蓄などを目的として加入する人が多い傾向にあります。
終身保険は、以下の6種類に分けられます。ここではまず、それぞれの商品の特徴についてみていきましょう。
終身保険は、被保険者が死亡した場合、高度障害状態など生命保険会社所定の状態になった場合に保険金を受け取れる商品です。保険期間が終身で満期がないため、満期保険金はありません。
被保険者が死亡した場合に受け取れる保険金は、約定の保険金額となります。ただし、告知なしで加入できる無選択型終身保険では、契約後2年間など一定期間内に被保険者が疾病によって死亡した場合、約定の保険金額ではなく、死亡時までに払い込んだ保険料相当額が支払われます。
低解約返戻金型終身保険は、解約した場合に受け取れる解約返戻金の「返戻率」を低くした終身保険です。解約返戻率が低い期間は保険料払込期間と同一である商品が一般的で、解約返戻率は保険期間の経過に伴い少しずつ高くなるものの、保険料払込期間中は最高でも70%程度となります。
低解約返戻金型終身保険は、解約返戻率が低いぶん、一般的な終身保険に比べて保険料を安く抑えられます。なるべく安い保険料で終身保険に加入したい方は、低解約返戻金型終身保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。ただし、途中解約した場合は受け取れる解約返戻金がかなり少なくなってしまう可能性があるため、加入時には無理なく払い続けられる保険料かどうか、慎重に考える必要があります。
積立利率変動型終身保険の保障内容は、終身保険と基本的に同様です。すなわち、被保険者が死亡した場合、あるいは高度障害状態など生命保険会社所定の状態になった場合に保険金を受け取れます。
一般的な終身保険と異なるのは、保険金や解約返戻金の算出方法です。一般的な終身保険では、契約時の予定利率をもって保険金や解約金の金額を算出・確定します。これに対して積立利率変動型終身保険は、積立利率が定期的に見直され、支払時点における利率をもとに保険金や解約金の金額を算出します。なお、適用される積立利率には最低保証が設定されています。
適用される積立利率には市場金利が反映されるため、この種の終身保険にはインフレリスクにある程度備えられる、というメリットがあります。
利率変動型積立終身保険は、「積立」と「保障」がセットになった保険です。
保険料払込期間中は、積立金を蓄積します。そして、保険料の払込みが満了したら、それまで蓄積した積立金をもとに、その時点での健康状態に関係なく、一定の金額の範囲内で終身の死亡・高度障害保障を確保することが可能です。
利率変動型積立終身保険で保障を受けられるのは、保険料払込期間の満了後となります。保険料払込期間中に亡くなってしまった場合、既に払い込んだ保険料の金額に応じた保険金しか受け取ることができません。
変額保険は、払い込んだ保険料を資産運用し、その運用実績によって受け取れる保険金や解約返戻金の金額が増減する保険です。被保険者が死亡した場合、基本保険金+変動保険金を受け取れます。基本保険金額については最低保証されている商品が一般的で、運用実績によって変動保険金がマイナスになったとしても、基本保険金は受け取れます。
変額保険では、加入者個人が投資リスクを負うため、運用実績によっては元本割れする可能性があります。そのためこの種の保険を検討する際は、商品の仕組みや資産の運用方法などについて納得できるまで説明してもらうようにしましょう。
外貨建て終身保険は、払い込んだ保険料を外貨で運用する商品です。保障内容は一般的な終身保険と同じで、被保険者が死亡、あるいは高度障害状態など生命保険会社所定の状態になった場合に保険金を受け取れます。
ただし、解約返戻金や保険金は外貨で受け取るため、その時点での為替相場によっては元本割れ(受け取れる保険金額が払込保険料総額を下回る)可能性があります。外貨建て終身保険への加入を検討する際は、この種の商品には為替リスクがある、という点について十分理解しておきましょう。
終身保険の保険料払込期間には、
① 有期払い
② 終身払い
③ 一時払い
の3種類があります。
それぞれの払込期間にメリット・デメリットがあり、どの払込期間を選択するのかによって、払込保険料の総額も変わります。
終身払いとは、生涯にわたり保険料を払い込み続ける方法のことをいいます。終身保険には満期がありませんので、解約時、あるいは保険金受取時まで保険料を払い込み続けなければなりません。
保険料払込期間を終身払いにした場合、払込保険料の総額は契約年数の経過に伴い増加します。そのため被保険者が長生きした場合、後述する有期払いや一時払いに比べて払込保険料の総額が高くなります。
ただ、終身払いには、他の払込方法に比べて毎月の保険料を安く抑えられる、というメリットもあります。払込期間が長くなってもかまわないから1回あたりの保険料負担をなるべく安く抑えたい、という方は終身払いを検討してみてはいかがでしょうか。
有期払いとは、契約時に保険料払込期間の満了時を定め、その期間に限って保険料を払い込む方法のことをいいます。有期払いには「歳満了型」と「年満了型」の2種類があり、歳満了型では50歳払い済み、60歳払い済み、というように年齢によって、年満了型では5年払い済み、10年払い済み、というように年数によって保険料払込期間を定めます。
満期のない終身保険は、終身払いにすると生涯にわたり保険料を払い込み続けなければなりません。これに対して有期払いは保険料払込期間満了時が決まっているため、何歳までいくら保険料を払い込まなければならないのかが明確で、将来の資金計画が立てやすくなります。また、長生きをした場合、終身払いに比べて払込保険料の総額が安くなる可能性もあります。
ただし、有期払いは終身払いに比べて、毎月の保険料が高くなりがちです。そのため払込方法を有期払いにする場合は、払込期間を通して無理なく払い続けられる金額かどうか、慎重に検討する必要があります。
一時払いとは、全保険期間分の保険料を契約時にまとめて払い込む方法のことをいいます。有期払いや終身払いに比べて払込保険料の総額を安く抑えられる商品が多いため、余裕資金がある方は一時払いを検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、一時払いを選択した場合でも、解約返戻率は契約期間の経過に伴い少しずつ高くなる商品が一般的です。そのため早期に解約した場合、元本割れを起こす可能性がある点について、理解しておく必要があります。
また、終身保険は生命保険料控除制度の対象ですが、一時払いを選択した場合、これを適用できるのは保険料を支払った年のみとなります。
一時払いと全期前納の違いとは
一時払いと混同しがちな払込方法に、「全期前納」というものがあります。全期前納とは、全保険期間分の保険料を、契約時に保険会社が預かり、次年度よりこれを毎年の保険料として充当していく方法のことをいいます。
契約時に全保険期間分の保険料を払い込む、という点では一時払いと同じですが、全期前納の場合、保険会社はあくまでも保険料を「預かっている」にすぎません。そのため被保険者が死亡した場合、死亡保険金とは別に未経過保険料が返金されます。
これに対して一時払いは、全保険期間分の保険料を「まとめて払う」払込方法です。そのため被保険者が死亡した場合に受け取れるのは死亡保険金のみで、払い込んだ保険料が返金されることはありません。
ここまで、終身保険の保障内容や商品の種類ごとの特徴、保険料払込期間などについてみてきました。では、終身保険に加入することには具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
終身保険には、以下のようなメリットがあります。
保障が一生涯続く
終身保険の最大のメリットといっても過言ではないのが、保障が一生涯続く、という点です。定期保険や収入保障保険は安い保険料でまとまった金額の保障を用意できますが、保険期間が限られており、その間に保険金の支払いを受けられなければ、払い込んだ保険料はムダになってしまいます。
これに対して終身保険は、解約しない限り生涯にわたって保障が続きます。人はいつか亡くなりますので、終身保険では保険金を必ず受け取ることができ、定期型・掛け捨て型の保険のように保険料がムダになることはありません。
保険料が変わらない
更新型の保険の場合、更新の度に保険料が上がる商品が一般的です。そのため更新型の保険に加入していると、更新後の保険料を安くするため保障を下げざるを得なくなったり、更新後の保険料が高すぎるため更新を断念せざるを得なくなったり、といったケースも少なくないようです。
これに対して終身保険は、保険料払込期間を通して保険料が一定で変わりません。そのため将来的な資金計画を立てやすいですし、保険料が上がって保険を続けられなくなることもありません。
貯蓄性がある
終身保険のメリットとしては、貯蓄性がある、という点も挙げられます。
掛け捨て型の保険は解約返戻金がなく、保険を解約しても受け取れるお金はありません。これに対して終身保険には解約返戻金があり、保険料払込期間中に保険を解約した場合、約定の解約返戻率に基づき算出された金額を受け取ることができます。
また、終身保険の中には、払込期間満了後、あるいは契約から一定期間経過後の解約返戻金が、払込保険料総額を上回るよう設定されている商品も少なくありません。具体的な解約返戻率の推移は商品によって異なりますが、解約返戻率のピークが100%を超える商品の場合、保障性だけでなく、その貯蓄性に着目して終身保険に加入する方もいます。
貯金が苦手な人でも計画的な資産形成がしやすい
子供の進学やマイホームの購入、老後の生活、というように人生にはまとまったお金が必要になるライフイベントがいくつかあります。ただ、それらのライフイベントに備えて計画的に貯金をしようと思っても、思うようにお金が貯まらなかったり、貯金に手を付けてしまったり、といったケースは少なくありません。
終身保険は保険料を払い込み続けなければ失効してしまううえ、保険料払込期間中に解約をすると元本割れを起こして損をしてしまう可能性もあります。これらは終身保険のデメリットとして捉えられる側面ですが、長期間にわたり貯蓄を続ける、という観点では「いま解約をすると損をするからもう少し頑張ろう」「失効するともったいないから頑張って保険料を払い込み続けよう」といったインセンティブになるとも考えられます。こういった意味において終身保険は、ある種の強制力をもって計画的な資産形成をするための一手段といえるでしょう。
コツコツ貯金するのが苦手な方は、終身保険の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
資金の転用ができる
終身保険には、資金の転用がしやすい、というメリットもあります。
例えば、子供の教育資金の確保を目的として終身保険に加入したと仮定します。ただ、終身保険は保険期間が長く、その間に世帯収入が増え、終身保険の解約返戻金に頼らずとも十分な教育資金を確保できるようになった、というケースもあるでしょう。そういった場合は終身保険を解約せず、そのまま寝かせておくのもひとつの選択肢です。
一般に、終身保険の解約返戻率は、保険期間の経過に伴い高くなります。そのため解約時期を遅らせると、そのぶんだけ受け取れる解約返戻金額は大きくなります。受け取った解約返戻金は、老後の生活資金にしたり、パートナーの介護費用に充てたり、というように色々な使い方ができます。
このように、ライフイベントや家計の状況、アクシデントなどに応じて資金を柔軟に転用できるというのは、終身保険の大きなメリットのひとつといえるでしょう。
契約者貸付制度を利用できる
終身保険のような解約返戻金のある保険では、契約者貸付制度を利用することができます。契約者貸付制度とは、生命保険の解約返戻金のうち一定の範囲内で貸し付けを受けられる制度のことで、貸し付けを受けている間も保障は継続します。
緊急で資金が必要になったが保険を解約すると損をしてしまう、というような場合は、この制度の利用を検討してみるのもひとつの方法です。
相続税対策に活用できる
生命保険の死亡保険金は、相続税の課税対象です。ただし、保険金の受取人が相続人である場合、法定相続人の数に応じた非課税枠を使えます。非課税枠は「500万円×法定相続人の数」によって算出され、例えば、妻と子3人の合計4人が法定相続人である場合、2,000万円までは課税されません。
生命保険の非課税枠は、相続税の基礎控除額[i]とは別に設けられています。そのため、終身保険を活用すれば、この非課税枠を使って、効果的な相続税対策ができるのです。
[i] 相続税の基礎控除額=3,000万円+相続人の数×600万円
所得税・住民税の節税ができる
終身保険は、一般生命保険として、生命保険料控除制度の対象です。控除対象となるのは所得税と住民税で、控除限度額は契約時期によって以下のようになります。
・ 2012年1月1日以降の契約…所得税4万円、住民税2万8,000円
・ 2011年12月31日以前の契約…所得税5万円、住民税3万5,000円
終身保険には、以下のようなデメリットがあります。加入を検討するにあたっては、これらのデメリットについても正しく理解しておく必要があります。
掛け捨て型の保険に比べて保険料が高い
終身保険は、掛け捨て型の保険に比べて保険料が高く設定されています。終身保険には解約返戻金があり、その分が保険料に上乗せされているのです。実際、被保険者の年齢や保険金額といった条件を同じにして試算してみると、掛け捨て型の定期保険に比べて終身保険の方が、保険料が高くなってしまうケースがほとんどです。
終身保険で高額な死亡保障を用意しようとすると保険料がかなり高くなってしまいますので、遺族の生活資金の確保には定期保険を、葬儀費用の確保には終身保険を、というように目的によって上手に使い分けることをおすすめします。
解約により損をする可能性がある
終身保険の解約返戻率は保険期間の経過に伴い少しずつ高くなり、解約返戻金額が払込保険料額を上回るには、かなりの期間を要します。そのため終身保険を早期に解約すると、大きく損をする可能性があるのです。
終身保険への加入を検討するにあたっては、保険料や保険料払込期間についてはもちろん、解約返戻金の推移についても入念に確認しておきましょう。
低金利のため貯蓄に向いていない可能性もある
終身保険の大きな魅力のひとつである「貯蓄性」ですが、2016年にマイナス金利政策が導入されて以来、現在も低金利状態が続いています。その影響は保険商品にも及んでおり、終身保険の解約返戻率は年々低下傾向にあります。加入時の年齢によっては、保険料払込期間満了後も解約返戻率が100%を下回る商品もあるのです。
死亡保障など保障性があるという点において終身保険が魅力的な商品であることに変わりはありませんが、貯蓄を主たる目的として加入する場合、現在の低金利状態では十分なリターンを得られない可能性があります。貯蓄の手段として終身保険を検討する場合は、投資信託や積立NISAなど、他の方法も検討してみることをおすすめします。
保険料払込期間が長い
終身保険の保険料払込期間を75歳払い済み、80歳払い済み、というように長めに設定した場合、あるいは、終身払いにした場合、退職後も保険料を払い続けなければなりません。終身保険は払込期間を通して保険料が変わりませんが、同じ保険料でも、現役で働いているときと年金生活になってからとでは、家計に占める負担割合が異なります。
保険料払込期間を長めに設定する場合は、退職後も払い続けられる保険料になっているかどうか、慎重に考えてみる必要があるでしょう。
インフレリスクがある
終身保険の解約返戻金や保険金を受け取れるのは、契約時よりかなり年数が経過してからになるケースが一般的です。そうすると、将来インフレ[i]が起きた場合、受け取った解約返戻金や保険金の価値が、今よりかなり下がってしまう可能性があります。
保険期間が長期にわたる終身保険には、このようなインフレリスクがあることも理解しておかなければなりません。積立利率変動型終身保険や変額保険(終身型)はインフレリスクに対応しやすい商品ですので、この種の終身保険を検討してみるのもいいでしょう。
[i] インフレとは、物やサービスの値段が上がることにより、お金の価値が下がる現象のことをいいます。
終身保険は、亡くなったときの死亡保障としてだけでなく、以下のように様々な活用方法があります。
葬儀にかかる費用はその規模や地域によって異なりますが、日本消費者協会が2019年に実施した「葬儀についてのアンケート調査報告書」によると、葬儀にかかる費用の平均は143万1,285円となっています。終身保険は、高額になりがちな葬儀費用を準備する手段として活用することができます。
保険金額は200~300万円程度あれば安心ですが、まだお墓を購入していない場合は、300~500万円程度に設定することをおすすめします。
終身保険は、セカンドライフを豊かにするための、老後資金を準備する手段としても活用できます。
例えば、ある生命保険会社の低解約返戻金型終身保険について、【30歳男性・保険金額500万円・60歳払い済み】という条件で試算してみると、以下のようになります。
・ 払込保険料総額…約392万円
・ 払込期間満了後の解約返戻金額…約430万円
・ 払込期間満了後の解約返戻率…約109.9%
解約返戻金は、公的年金受給開始までの生活費や老後の旅行や趣味のためのゆとり資金などに活用できるでしょう。なお、老後資金の準備を目的として終身保険に加入する場合、定年までに保険料の払込みを終えられるような保険料払込期間を設定することをおすすめします。
終身保険は、子供の高校・大学の入学金や学費、留学費用といった教育資金を準備するための手段としても活用できます。
保険料払込期間を10年、15年というように子供の成長に合わせて設定し、その解約返戻金を教育資金に充てるのです。終身保険は学資保険のように満期が決まっている商品ではありませんので、金銭的に余裕がある場合は保険を解約せず、そのまま寝かせておくこともできます。
また、終身保険には死亡保障機能が備わっていますので、親に万一のことが起きた場合には、死亡保険金を教育資金として遺せます。
上述のように生命保険には、相続税の「非課税枠」が設けられています。非課税となるのは【500万円×法定相続人の数】で、例えば、法定相続人が妻1人、子供3人である場合、非課税枠は2,000万円となります。
この非課税枠は相続税の基礎控除枠とは別に設けられているものですので、相続財産が基礎控除額を上回りそうな場合、終身保険を活用することで相続税対策をすることが可能です。
また、相続人が複数いる場合は争いが起きるケースも少なくありませんが、生命保険の受取人は、自由に指定することができます。また、死亡保険金は受取人固有の財産として扱われ、遺産分割協議の対象にもなりません。そのため終身保険を活用すれば、相続人間の争いを回避したり、特定の相続人だけに財産を遺したり、といったことが可能になります。
相続財産のほとんどが不動産など現金以外のものである場合でも、相続税は現金で納めなければなりません。そうすると、相続人は多額の納税資金の捻出に苦慮することになります。そういった場合に終身保険があれば、その保険金を納税資金に充てることができます。
ここまで終身保険の特徴について詳しくみてきましたが、そもそもこの保険は必要なものなのでしょうか。終身保険にはどのくらいの人が加入していて、この保険が必要なのはどんな人なのでしょうか。
生命保険文化センターが平成25年以降の民保加入世帯を対象に実施した「直近加入契約(民保)の保険種類」に関する調査によると、終身保険に加入した人が最も多く、全体の35.3%という結果でした(「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」[i]より)。次に多い医療保険が23.3%ですので、終身保険に興味を持っている人がいかに多いのか、ということがよくわかります。
[i] 生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」p60
多くの人が興味をもつ終身保険ですが、この保険はどんな人に必要で、どんな人には不要なのでしょうか。
終身保険が必要な人とは?
以下に当てはまる方は、終身保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
・ 子供の教育資金を準備したい人
・ 老後資金を準備したい人
・ 葬儀費用を準備したい人
・ 自分が亡くなった後の相続人間の争いを避けたい人
・ 相続税資金を準備したい人
・ 相続税対策をしたい人
・ 計画的に貯金をするのが苦手な人
終身保険が不要な人とは?
以下に該当する場合、終身保険はニーズに合わない可能性があります。
・ 葬儀費用や納税資金を支払えるだけの現金を蓄えている人
・ 遺された家族の生活資金の確保を目的としている人(定期保険や収入保障保険がおすすめ)
・ 長期間にわたり保険料を払い込む自信がない人
終身保険選びは、
① 加入目的を明確にする
② 保険金額を決める
③ 保険料払込期間を決める
④ 解約返戻率などを比較する
という順に進めていくことをおすすめします。
まず、① 加入目的についてですが、保障性を重視するのか貯蓄性を重視するのかによって、選ぶべき商品が変わってきます。保障性を重視する場合は、保険料払込免除特約を付保できる商品や保険料が安い商品を検討してみてはいかがでしょうか。貯蓄性を重視する場合は、解約返戻率が高い商品を検討するといいでしょう。
次に② 保険金額ですが、これも、加入目的によって異なります。なにを目的に終身保険に加入し、そのためにはいくら必要なのか具体的にシミュレーションしてみると、必要な保険金額が見えてくるでしょう。
加入目的と保険金額が決まったら、③ 保険料払込期間を決めます。教育資金の準備が目的ならば子供の成長に合わせて、老後資金の確保が目的ならば定年に合わせて、保障性を重視するならば、あるいは保険料を安く抑えたいならば終身払いに、というように具体的に検討してみましょう。
また、終身保険の解約返戻率は、商品によって異なります。そのため終身保険選びをする際は複数社の商品で試算し、どの商品の最高解約返戻率がどのくらいなのか比較してみましょう。
こちらの動画でも終身保険についてわかりやすく解説をしています。「終身保険の種類」「終身保険のメリットとデメリット」などについてもファイナンシャルプランナーが解説しているので、ぜひこちらもご参考にしてみてください。
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