生命保険(死亡保険)のひとつである「定期保険」は、死亡もしくは高度障害状態になった時に死亡保険金が支払われる保険です。
特徴として、解約返戻金がなく、あってもほとんど少額であることから「掛け捨て」と表現することが多い保険で、直近で生命保険を契約した人の種類別加入率では9.2%※となっています。
※出典: (公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」
定期保険とは、保障期間内に被保険者が死亡もしくは高度障害状態になった時に、死亡保険金が支払われる保険です。
あなたの万一の時に備えて、用意すべき必要額が高額なときに、
1.「お手頃な保険料」で
2.「必要な金額」を
3.「必要な期間」だけ
用意することができる保険です。
いつからいつまでと期間を区切り、その間に死亡したら契約時に決めた死亡保険金額を受け取れる定期保険のしくみはいたってシンプルなので、幅広い層が活用できる使い勝手のいい保険です。
掛け捨てと呼ばれる名の通り、解約返戻金がないか、あってもほとんど少額のため、契約が満了した時に払い込んだ保険料の累計額が戻ってくることはありません。
世帯の家計維持者を契約者・被保険者として、死亡保険金受取人をその家計維持者の配偶者もしくは子とする契約の形態が、一般的です。
注意していただきたいのが、契約者・被保険者は同じ人にするという点です。
契約者と被保険者が異なると、死亡保険金受取時の税金の扱いが変わってきます。
あなたが夫婦共働きであるなら、それぞれの万一の場合に、世帯の家計にどのような影響があるのかを考慮して検討する必要があります。
定期保険の種類について、いくつかの観点から分類できます。
1 定期保険(ていきほけん)
5年、10年と言った形であらかじめ一定の期間を保障期間とし、その期間中に死亡または高度障害状態になった場合に保険金を一括で受け取るものです。一番シンプルな形です。
2 逓減定期保険(ていげんていきほけん)
契約後、保障期間の経過とともに受け取ることができる死亡保障額(死亡保険金額)が一定の割合で減額されていくしくみをもった定期保険です。
収入保障保険は、逓減定期保険のなかまです。
3 逓増定期保険(ていぞうていきほけん)
契約後、保障期間の経過とともに受け取ることができる死亡保障額(死亡保険金額)が一定の割合で増額されていくしくみをもった定期保険です。
4 収入保障保険(しゅうにゅうほしょうほけん)
保障期間は、定期保険と同様で一定期間ですが、保険金を一括ではなく年金形式で受け取るものです。
1 リスク細分型定期保険(りすくさいぶんがたていきほけん)
一般に、生命保険は保険加入者(被保険者)を
・年齢
・性別
・職業 など
でグループに分け、死亡率、病気の罹患率などをもとに自然保険料を算出しています。
そこからさらに、以下の細かいグループに分けてリスク細分型保険料率を算出し、適用したものがリスク細分型保険です。
・身長
・体重
・血圧値
・喫煙歴
・健康状態 など
生命保険会社所定の条件を満たし、健康であればその状況に応じて保険料が安くなります。
状況によってリスクが高いと判断される場合、逆に保険料が高くなる可能性もあります。
2 引受基準緩和型定期保険(ひきうけきじゅんかんわがたていきほけん)
健康状態に不安がある人でも申し込みしやすいように、告知事項の内容を簡易に、保険の引受基準を緩和した保険です。
保険加入者(被保険者)間の健康状態に関するリスク率が高い傾向になるため、保険料が割増になります。
健康状態を詳細に告知することで、保険料が割増しされていない保険に加入できる可能性もあるため、よくご検討ください。
支払削減期間が設定され、契約日からその日を含めて1年以内に死亡保険金の支払事由に該当した場合、支払われる死亡保険金額が基本保険金額の50%に削減されている商品もあります。
定期保険や収入保障保険は、いわゆる「掛け捨て」と呼ばれる契約になります。
契約時にあらかじめ期間を定め保障期間を設定するにあたり、以下の保障期間を選びます。
1. 全期型と更新型
2. 年満了と歳満了
上記2種類について解説します。
全期型と更新型
全期型
主契約の保険料払込満了までの「全ての期間」を、定期保険などの保障期間にしたものです。
保険料払込期間中、保険料は一定です。
同じ年齢で同額の死亡保障額の契約をした場合、最初は更新型に比べて保険料は高くなりますが、最終的に総払込保険料額は更新型よりも少なくなることが一般的です。解約返戻金が多少あります。
更新型
契約から「5年・10年など」の年数を保障期間(保険期間)として設定し、その後、保障期間を更新していくものです。
更新の度、更新時の年齢で保険料を再計算するため、保険料が上がっていきます。
同じ年齢で同額の死亡保障額の契約をした場合、最初は全期型に比べて保険料は安くなりますが、同じ保障額で更新を続けると保険料が高くなります。
ライフステージごとに保障を見直すことができますが、解約返戻金がありません。
全期型と更新型、どちらが良い?
全期型が向いている方は、以下のとおりです。
・ご家族の構成が今後変わる(増える)予定のない方
・保険料の変化がないほうが良いと考える方
一方、更新型は保障の見直しやすさを活かして以下の人に向いているでしょう。
・契約者が比較的若い方
・子どもが小さく、教育費などの負担も考えて、死亡保障の保険料を出来るだけ安く抑えたい方
年満了と歳満了について
年満了(ねんまんりょう)
契約は基本的に自動更新となるため、満了前に保険会社からの満期の案内の通知があり、契約者からの解約の申し出がない限り、契約当初に定めた年数が経過すると、保障内容はそのままで自動的に更新されます。
自動更新の時の年齢で保険料を再計算するため、保険料が高くなります。
さらに、更新には70歳まで・80歳までと更新可能な年齢条件が決めている保険会社もあるため、 上限年齢に達するとその年齢以降は更新できなくなります。
歳満了(さいまんりょう)
歳満了は自動更新がなく、満了すると契約は消滅し保障もなくなります。
保障期間(保険期間)の更新がなく、保険料の再計算を行う必要がないので保険料が高くなりません。
年満了と歳満了、どちらがいいの?
6年満了を選び自動更新した場合、思っていたよりも保険料が高くなる可能性があります。
保険料を安く抑えるために更新のない歳満了を選ぶのかは、あなたの考え方次第です。
保険料はどのタイプが安い?
保険金を受け取る可能性や、保険金の支払われ方によって、次のような構図になります。
引受基準緩和型定期保険>定期保険>収入保障保険・リスク細分型定期保険
定期保険は掛け捨てであるため、終身保険と比べると保険料は安くなっています。
定期保険の種類の中で見ると、リスク細分型であればさらに保険料が安くなる可能性がある一方、引受基準緩和型になると逆に高くなります。
保険料の払込期間は?
原則、保障期間(保険期間)=保険料払込期間です。
保障期間(保険期間)内に保険事故(被保険者の死亡、会社所定の高度障害状態)に至った場合は、所定の死亡保険金が死亡保険金受取人へ支払われ契約が終了します。
定期保険のメリット
・定期保険は少ない保険料で大きな額の死亡保障を用意することができる
・収入保障保険は定期保険より少ない保険料で無駄のない死亡保障を用意することができる
・定期保険の全期型・歳満了は総払込保険料額が最終的に更新型より少なくなることが多い
・定期保険の更新型・年満了は契約当初は全期型に比べて保険料が安い
・保険の見直しがしやすい
・相続税対策として利用することができる
・生命保険料控除を利用して所得税・住民税の節税ができる
保険の見直しがしやすい
定期保険のメリットの1つは、保険の見直しがしやすいことです。
結婚や出産、子供の成長などライフステージの変化とともに必要な保障も変わってきます。保険を見直し、必要な保障を過不足なく準備すれば、 保険料の節約にもつながります。
保険の見直しがしやすい理由として、保障期間が短く、満期や更新までの期間が比較的短いことが挙げられ、満期時や更新時に保険を見直しやすくなります。
また、解約返戻金がない(または少ない)ので、現在の保険を解約して新しい契約に加入しても、 早期解約によるデメリットもあまり気にならないでしょう。
生命保険料控除の対象である
定期保険は、保険料を支払った分が生命保険料控除の対象となり、 保険料の一定額が所得控除され所得税と住民税が安くなることから、年末調整にて安くなった税金が還付されます。
還付額は、所得税と住民税それぞれについて下記の計算式で計算されます。
(所得控除額)×(税率)
生命保険料控除利用しない場合と比較すると、還付額の分だけ税金が安くなります。
なお、生命保険料控除額は2012年1月に制度改正があったため、保険の加入年度によって計算方法が異なります。
定期保険のデメリット
・定期保険・収入保障保険は、保障期間内の死亡でなければ満期になっても保険金が支払われない
・定期保険の全期型・歳満了は、契約当初は全期型に比べて保険料が高い
・定期保険の全期型・歳満了は契約が自動更新されないため、満了と同時に保障がなくなる
・定期保険の更新型・年満了は、総払込保険料額が最終的に全期型に比べ多くなることがある
・収入保障保険は逓減定期保険の一種であるため、満期が近くなると受け取ることができる死亡保障額は小さくなる
保険料の面で定期保険の最大のデメリットは「保障期間内の死亡でなければ、満期になっても保険金が支払われない」ことです。
つまり、満期時の満期金※1 がないので※2、保険期間中に支払った保険料は掛け捨てになるということです。※1 途中解約の場合は解約返戻金。※2 途中解約の場合はほとんどない。
終身保険と比較して月々の保険料が安いとはいえ、数十年間支払った保険料が全く戻ってこないため加入をためらう人もいると思います。
次に、保障面での定期保険の最大のデメリットは「定期保険の全期型・歳満了は、満了と同時に保障がなくなる」ことです。
更新型の保険は、満期を長くしても加入当初の保険料が変わらないため80歳満期など長期の加入が多いのに対し、全期型の保険は保険料を抑えるために60歳満期や65歳満期の加入が多くなります。
そのため、60歳、65歳以降でも、葬儀費用などに備え死亡保障を準備したいと考える人は、新規の保険加入が必要となります。
しかし、60歳以降で新規加入するには、
・保険料が高くなる
・健康上の理由で加入が難しい
などのデメリットが発生します。
「定期付終身保険」という定期保険と終身保険を組み合わせた商品が、長期間にわたって死亡保障のメイン商品であった理由の1つは、60歳、65歳以降の死亡保障を確保できることでした。
解約について
生命保険の契約は、可能な限り解約しないことが前提で契約されますが、環境の変化や家計の変化などでどうしてもという時もあるでしょう。その場合には、生命保険会社所定の手続きを踏むことで解約が可能です。
生命保険会社ごとに手続き方法は異なりますので、詳しくはご契約の生命保険会社へご確認ください。
解約返戻金と税金について
次に挙げる保険は掛け捨てであるため、解約しても解約返戻金はないか、少ないことが一般的です。
・定期保険
・収入保障保険
・逓減定期保険
以下、それぞれの定期保険の解約返戻金のしくみです。
逓増定期保険は、掛け捨てではあるものの、解約返戻率のピークで解約した場合は解約返戻金が戻ってきます。
解約返戻金を受け取った際、税金は一時所得の扱いになります(2020年9月現在)。
これは「解約までに払い込んだ保険料の累計額<解約返戻金」の場合に、 一時所得として所得税がかかることを指します。基本的な計算式は、下記の通りとなります。
【(解約返戻金-支払保険料総額-50万円(特別控除))×1/2】=課税対象額
一時所得は、その他の所得との総合課税となり、個人毎に税率等が異なるためご注意ください。詳細は、税理士または税務署にご確認をお願いいたします。
生命保険は残される家族の生活資金の準備だけではなく、 自分の死後の葬儀費用などの整理資金として、また 相続対策として活用することも可能です。
遺族の生活資金の準備として
定期保険加入の主な目的は、遺族の生活資金準備ですが、遺族の生活のために定期保険ではいくらの資金を準備すればいいのでしょうか?
保険で準備すべき金額は「必要保障額」などといわれ、
・死亡時の資産・負債
・死亡後の遺族の収入・支出
を把握することで計算できます。必要保障額の計算については、こちらの記事をご覧ください。
子供の教育資金の準備として
定期保険は、子供の教育資金の準備として活用できます。
子供の教育費は進路により大きく異なりますが、文部科学省の子供の学習費調査(平成30年度)によると一般的なコース※で1,000万円以上かかります。※幼稚園が私立、小学校から高校まで公立、大学が私立文系
子供の教育資金は学資保険で準備する方法がありますが、万が一の場合、定期保険を使った方が安い保険料で大きな資金を得ることができます。
しかし、死亡しなかった場合には保険金の支払いはないので、別途教育資金を準備しなければなりません。
相続税の納税資金準備として
あなたに万一が起き、相続が発生した場合、 相続財産※は相続税の課税対象になります。※葬儀費用などの支出分を除く。
遺産総額が基礎控除額以下であれば、申告・納税は不要となります。
相続税の基礎控除額の計算のしかた=3,000万円+(600万円×法定相続人数)
基礎控除額を超えた部分が、相続税の課税対象です。
相続税は相続が発生してから申告・納税は10ヶ月以内、原則、現金一括納付(物納、延納しない限り)となっています。
配偶者の相続については「配偶者の税額軽減」という制度、未成年の相続については「未成年者の税額控除」があります。
この時の相続税相当額を死亡保険金額とし、
・契約者=被保険者(あなた)
・死亡保険金受取人をあなたの被相続人(配偶者、子)
とする契約をすることで、納税資金を確保するという活用法があります。
遺産分割対策としての活用
相続財産が分割がしにくいもの(不動産など)で相続人が複数人である時に、相続人を死亡受取人として、 その相続人の相続分相当額を生命保険金として確保するということも可能です。
死亡保険金は生命保険会社所定の必要書類を提出し、死亡保険金受取人本人名義の口座へ現金で振込することが一般的です。
契約者と被保険者が同一人である生命保険の場合、この時の死亡保険金は、指定された死亡保険金受取人の固有の財産となります。表現を変えると、その相続人が相続放棄や限定承認をしていても死亡保険金は受け取ることができるということです。
生命保険で相続対策を行う際は、最寄りの税務署または税理士や弁護士に相談し、よくご検討ください。
死亡保険金は「相続みなし財産」と呼ばれ、 相続税の対象となります。ただし、非課税限度額が設定されています。
相続人が受け取る死亡保険金は、非課税限度額までは相続税の課税対象とはなりません。
超える部分については、相続税の課税対象としてその他の相続財産と合算して、相続税を計算することになります。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして計算します。法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、
・実子がいるときは1人
・実子がいないときは2人まで
です。 実子がいる場合、養子は常に1人の計算になります。
法定相続人 | 非課税限度額 |
---|---|
配偶者 子2人 | 500万円×3人=1500万円 |
配偶者 実子1人 養子2人 | 500万円×3人=1500万円 |
ここまでで、必要額の計算や相続対策の活用方法などをみました。
それでは次に、定期保険の選び方や見直し方のポイントについてみていきましょう。
あなたの年齢と家族構成から生活必要額を求め、その金額と保険料から定期保険を比較検討しましょう。
第一子が生まれたばかり、もしくはこれから生まれるといった場合には、第二子以降の誕生から独立まで含めて考える必要があります。
・教育資金
・住宅資金 など
その他さまざまな資金が必要となる時期です。
家計状況を把握し、出来るだけ保険料負担を軽くしたいのか、それとも変動しない保険料が良いのか含めて考えましょう。
保険の見直しをする際は、既存の生命保険契約を含めて、必要保障額が足りているのか計算をし、
・新たに契約をする
・もしくは既存の契約を増額する
といった見直し方法があります。
お子様が成長し独立した場合など、必要保障額が下がった場合は死亡保険金額を減らし、 ご自身が生きていくための保険(老後資金、介護費用)を検討するということも必要でしょう。
その他、ご家庭の経済状態で保険料支払いが負担になって解約を考える場合、たとえば、死亡保険金額を減額するといった方法も考えられます。
出来るだけ、保障が無くならないで済む方法を模索しましょう。
定期保険の加入にあたってのチェックポイントは、下記の通りとなります。
何のため? | ・家族の生活資金のため ・死後の葬儀費用などの整理資金を用意するため ・相続税相当額を現金で準備するため ・代償相続資産を準備するため |
---|---|
いくら必要? | ・目的に合わせて準備すべき必要額を計算する 保険料は安いほうがいい → 更新型、年満了 変わらないほうがいい → 全期型、歳満了 |
期間は? | ・家族にとって必要な期間(5年・10年・20年などで設定)の保障が必要である 必要期間が短い ️→ 更新型、年満了 必要期間が長い → 全期型、歳満了 |
誰が使う? | ・契約者・被保険者=自分 ・死亡保険金受取人=あなたの相続人(主に配偶者、子など) |
受取方法は? | 自分(被保険者)の万一時に:一括して受け取りたい |
こちらの動画でも定期保険についてわかりやすく解説をしています。「定期保険のメリットとデメリット」「定期保険の選び方・見直し方」などについてもファイナンシャルプランナーが解説しているので、ぜひこちらもご参考にしてみてください。
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