私たちは、病気やケガ、事故など様々なリスクを抱えて生きています。
生命保険(死亡保険)とは、自分に万一のことが起きた場合に自分や家族の支えとなるものです。
そんな生命保険(死亡保険)は、死亡保険、生存保険、生死混合保険、というようにいくつかの種類に分けられ、それぞれ保障内容が異なります。
この記事では、生命保険(死亡保険)の種類や特徴、保障期間や保険料、保障額の決め方、加入するメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。
生命保険(死亡保険)とは、自分に万一のことがあった場合に、自分や家族の生活を守るためのものです。
「万一」とは、”私たちが抱えるリスク”のことを意味し、具体的には病気やケガ・介護・死亡などがこれにあたります。
ひとたびこういったことが起こると、経済的に困窮したり、遺された家族が今まで通りの生活を続けることが困難になる可能性があります。生命保険(死亡保険)は、こういった経済的リスクに備えるためのものなのです。
大勢の加入者で保険料を公平に負担しあい、万一のことが起きた場合には、約定の保険金の給付を受けられます。
生命保険文化センターの調査では、88.7%の人が何らかの生命保険(死亡保険)に加入していることがわかっています。
生命保険(死亡保険)には非常に多くの種類があり、死亡保険や生存保険・生死混合保険はもちろん、医療保険やがん保険・介護保険も、生命保険(死亡保険)の一種です。また中には、子供の教育費や老後の資金を準備する手段として活用できるものもあります。
ここでは主に、死亡保険としての生命保険(死亡保険)についてみていきたいと思います。
生命保険(死亡保険)は、被保険者の死亡に伴う経済的リスクに備えるための保険です。
そしてこの生命保険(死亡保険)は、保険金などの支払われ方によって、
(1)死亡保険
(2)生存保険
(3)生死混合保険
の3種類に分類されます。この章ではまず、それぞれの保険の特徴についてみていきましょう。
死亡保険は、保険期間によって「定期保険」と「終身保険」に分類されます。また近年では、保険期間の経過に伴い保険金額(保障額)が変化する「収入保障保険」も販売されています。
次に、これら3種類の死亡保険の特徴について詳しく解説します。
定期保険
定期保険は、保険期間が限定されているタイプの生命保険(死亡保険)です。
この期間中に死亡した場合、あるいは保険会社所定の状態になった場合には保障を受けられますが、契約期間満了後に死亡した場合は、保障を受けられません。
保険期間は、契約日より5年間・10年間・15年間というように、予め決まっているプランの中から選択する商品もあれば、1年単位で契約期間を任意に設定できる商品もあります。
保険料を抑えつつ大きな保障を用意できる
定期保険最大のメリットは「安い保険料で大きな保障を用意できる」という点です。というのも定期保険の保険料は、保険期間中の保険金支払いリスクを考慮して算出されます。
そのため死亡リスクが少ない若い間は、保険料を安く抑えつつ、2,000万円や3,000万円といった大きな保障額のプランに加入することができるのです。
終身保険
終身保険は、生涯にわたり保障を受けられる生命保険(死亡保険)です。
人はいつか亡くなりますので、このタイプの生命保険(死亡保険)では、契約が有効に継続している限り、必ず保険金の給付を受けられます。
保険金額は保険期間を通して変わらず、保険期間中、何歳で死亡しても同一額の保険金が支払われます。
また、終身保険には解約返戻金があり、保険期間途中で解約をした場合、約定の解約返戻金が支払われます。
商品によっては保険料払込満了時の解約返礼率が100%を超えるものもあるため、その貯蓄性に着目し、老後の生活資金などを形成する手段として活用されることもあります。
ただし、保険料の一部を解約返戻金の積み立てに充てるため、定期保険や収入保障保険といった掛け捨て型の保険と比較すると、保険料は高くなってしまいます。
収入保障保険
収入保障保険は、保険期間中に死亡あるいは保険会社所定の状態になった場合に「毎月○○円」という形で、満期時まで約定の年金が給付される保険です。
このタイプの生命保険(死亡保険)は、保険期間の経過に伴って保険金額が少しずつ減少します。
そのため死亡時期によって、給付を受けられる保険金総額や年金の受け取り回数が変わります。
子供がいる場合、子供が小さい頃は大きな額の保障が必要ですが、子供の成長や進学に伴い必要な保障額は徐々に少なくなります。
そういった意味で収入保障保険は、必要保障額の変化に合わせて保険金額が変化する、合理的な生命保険(死亡保険)だと言えるでしょう。
具体的には「学資保険」や「個人年金保険」が生存保険にあたります。
学資保険
学資保険は、子供の将来の学費を準備するために活用できる生命保険(死亡保険)です。
満期時に満期保険金が給付されるほか、子供の入学や進学に合わせて祝金などの一時金を受け取れる商品も多くあります。
また、学資保険は親を契約者、子供を被保険者として契約することが多く、契約者である親が死亡した場合は、それ以後の保険料の払込みが免除されます。
つまり学資保険には、
① 子供の教育資金を積み立てる
② 親に万一のことがあった場合に備える
という2つの役割があるのです。
個人年金保険
個人年金保険は、保険料払込期間満了後、約定の年金受取開始期より年金の給付を受けられる生命保険(死亡保険)です。
年金の受け取り期間には、以下のような種類があります。
確定年金の年金受取期間中、あるいは保障期間中に被保険者が死亡した場合は、残存期間に対応する年金もしくは一時金が支払われます。
また、年金受取開始期より前に被保険者が死亡した場合、死亡給付金が支払われるものの、その額は少額である商品が一般的です。
被保険者が保険期間満了時までに死亡した場合には死亡保険金を、被保険者が保険期間満了時に生存していた場合には生存保険金(満期保険金)を受け取れます。
養老保険
養老保険は、代表的な生死混合保険です。
約定の保険期間中に被保険者が死亡した場合は、死亡保険金が給付されます。また、契約期間満了時(満期時)に被保険者が生存していた場合は、生存保険金(満期保険金)が給付されます。
死亡保険金と生存保険金の金額は、同額となります。
生命保険(死亡保険)は、満期保険金や解約返戻金の有無によって「掛け捨て型」と「貯蓄型」に分けられます。
これら2つのタイプにはそれぞれにメリット・デメリットがありますので、それらを正しく理解したうえで、自分のニーズに合ったタイプの商品を選びましょう。
このタイプの生命保険(死亡保険)に加入している場合、満期時に満期保険金が支払われることはありません。また契約期間中に解約をしても、解約返戻金はありません。
掛け捨て型は、定期保険や収入保障保険に取り入れられていることが多い契約形態です。
満期時に被保険者が生存していた場合、それまでの掛け金は完全に「掛け捨て」となってしまいます。
掛け捨て型生命保険(死亡保険)のメリット・デメリット
掛け捨て型の生命保険(死亡保険)には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・ 貯蓄型に比べて保険料が安い
・ 貯蓄性がなく保障に特化した保険であるため、安い保険料で大きな保障を得られる
・ 保障内容の見直しがしやすい
デメリット
・ 契約期間中に解約しても、解約返戻金がない(あっても、ごくわずか)
・ 満期時までしか保障を受けられない
このタイプの生命保険(死亡保険)は、満期時に満期保険金が給付されたり、解約時に解約返戻金が給付されたりします。貯蓄型は、終身保険や養老保険などに多く取り入れられている契約形態です。
一般に、解約返戻率は契約期間の経過に伴って少しずつ上昇しますが、近年は「低解約返戻金型終身保険」も販売されています。
貯蓄型生命保険(死亡保険)のメリット・デメリット
貯蓄型の生命保険(死亡保険)には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・ 1つの生命保険(死亡保険)契約で、万一への備えと貯蓄の両方ができる
・ 契約期間中に解約しても、払った保険料の一部が返ってくる
・ 契約者貸付制度や自動振替貸付制度を利用できる
デメリット
・ 保険料の一部を積み立てるため、掛け捨て型に比べて保険料が割高
・ 低解約返戻金型の商品の場合は、払込期間中の解約返戻率がかなり低めに設定されている
・ 途中で解約すると損をする場合があるため、保障内容の見直しをしにくい
・ 加入する生命保険(死亡保険)会社の経営状態を見極める必要がある
生命保険(死亡保険)は、保険期間(保障期間)によって「定期保険」と「終身保険」の2種類に分けられます。
保険期間があらかじめ定められている定期保険に対し、終身保険は保険期間が終身で、一生涯保障が続きます。
ただ定期保険と終身保険には、保険期間以外にも様々な違いがあります。どちらのタイプが向いているのかは、
・家族構成
・加入時の年齢
・ライフステージ
・必要な保障額
・経済状況
・生命保険(死亡保険)に貯蓄性を求めるかどうか
といったことによって変わります。
では、定期保険と終身保険にはどのような特徴があり、それぞれどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
定期保険は、保険期間が予め決まっている生命保険(死亡保険)です。保障を受けられるのは約定の保険期間内のみで、満期時に生存していた場合、保険金は支払われません。
保険期間の定め方には、
1. 歳満了
2. 年満了
の2種類があります。
歳満了タイプは「60歳まで」「65歳まで」というように、年齢によって保険期間を決めます。これに対して年満了タイプは「10年間」「15年間」というように、年数によって保険期間を決めます。
定期保険の保険料は、予め定めた保険期間中における保険金支払いリスクを考慮して決めるため、一生涯にわたり保障が続く終身保険と比較すると、保険料が安くなります。
また、定期保険は同じ保障内容(同じ保険金額)でも保険期間によって保険料が異なり、一般に、保険期間が長くなればなるほど保険料が高くなります。
定期保険のメリット・デメリット
定期保険には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・ 保障額を大きくしても、保険料を安く抑えられる
・ ニーズに合わせて保険期間を選択できる
・ 保障内容の見直しがしやすい
デメリット
・ 掛け捨て型の商品が多く、満期保険金や解約返戻金がない
・ 一定期間しか保障を受けられない
終身保険は、保険期間が終身である生命保険(死亡保険)です。保険期間が予め決まっている定期保険とは異なり、生涯にわたって保障を受けられます。
人はいつか亡くなりますので、このタイプの生命保険(死亡保険)では、被保険者が死亡したとき、あるいは保険会社所定の状態になった場合に、保険金の受け取りが可能です。
また、終身保険は解約返戻金があるものが一般的で、保険期間の途中で解約した場合、約定の解約返戻金が支払われます。解約返戻率は、払込期間の経過に伴い上がっていきます。
とても魅力的な終身保険ではありますが、保険料の一部を積み立てに充てるため、定期保険に比べて保険料が割高になってしまいます。
ただ、定期保険のように保険期間が決まっているわけではなく契約の更新がないため、保険料は加入時のまま変わりません。そのため若いころに加入すれば、保険料を抑えられます。
終身保険のメリット・デメリット
終身保険には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・ 生涯にわたり保障を受けられる
・ 解約返戻金がある
・ 保障性と貯蓄性、2つの機能がある
デメリット
・ 定期保険と比べ、保険料が高い
・ 保険料の払込期間を終身にした場合、生涯にわたり保険料を払い続けなければならない
生命保険(死亡保険)への加入を検討するにあたって、必ず考慮しなければならないのが「保険料」についてです。
生命保険(死亡保険)は、短くても10年、長ければ数十年にわたってかけ続けるものであるため、無理なく払い続けられる保険料に設定する必要があるからです。
では、生命保険(死亡保険)の加入者は、保険料を毎月いくら払ってるのでしょうか。
生命保険文化センターの調査によると、平成30年における世帯年間払込保険料(全生保)の平均は、38.2万円となっています。
また、世帯年間払込保険料ごとの分布は以下のようになっています。
世帯年間払込保険料 | 割合 |
---|---|
12万円未満 | 14.8% |
12万~24万円未満 | 16.0% |
24万~36万円未満 | 12.9% |
36万~48万円未満 | 9.8% |
48万~60万円未満 | 6.4% |
60万~72万円未満 | 4.2% |
72万~84万円未満 | 2.2% |
84万円以上 | 5.8% |
世帯人数や世帯年収によっても世帯年間払込保険料が変わってくるため一概には言えませんが、年間12万~36万円未満、月額に換算すると1~3万円未満の保険料を負担している世帯が多いようです。
※出典:生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」p38、p39
では生命保険(死亡保険)の毎月の保険料は、どのくらいに設定すればいいのでしょうか。上述のように生命保険(死亡保険)は、何年にもわたって長期間かけ続けるものです。そのため保険料は、世帯年収を考慮しつつ、無理なく払い続けられる金額にしなければなりません。
生命保険文化センターの調査によると、世帯年間払込保険料(全民保)の世帯年収に対する割合は、7.2%であることがわかっています。
※出典:生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」p43
生命保険(死亡保険)の保険料が妥当な金額かどうか迷ったときは、世帯年収に対する保険料の割合がどのくらいになっているのか、検証してみましょう。
生命保険(死亡保険)の必要保障額や支払い可能な保険料の金額は、世帯主の年齢や収入・ライフステージ・子どもの年齢などによって変化します。
たとえば、小さな子どもがいる世帯の場合、遺された家族の生活資金や子どもの教育資金を考慮すると大きい保障が必要であるものの「保険料はなるべく安く抑えたい」と考える方が少なくありません。
保険料をなるべく安く抑えたい方には、定期保険をおすすめします。
定期保険は保険期間中のみのリスクを考慮して保険料を算出するため、保険料を抑えつつ保障額を大きくすることができるのです。
さらに保険料を抑えたい方は、契約期間の経過に伴って保障額が少なくなる、収入保障保険を検討してみるのもひとつの選択肢でしょう。
終身保険への加入を検討するにあたっては、保障内容や保険料だけでなく「保険料払込期間」にも着目してみることをおすすめします。
というのも終身保険の保険料払込期間には「終身払」と「有期払」の2種類があるのです。
終身払は1回あたりの保険料を安く抑えられますが、終身にわたり保険料を払い込み続ける必要があるため、長生きした場合、支払い保険料の総額が有期払に比べてかなり高くなる可能性があります。
有期払は終身払に比べて1回あたりの保険料が高くなりますが、保険料払込期間後は保険料を支払う必要がありません。
収入が少なくなる老後の保険料負担を抑えたい方にとっては、とても魅力的な払込方法であると言えるでしょう。
また有期払には、長生きした場合、終身払に比べて支払保険料の総額が安くなるというメリットもあります。
どちらの払込方法にもそれぞれメリット・デメリットがありますので、それらを踏まえたうえで自分に合った形態を選ぶことが大切です。
生命保険(死亡保険)への加入を検討する際、必ず決めなければならないのが保険金額(保障額)です。
保険金額は、自分が死んだ場合にどのような費用がどのくらいかかるのか算出し、そのうちどのくらいを生命保険(死亡保険)でカバーするのか、ということを考えてみることで、ある程度の目安が見えてきます。
ここからは、生命保険(死亡保険)の必要保障額と保険金額の決め方について見ていきましょう。
生命保険(死亡保険)の必要保障額を計算するにあたってはまず、人が亡くなった場合にどのような費用がどのくらい必要になるのかシミュレーションしてみる必要があります。
具体的には、以下のような費用について考えてみましょう。
① 葬儀費用をはじめとする死亡整理金
これらにどのくらいの費用がかかるのかは、お住いの地域やお墓の有無によってかなりの違いがあります。
自分に万一のことがあった場合にどのくらいの死亡整理金が必要になるのか、また、それらのうちどのくらいの金額を香典代などでカバーできるのか、シミュレーションしてみましょう。
② 遺族の生活費
生命保険(死亡保険)の必要保障額のなかでも特に大きな割合を占めるのが、遺族の生活費です。
生命保険文化センターの調査によると、世帯主に万一のことがあった場合に必要と考える資金額の平均は、5,560万円(世帯年収の約9.2年分)でした。
※出典:生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」p136
ただ必要保障額は、遺された家族が
・共働きなのか
・専業主婦(夫)の配偶者なのか
・専業主婦(夫)なのか
によって異なります。
専業主婦(夫)の場合
子どもがいない世帯の場合、就職するまでの一定期間の生活費を準備する必要があります。
子どもがいる場合は「就職が難しい」あるいは「労働時間が限られ、十分な収入を得られない」可能性があるため、子どもが独立するまでの間の生活費を準備しておきたいところです。
共働きの場合
共働きの場合も、しばらく仕事を休む可能性を考慮し、一定期間の生活費を準備しておく必要があります。
また、亡くなった人と遺された家族の収入にかなり差がある世帯では、その差額分を上乗せして考えておく必要があるでしょう。
専業主婦(夫)の配偶者の場合
遺された家族が専業主婦(夫)の配偶者である場合、自分の収入があるため生活費を準備する必要はありません。
ただし、子どもがいる世帯の場合、ベビーシッターや家事代行を依頼する必要が出てくる可能性が考えられますので、その費用が自分の収入でカバーしきれない場合は、生命保険(死亡保険)で備える方法を検討してみる必要があるでしょう。
③ 子どもの教育資金
子どもがいる世帯の場合、子どもの教育資金についても考えておかなければなりません。
大学卒業までにかかる費用は、国公立の私立、どちらに進学するのかによって大きく変わってきます。
余裕をもってある程度の金額を見込んでおくと、安心できるでしょう。
自分に万一のことが起きた場合に必要になる費用についてシミュレーションできたら、保険金額をいくらにするのか考えてみましょう。
保険金額は、遺された家族のために準備しておくべきお金から、自分が亡くなった場合に入ってくるお金を差し引いて計算します。
ここにいう「入ってくるお金」とは、遺族年金や勤務先から支給される死亡弔慰金などのことを指します。
生命保険(死亡保険)の加入者は、保険金額をどのくらいに設定しているのでしょうか。
生命保険文化センターの調査によると、令和元年における生命保険加入者(全生保)の保険金額の平均は、男性が1,886万円・女性が801万円。全体の平均は1,261万円という結果でした。
また、性・年齢別の平均は以下のようになっています。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
20代 | 1,330万円 | 735万円 |
30代 | 2,331万円 | 1,013万円 |
40代 | 2,025万円 | 818万円 |
50代 | 1,992万円 | 824万円 |
60代 | 1,192万円 | 655万円 |
※出典:生命保険文化センター「令和元年度生活保障に関する調査」p132、p133
生命保険(死亡保険)への加入を検討するにあたって、必ず考慮しなければならないのが「保険料」についてです。
生命保険(死亡保険)は、短くても10年、長ければ数十年にわたってかけ続けるものであるため、無理なく払い続けられる保険料に設定する必要があるからです。
公益財団法人生命保険文化センター(以下、生命保険文化センター)の2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月発行)によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は89.8%です。
生命保険文化センターの2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2022年10月発行)によると、自分が死亡した場合のための経済的な準備状況では、「準備している」73.1%、「準備していない」24.3%となっているそうです。
※出典:公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2022年10月発行)
「準備している」73.1%と回答した人のうち、その準備方法としてもっとも多かったのが「生命保険」60.3%、次に「預貯金」42.8%でした。
自分に万一のことがあった場合への備えとして生命保険は非常に重視されています。
遺族の生活資金や遺された子どもの教育資金をまかなう手段としては、預貯金をはじめ、生命保険以外にも様々な方法があります。ただ、家族の年齢や世帯年収・ライフステージによっては、預貯金などでは十分な備えを用意できない可能性もあるでしょう。
そういった場合は生命保険を上手に活用することで、私たちが抱えるリスクをしっかりカバーすることができます。
生命保険(死亡保険)が必要な人は下記の通りです。
1.家族やパートナーのために十分な貯蓄がしにくい人
2.死亡時に経済的サポートを必要とする家族・パートナーがいる人
3.住宅ローン以外の借入金(負債)がある人
4.相続税対策に死亡保険金を活用したい人
5.死亡時の最低限の死後整理資金を用意したい人
それぞれについて説明します。
日常的に貯蓄が難しく、かつ家族やパートナーがいる人は、死亡時に備えて定期保険や収入保障保険等で割安で大きな保障を備えられる死亡保険を検討したほうがいいでしょう。
死亡時に、経済的サポートを必要とする家族もしくはパートナーがいる人は、生命保険(死亡保険)の加入の必要性が高いといえます。
特に、自営業・個人事業主、フリーランスで働く人は、会社員・公務員と比べて、万が一の場合に遺族基礎年金しかないため優先的に検討しましょう。
住宅ローンは、団体信用生命保険(団信)があるため、死亡時は住宅ローンが保険金で相殺されるため家族は住宅ローンの返済をする必要が無くなります。
教育ローンや奨学金等の返済義務の伴う借入金(負債)がある人は、死亡後もその返済義務が残るケースが多いため、万が一の時に備え、生命保険(死亡保険)に加入し家族やパートナーまたは連帯保証人の負担を軽減することも検討しましょう。
相続財産が預貯金・債券・株式等の分割しやすいものではなく、不動産等の分割しにくい性質の相続財産が多い場合の代償分割や、相続税を納める場合は現金一括納付が原則となるため、死亡保険金で備えることが有効です。
自分の死後整理資金を最低限用意したい人は、終身保険がおすすめです。
死後整理資金にはどのようなものが考えられるでしょうか。
・ 葬儀にかかる費用(基本料金・飲食・返礼品):平均110.7万円
・ お布施(寺院・教会・神社など宗教者への御礼):平均22.4万円
・ 遺品整理にかかった費用:平均47万円
・ 空き家処分にかかった費用:平均110万円
※出典:株式会社鎌倉新書 いい葬儀【第5回お葬式に関する全国調査】(2022年)
これ以外にも場合によっては下記の費用が発生する可能性があります。
・ お墓の購入にかかった費用:平均135万円
・ 仏壇の購入にかかった費用:平均73万円
・ 相続のため行政書士などに依頼した費用:平均49万円
・ 遺言など弁護士への依頼にかかった費用:平均69万円
※出典:株式会社鎌倉新書 いい葬儀【第5回お葬式に関する全国調査】(2022年)
最低限必要な死後整理資金を葬儀費用・遺品整理として考えると、大体200万円程度あればよい計算になります。
ここまで生命保険(死亡保険)の必要性がある人の5つのパターンについて説明してきました。生命保険(死亡保険)に加入するかどうかは、個人のニーズや状況によって異なりますので、自分に適した保険を選ぶことが大切です。
生命保険(死亡保険)がいらない人は、下記の通りです。
1.経済的なサポートを必要とする家族・パートナーがいない人
2.貯蓄や投資が十分な人
3.住宅ローン以外の借入金(負債)がない人
4.高齢の人
5.経済的余裕がない人
経済的なサポートを必要とする家族・パートナーがいない人は、生命保険(死亡保険)の必要性は低いといえます。
財政的に余裕があり、家族を支援するための資金を十分に持っている場合、生命保険(死亡保険)の必要性は低くなります。
住宅ローン以外の借入金(負債)がない人は、万が一亡くなったとしても、家族・パートナー、または連帯保証人に借入金(負債)の返済の義務を残して負担をかける可能性が少ないので、生命保険(死亡保険)の必要性は低くなります。
一般的に、高齢の人にとって生命保険(死亡保険)の必要性は低い傾向にあります。理由としては、子育てが終わっていることが多いので必要保障額(死亡保障額)が低い、あるいは、死後整理資金であればいい可能性が高いためです。
また、高齢者が保険に新たに加入しようとする場合、保険料が高くなるため、加入するにしても必要最小限にしましょう。
経済的余裕がない人は、まずは医療保険・がん保険等から検討をするようにしましょう。
一般に、生命保険(死亡保険)は、経済的サポートを必要とする家族・パートナーがいる場合に加入するものであるため、年代別で生命保険(死亡保険)の必要性を考える意味はありません。
また、子育てが終わった(こどもが独立した)世帯やリタイアをした高齢者も生命保険(死亡保険)の必要性は非常に低く、老齢年金受給を開始する65歳以降であれば必要性は低くなっていきます。
ライフスタイル別に生命保険(死亡保険)の必要性について解説いたします。
経済的なサポートを必要とする家族がいない限り、原則として生命保険(死亡保険)の必要性は低いといえます。
配偶者が専業主婦・夫である場合には、生命保険(死亡保険)の必要性は高くなりますが、健康で働ける年齢であれば、生命保険(死亡保険)の必要性は低くなります。また、夫婦共働きの場合も同様に生命保険(死亡保険)の必要性は低いといえます。
独立していないこどもがいる場合は、生命保険(死亡保険)の必要性は高くなります。一方で、こどもが独立している世帯は、生命保険(死亡保険)の必要性は低いです。
こどもがいない場合は、生命保険(死亡保険)の必要性は低いです。
ここまで、生命保険(死亡保険)の種類やそれぞれの特徴などについて解説してきました。
では、生命保険(死亡保険)には、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。最後に、生命保険(死亡保険)のメリットとデメリットについておさらいしておきましょう。
大きな額の保障を用意できる
生命保険(死亡保険)では、2,000万円、3,000万円…というように大きな額の保障を用意することができます。
もちろん、保障額が大きくなればその分だけ保険料も高くなりますが、保険期間を予め定める定期型の生命保険(死亡保険)や収入保障保険であれば、保険料を安く抑えられます。
死亡保障を用意しつつ貯蓄をすることもできる
終身保険には解約返戻金があるため、解約をした場合、契約期間の経過年数に応じた解約返戻金を受け取ることが可能です。
一生涯の保障を用意しつつ貯蓄もできるというのは、この種の保険のとても大きな魅力のひとつでしょう。
相続税対策としても活用できる
生命保険(死亡保険)は、相続税対策として活用することも可能です。
たとえば、主たる相続財産が不動産ばかりで現金の資産があまりない世帯では「相続税を捻出できず不動産を売却せざるを得ない」といったケースが珍しくありません。
こういった場合に被相続人を被保険者とする生命保険(死亡保険)に加入していれば、保険金を相続税の支払いに充てることができます。
掛け捨て型の保険は保険料がムダになる可能性がある
定期保険や収入保障保険は、満期時に生存していた場合、保険金を受け取ることができません。
またこの種の保険は掛け捨て型のものが多く、解約返戻金や満期保険金もありません。
そのため保険期間中に被保険者が死亡、あるいは保険会社所定の状態の状態にならなかった場合は「保険料がムダになった」と感じる方もいるでしょう。
終身保険は保険料が高くなる
終身保険は保険料の一部を解約返戻金の積み立てに充てるため、定期保険や収入保障保険に比べて保険料が高くなっています。
そのため終身保険は、大きな保障を用意する手段としては、あまり向いていません。
生命保険(死亡保険)の選ぶときのポイントは下記の4つです。
1.目的:何のために?誰のために?
2.受取人:誰に残す?
3.保険金額:いくら?
4.保険期間(保障期間):どのくらいの長さが必要?
生命保険(死亡保険)に加入する目的を明確にしましょう。
残される家族の生活費をサポートするためなのか、相続税対策なのか等の目的を明確にすることで何を選んだほうがいいかというところも変わってきます。
死亡保険金受取人を誰にするかという部分は非常に重要です。
一般に、生命保険(死亡保険)の保険金受取人に指定できるのは、被保険者の二親等以内(被保険者の配偶者・こども・親・孫等)となっています。
保険会社所定の条件を満たす場合、同性パートナーを指定することができる保険会社も増えています。
まずは必要保障額を把握しましょう。
万が一が起きた場合の支出と収入を計算して、不足する金額があれば、それが必要保障額です。
必要保障額が高額になるにつれ、保険料は高くなる傾向があります。そのため、定期保険や収入保障保険等の比較的割安な保険料で、大きな死亡保障を用意できる生命保険(死亡保険)と終身保険を組み合わせる等も検討しましょう。
必要保障額が高い間(こどもが生まれてから独立するまで)だけ死亡保障を用意するのか、それとも一生涯(死亡するまで)の死亡保障のどちらが必要でしょうか。
一定期間であれば、定期保険・収入保障保険、一生涯であれば終身保険になります。他には終身保険で最低限の死亡保障を用意しつつ、大きな死亡保障は定期保険・収入保障保険で用意する
生命保険(死亡保険)を選ぶ時の注意点は下記の5つです。
1.社会保険制度からいくら出るのか把握できているかどうか
2.設定した死亡保険金に過不足がないかどうか
3.設定した保険期間(保障期間)が適切であるかどうか
4.支払う保険料の金額に無理がないかどうか
5.死亡保険金を受け取る際の税金について
公的制度である社会保険制度から、高度障害・死亡時にどんな給付がいくら出るのか把握しましょう。
身体障害や死亡などに対する給付が設定されており、それらを把握することで自分で用意すべき金額を正確に計算することができるようになります。しかしながら、給付の条件や金額は社会保険制度によって異なりますので、自分に適した保険を選ぶためには、社会保険制度からいくら出るのかを把握することが重要です。
死亡保険金は家族の生活を支えるために必要な金額であるため、設定した金額が家族の生活に対して十分かどうかを検討することが重要です。死亡保険金が不足してしまうと、家族の生活に対して負担になるため、十分な保険金額を設定することが大切です。
一方で、残される家族の収入についても考慮する必要があります。
例えば、共働きであれば配偶者の年収を死亡保障額が差し引く、こどもが独立した以降については配偶者の生活費だけになるので、以降の生活費を減額して計算する必要性があります。この点について注意しないと、過剰な死亡保障額を設定することになってしまうため、保険料を余分に払う可能性が高まります。
生命保険(死亡保険)の選び方において重要なのは、設定した保険期間(保障期間)が適切であるかどうかです。
保険期間(保障期間)は、死亡保障が有効である期間で、この期間中に高度障害状態あるいは死亡した場合に保険金が支払われます。保険期間(保障期間)を適切に設定することで、保険が必要な時に保障が受けられるようになります。
しかし、保険期間(保障期間)を短く設定すると、保険が必要になった時に保障が受けられない可能性があります。また、保険期間(保障期間)を長く設定すると、保険料が高額になる可能性があります。そのため、保険期間(保障期間)を適切に設定することが重要であり、現在の生活や将来の見通しに合わせて適切な保険期間(保障期間)を選ぶことが必要です。
保険料が高額だと、家計に負担をかけることになり、将来の貯金や投資などに影響を与える可能性があります。そのため、保険料の金額が自分にとって払える範囲内であることを確認することが重要です。また、保険料を安く抑えるためには、保険期間(保障期間)や保険金額などを調整することも考えるべきです。
死亡保険金を受け取る際に所得であるため税金の対象になります。
何の税金の対象になるかは、契約者と被保険者、保険金受取人が誰であるかによって異なります。
被保険者 | 契約者 保険料の負担者 | 保険金受取人 | 税金の種類 | |
---|---|---|---|---|
(1) | A | B | B | 所得税 |
(2) | A | A | B | 相続税 |
(3) | A | B | C | 贈与税 |
※出典:国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき|国税庁
(1)契約者と保険金受取人が同じ人で、被保険者が違う人であるパターンです。
この場合、契約者は保険料を支払っているため、契約者自身の所得として所得税の課税対象となります。また、被保険者の死亡による保険金の受け取りは当年度一回限りであるため、一時所得となります。
(2)契約者と被保険者が同じ人で、保険金受取人が違う人であるパターンです。
この場合、契約者は自分自身を被保険者としており、契約者=被保険者の死亡で保険金が支払われることになるため、相続税の対象となります。
保険金受取人が相続人である場合、死亡保険金には相続税の非課税枠が設定されています。このあたりも考慮する必要があります。
(3)契約者、被保険者、保険金受取人すべてが違う人であるパターンです。
この場合、契約者から保険金受取人への贈与となるため、贈与税の課税対象となります。
保険料を支払う際には、所得税や相続税についても考慮することが重要です。また、税金等については、最寄りの税務署または税理士などの専門家へご相談ください。
こちらの動画でも生命保険についてわかりやすく解説をしています。「生命保険の種類」「保障額の考え方」「健康体料率」などについてもファイナンシャルプランナーが解説しているので、ぜひこちらもご参考にしてみてください。
生命保険(死亡保険)をテーマにした記事の一覧です。『生命保険(死亡保険)とは?』『生命保険(死亡保険)の必要性は?』『生命保険(死亡保険)料控除』などから基礎知識の解説など、役立つトピックスを掲載しています。