2024年火災保険の保険料全国平均で13.0%値上げ、水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化
火災保険は災害などで住宅が被害を受けた場合に生活再建に大きな役割を果たす損害保険です。
2024年には火災保険料が全国平均で13.0%引き上げられ、水災に関する料率(以下、水災料率)も地域のリスクに応じて5区分に細分化される見通しです。本記事では、保険料の値上げの理由やそのしくみ、影響や保険料を安くする方法など解説します。
2024年火災保険の参考純率の改定と水災料率の細分化について
2023年6月28日に損害保険料率算出機構が火災保険の参考純率改定について発表しました。
住宅総合保険の参考純率について、全国平均で13.0%引き上げ、水災料率を5区分に細分化するというものです。参考純率の改定は自然災害などによる保険金支払いの増加とリスク環境を踏まえた対応です。
水災料率の細分化については、今まで全国一律であった水災料率を保険料が最も安いグループである「1等地」から最も高いグループである「5等地」までの5区分に細分化することで、契約者間の水災リスクの違いによる保険料負担の公平化などをねらいとしています。なお水災料率の細分化は市区町村単位となるため、同一の都道府県であっても市区町村により改定率は異なります。
ココに注意
参考純率および水災料率の改定により、個別具体的な火災保険の保険料がすべて値上げとなるわけではありません。
火災保険の保険料の決め方
火災保険の保険料は、おもに建物の構造、築年数などで変わります。建物の構造には、柱・はり・外壁等があり、素材によって燃えにくさなどに差があります。
その構造と素材の燃えにくさ等の性能に応じた、その危険(リスク)実態に応じた区分をしています。建物の構造(素材も含む)が火災のリスクの度合いに直結するため、建物の構造級別で火災保険の保険料に差が出てきます。建物の構造は、3種類に分類されています。M構造(鉄筋コンクリート造等で、耐火建築物)、T構造(耐火構造、準耐火構造)、H構造(M構造、T構造以外の木造など)があります。
次に築年数(5年未満、5年以上10年未満、10年以上)で保険料が変わります。
築年数が浅いほど、保険料は安くなります。
逆に、築年数が経っている建物については、保険料が高くなります。
電気・給排水設備(台所・トイレ・風呂)などの老朽化で、火災・水濡れリスクや台風・大雪などによる損壊リスクなど火災保険におけるリスクが高い実態があるためです。
建物所在地によっても保険料は変わってきます。都道府県別に保険料の基準が設定されているためです。なお、建物所在地は今回の水災料率の改定において保険料に特に大きく影響を及ぼす要素となります。建物所在地の水災等地が1等地から5等地のいずれに該当するかは、損害保険料率算出機構が提供している水災等地検索ツールで調べることができます。
・・・と、ここまでは一般的な火災保険の保険料の決め方について解説してきました。
複数の要素で火災保険の保険料は決まるわけですが、損害保険料の基準となる損害保険料率は「純保険料率」と保険会社の必要経費にあたる「付加保険料率」の2つで構成されています。
純保険料率が事故発生時に保険会社が支払う保険金に充当される部分になります。
損害保険機構は、「純保険料率」の参考数値である「参考純率」を算出し、会員保険会社に提供しています。
保険会社が保険商品の「純保険料率」の算出に際し、参考純率をどのように使用するのか(そのまま使用する/修正して使用する/使用せず独自に算出する等)については、保険会社ごとの判断によります。
ココがポイント
つまり、損害保険会社ごとに、商品ごとに保険料が異なること、地域差があるため、一概に値上げになるとはいえないわけです。
どのくらい火災保険料が値上がりするの?
それではどのくらい保険料が値上がりするのかというと、損害保険料率算出機構の算定では以下の通りとなっています。
〈築5年未満の例〉
M構造の改定率 | T構造の改定率 | H構造の改定率 | |
東京都 | +1.7% | −0.6% | +3.3% |
大阪府 | +15.3% | +15.6% | +24.6% |
愛知県 | +4.5% | −2.1% | +3.8% |
宮崎県(値上げ率最大) | +30.5% | +21.9% | +24.6% |
山形県(値下げ率最小) | −4.7% | −11.6% | −13.8% |
〈築10年以上の例〉
M構造の改定率 | T構造の改定率 | H構造の改定率 | |
東京都 | +7.3% | +3.2% | +5.9% |
大阪府 | +21.5% | +22.4% | +30.9% |
愛知県 | +9.3% | +2.2% | +7.6% |
宮崎県(値上げ率最大) | +33.0% | +33.4% | +36.6% |
山形県(値下げ率最小) | +1.1% | −7.1% | −10.3% |
※上表は各県の平均の改定率を示しているため、同一の都道府県であっても市区町村により改定率が異なる可能性があります。
なお、保険料が大幅に上昇する契約については、契約者負担軽減の観点から保険料の引き上げ幅を抑制しています。
関連記事:火災保険(家財保険)|年末調整や確定申告で保険料控除は使える?地震保険は?
火災保険の参考純率はこれまでどれだけ引き上げされてきた?
実は火災保険の参考純率が引き上げられるのは今回が初めてではありません。
過去にも度々引き上げされてきました。なお、今回の参考純率の引き上げは2022年以降最大です。
年 | 火災保険参考純率 平均引き上げ率 |
2005年 | 8.7% |
2014年 | 3.5% |
2018年 | 5.5% |
2019年 | 4.9% |
2022年 | 10.9% |
2023年 | 13.0% |
※出典:損害保険料算出機構 火災保険参考純率
火災保険の保険料を安く抑えるには?火災保険の見直しのポイント
火災保険の見直しの流れは下記のとおりです.。
火災保険の見直しの流れ
1.現在加入している火災保険(地震保険)の内容を把握する
2.お住まいの地域が保険料の上がる地域かどうかを確認する
3.(値上げ対象地域であれば)2024年保険料率改定前に火災保険の見直しを行う
4.長期契約(現状、最高5年)にする
5.保険料の一括払いを行う
6.補償範囲の見直し、特約の見直しを行う
となります。
まとめ
現在、火災保険に加入しているのであれば、保険料の値上げ前に一度、火災保険の見直しをするのに良い機会かもしれません。
また、新しく火災保険に加入するのであれば、火災保険料の値上げの実施前に検討をしてみてはいかがでしょうか。