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がん保険

がんの治療費と自己負担額は平均でいくら?手術や抗がん剤治療などの治療別に解説

がんになった場合、治療方法のほか、治療費がどの程度かかるのか、お金の面での心配も発生します。具体的にどんな費用がかかるのかを知っておくことで、経済的な面からの不安を払拭し、安心して治療を受けられる体制にしておくべきです。そこでこの記事では、がんの治療費と自己負担額について解説を行います。

この記事のポイント

  • がんの入院治療費の自己負担額の平均は6~8万円程度、通院治療費の自己負担額の平均は4,000円~1万1,000円程度。ただしがんの種類や治療法によってこの額は大きく変わることがある。
  • 手術・抗がん剤・放射線など治療費は高額療養費制度で一定の限度額まで抑えることができる。なお多数回該当などに該当すればさらに軽減されることもある。
  • 先進医療の費用や差額ベッド代、入院・通院時の交通費や日用品の購入費用など公的保険適用外の費用は、がん保険や医療保険などの民間の保険で備えることができる。

がん治療で実際にかかる費用とは

厚生労働省の医療給付実態調査によると、がんによる入院治療費の平均や入院外治療費(通院)の平均は以下の通りとなっています。

入院治療費の平均※

入院外治療費の平均※

胃の悪性新生物

6万6,762円

4,377円

結腸の悪性新生物

6万7,379円

4,543円

直腸S状結腸移行部及び直腸の悪性新生物

7万8,429円

6,173円

肝及び肝内胆管の悪性新生物

6万5,769円

1万85円

気管,気管支及び肺の悪性新生物

7万3,062円

1万1,102円

乳房の悪性新生物

6万285円

5,886円

子宮の悪性新生物

6万4,619円

3,333円

悪性リンパ腫

10万7,234円

7,634円

白血病

17万6,568円

9,630円

その他の悪性新生物

6万7,646円

6,989円

※円未満四捨五入

がんの種類によって、入院治療費の平均、入院外治療費(通院)の平均は異なるものの、入院治療費の平均はいずれも6~8万円程度入院外治療費(通院)の平均は4,000円~1万1,000円程度となっています。なお、この金額は、公的医療保険制度を適用した後の金額です。もし想定以上に長期の入院や通院が必要となった場合には、さらに費用がかかることになるため、その点を考慮する必要があります。

また、がんの治療では、細かく分けると検査費や入院費、手術費用など様々な費用がかかりますが、公的医療保険制度の対象となるものと、保険がきかないものに分けることができます。

公的医療保険制度の対象となるもの

公的医療保険制度の対象となるものには、診察費、検査費、入院費、手術や放射線治療などの治療費があります。こうした公的医療保険制度の対象となる費用は、原則3割負担(年齢等によっては1〜2割負担のケースあり)です。

公的医療保険制度の対象とならないものや治療以外にかかる費用

一方、公的医療保険制度の対象とならないものがあります。もし個室に入院したい場合は差額ベッド代がかかります。また、公的医療保険の対象外の治療となる先進医療や自由診療の場合、保険がきかないため高額となる可能性があります。

治療以外の部分としては、入院時の食事代(入院時食事療養費)として一般のケースの場合で一食490円がかかります。この他、通院・入院時の交通費やご家族の交通費・宿泊費などもかかることを忘れてはなりません。

【治療法別】がん治療にかかる治療費と自己負担額の平均とは

次に、治療法別にがん治療にかかる治療費と自己負担額の平均を確認していきましょう。

手術にかかる費用と自己負担額

中電病院ホームページによれば、がんの手術費および入院期間の目安は以下の通りとなっています。

疾患名 

手術名

入院期間

手術費(3割負担)

乳がん

乳腺悪性腫瘍手術

15日

約30万円

肺がん

胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(部分切除)

10日

約30万円

肝がん

肝切除術

14日

約38万円

膵がん

膵体尾部腫瘍切除術

1ヶ月

約70万円

膵頭部腫瘍切除術

約80万円

胃がん

胃切除(悪性)

10日

約20~35万円

胃切除(悪性)+胆のう摘出術

約35~50万円

腹腔鏡下胃切除術(悪性)

約48~50万円

胃全摘(悪性)+胆のう摘出術

14日

約50~60万円

結腸がん

結腸切除術(悪性)

10日

約30~40万円

腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術

約35万円

直腸がん

腹腔鏡下直腸切除・切除術(高位)

10日

約45万円

腹腔鏡下直腸切除・低位前方切除術

14日

約55万円

上記費用は個人によって変動する可能性があり、食事代や差額ベッド代は含まれていません。また、上記手術費は、高額療養費制度を利用する前の金額です。後述する高額療養費制度を利用すれば、負担額をさらに抑えることが可能です。

抗がん剤治療にかかる費用と自己負担額

次に、抗がん剤治療にかかる費用を確認していきましょう。例えば、胃がんの治療で用いられるmFOLFOX6(フォルフォックス)療法では、オキサリプラチン点滴など、複数の抗がん剤が使用されます。これらの点滴は体表面積に応じて投与量が決められているため、平均的な体格であれば一度の点滴でおよそ150mgが投与されます。

仮に、オキサリプラチン点滴静注50mg「トーワ」(1本あたり5,433円)と、オキサリプラチン点滴静注100mg「トーワ」(1本あたり9,067円)を使用した場合、かかる費用は1万4,500円ですが、3割負担であれば自己負担額は4,350円となります。ただし、同じ薬でも製薬会社や先発品・後発品によって薬価は異なるため、自己負担額がより高額になる可能性もあります。

また、抗がん剤治療は、使用する薬剤が保険適用されるものかどうか、何種類の薬剤を使用するか、またがんの種類によって金額に大きく差が生じます。そのため、目安となる金額の算出は難しいのが実情ですが、1回の抗がん剤の投与で数万円程度がかかると考えてよいでしょう。なお、公的医療保険制度が適用できない場合には、数百万円かかるケースもあります。

放射線治療にかかる費用と自己負担額

放射線治療にかかる費用も、病状や治療法の種類、治療回数などによって異なるため、断定的なことはいえません。1回で数万円程度の費用はかかることでしょう。なお、目安として3割負担の場合、乳がん温存手術後の25~33回の放射線照射で約18~21万円、前立腺がんの強度変調放射線治療(IMRT)を33~41回受けると約40~47万円の自己負担額となるという試算もあります。

また、放射線治療には治療計画作成費、診療費、照射費用などをあわせて、総額で数百万円程度かかる可能性もあります。治療費が高額になる理由には、公的医療保険制度が適用されない先進医療が多く用いられていることがあります

がんの治療費の自己負担額を軽くするには

がんの治療費はがんの種類や状況によって異なることがわかりました。特に長期入院や先進医療を利用する場合などには多額の費用がかかる恐れがあります。この費用を少しでも軽減できる方法はないのでしょうか?以下に、自己負担額を軽減する方法を解説します。

高額療養費制度で医療費の払い戻しを受ける

まず、高額療養費制度を確認していきましょう。高額療養費制度とは、同一医療機関(入院・外来は別)の窓口で支払った自己負担額が、1ヵ月に一定の限度額を超えた場合に、超えた部分が給付される仕組みです。70歳未満の場合、所得に応じて、自己負担限度額の計算式が以下の通り5つに区分されています。

所得区分

自己負担限度額

標準報酬月額83万円以上

25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1%

標準報酬月額53万円~79万円

16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1%

標準報酬月額28万円~50万円

8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%

標準報酬月額26万円以下

57,600円

住民税非課税者

35,400円

例えば、一般的なサラリーマン(標準報酬月額28~50万円)の場合の自己負担限度額(月額)を求める計算式は以下の通りです。ただし、入院時の食事代や差額ベッド代などはこの計算式の対象外です。

8万100円 +(総医療費 - 26万7,000円)× 1%

仮に、一か月に100万円の医療費がかかった場合には、自己負担額を以下のように計算することができます。

8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7,430円

もし、4ヵ月以上高額な医療費がかかる場合には、多数回該当により4ヵ月目から毎月4万4,400円のみ負担すればよいことになります。この高額療養費の仕組みがあるために、毎月の医療費を軽減することができます。

関連記事:高額療養費制度は医療費がいくら以上から使える?さらに負担を軽くする多数回該当、世帯合算とは?

医療費控除で税金の控除を受ける

税金を軽減できる方法もあります。医療費控除と呼ばれる仕組みです。医療費控除とは、納税者本人または生計を一にする配偶者やその他の親族のために支出した医療費のうち、一定の金額を所得から差し引いて所得税などの税金を計算することができるものです。

ただし、保険金などの支給を受けた場合にはその金額は自己負担額から差し引く必要があります。また、医療費として支払ったお金でも、医療費控除の対象とはならないものがあります。医療費控除は確定申告により申請を行なう必要があります。

対象となる医療費の例

対象とならない医療費の例

  • 診療費用、入院費用、治療費用
  • 出産費用
  • 医薬品の購入
  • 健康診断で重大な疾病が見つかり、治療 を開始した場合の健康診断費用
  • 美容整形のための費用
  • 健康増進や疾病予防のための費用
  • 健康診断(人間ドック等)の費用(疾病 が見つからなかった場合)

なお、医療費控除額の計算には以下の式が用いられます。

医療費控除額 =(支払った医療費の総額 - 保険などで補てんされた金額)-10万円(※)
※その年の総所得金額が200万円未満の場合には、総所得金額の5%の額

傷病手当金を受給する

傷病手当金という仕組みもあります。会社員など健康保険の被保険者が病気やケガのため働くことができない場合に支給される給付です。会社を連続して3日以上休んだ場合に、4日目から最高1年6ヵ月間支給されます。支給額は以下の式で計算できます。

欠勤1日につき標準報酬日額 × 2/3

ただし、任意継続被保険者になってからは新たに支給されません。また、会社を休んでも、傷病手当金以上の給料が支払われた場合には傷病手当金は支給されません。

関連記事:傷病手当金とは?退職後にもらえる?支給条件や計算・申請方法などを解説

がん保険・医療保険など民間の保険で備える

公的な制度を活用することで、ある程度の費用負担は軽減できます。とはいえ、すべての費用をカバーすることができるわけではありません。食事代や交通費、日用品の購入など別途かかる費用があることも忘れてはなりません。

では、こうした費用をカバーするにはどうしたら良いでしょうか。一般的にはがん保険や医療保険で備えることになります。がん保険や医療保険に加入することで、医療費はもちろんのこと、その他にかかる費用もある程度カバーできるようになります。公的な制度を活用しつつ、民間保険で不足する金額はカバーしていきましょう。

まとめ

以上、がんの治療費や自己負担額について解説しました。高額療養費制度を利用してもある程度の治療費はどうしてもかかります。実際にお金の面で苦しむことのないようにするためにも、ある程度の貯蓄はしておくべきです。そして、いざという時に備えて、がん保険や医療保険に加入することも検討すべきです。

そしてお金の面で悩まずに治療に専念することが、私たちができる最善策といえるのではないでしょうか。

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