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【日米の最新動向】生命保険のオンライン販売とインシュアテック企業の取るべきポジションは?
実務・専門家インタビュー

【日米の最新動向】生命保険のオンライン販売とインシュアテック企業の取るべきポジションは?

保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っているニッセイ基礎研究所の主任研究員の松岡様に日米のオンラインの生命保険の販売とインシュアテック企業の在り方についてお話を伺いました。

米国の生命保険のオンライン販売の動向は?

コのほけん!編集部

米国では、個人向け生命保険のオンライン販売はどのくらい進んでいるのでしょうか。

松岡さん
米国とカナダの生命保険各社が会員として参加している、生命保険マーケティングの調査・教育機関であるリムラ(LIMRA)が、参考になるデータを取りまとめています。
そちらのデータで説明しますね。

まず、米国にも、オンライン販売だけを切り出した販売実績やシェアをまとめたデータはありません

リムラが発表する統計資料では、個人生命保険のチャネル別の販売シェアは、「専属エージェント」、「独立エージェント」、「ダイレクト」、「その他」という4カテゴリーのチャネルでまとめられています。

「エージェント」は、わが国の営業職員や代理店的な販売者を総称するもので、日米の個人生保販売の体制に大きな違いはありません。 特定1社の商品を販売する「専属エージェント」と複数の生保会社と販売契約を締結して複数会社の商品を販売する乗合代理店形態の「独立エージェント」が併存することも、わが国と同様です。

「ダイレクト」は、通販・ネット販売等のダイレクトマーケティングを指し、「その他」には、職域での販売(雇用主による販売等と称されていることが多いです)、証券会社や銀行等による販売が含まれています。 オンライン販売は、「ダイレクト」の中に含まれています。

販売件数でみると、「ダイレクト」販売が拡大している

松岡さん
以下の図表は、2021年の、米国個人生保事業におけるチャネル別の販売シェアを、個人生命保険全体と終身保険、定期保険という区分毎にまとめたものです。それぞれ、新契約の年換算保険料を基準としたシェア新契約販売件数を基準としたシェアを記載しています。

まず、個人生命保険全体で、新契約年換算保険料を基準とするシェアを見ますと、専属エージェントが40%、独立エージェントが51%で、両者を合わせたエージェントのシェアは91%となります。「ダイレクト」は5%、「その他」は4%にすぎません。

一方、これを新契約販売件数のシェアで見ると、専属エージェントが39%、独立エージェントが32%と、両者を合わせたエージェントのシェアは71%に縮小し、代わって「ダイレクト」のシェアが19%、「その他」のシェアが10%に上昇します。

年換算保険料ベースのシェアでは「ダイレクト」のシェアはたいしたことありませんが、販売件数で見れば、「ダイレクト」は19%と、一定水準の生保商品を消費者に販売していることがわかります。

特に終身保険の件数シェアでは、「ダイレクト」は独立エージェントを大きく上回る35%を占めていますし、定期保険の件数シェアでも9%を占めています。

これらの年換算保険料ベースのシェアが件数シェアに比べて低いのは、これらのチャネルを通じて販売される保険契約が、若年層向けや葬儀費用向けの商品であったりと、小口契約になりがちな契約であるからです。

ただし終身保険のダイレクト販売の多くは、わが国と同様の、新聞広告やテレビCMを通じて広告し、消費者からの電話を受けて行うテレセールスであろうと考えられます。
オンライン販売ということであれば、定期保険の件数シェア9%がいいところかなと思えますね。

注意ポイント

ただし、リムラの統計は、保険代理店(エージェント)や銀行が開始したダイレクトマーケティングによって販売されたものは、ダイレクト販売とは認識していないことに注意する必要があります。エージェントや銀行に保険商品の販売を任せた場合は、仮にそれらのエージェントや銀行がオンライン販売をしていても、生保会社から見れば、エージェントや銀行による販売として処理されるだけです。
その代理店が、コのほけん!のような、いわゆるオンライン上のプラットフォームのような形態で販売していたとしても、生保会社からみると、やはり代理店販売なのです。
ですので、正確なオンライン販売の実績がどれぐらいを占めるのかを見通すことはとても難しいです

松岡さん
なお、米国では、COVIT‐19パンデミックの時期から、オンライン受付を行った販売が非常に好調であると言われるようになりました。
米国の個人生保販売は、ロックダウンが実施された当初こそマイナスが付きましたが、それも短期間で終わり、すぐに回復基調が明確になりました。

そうした回復基調の背景の1つは、COVID-19の脅威にさらされたことで消費者の生命保険ニーズが喚起されたことでしたが、もう1つは、ロックダウン、ソーシャルディスタンス確保等に対応すべく、多くの生保会社がオンライン申込みの拡充と引受業務のデジタル化を進めたことがあります。
もともと米国の生保会社は、デジタル化、インシュアテックの進展の中で、デジタルのみの迅速な引受プロセスとオンライン申込みのプロセス導入に向けた取組を行っていましたが、パンデミックに伴う情勢変化がその動きを加速させました。

医学的な診査を身体検査なしで行い、保険加入プロセスを簡略化するという方式が、特に若い世代の申込みの増加を引き起こしました。
しかしながら、こうしたオンライン申込による販売の伸びの多くは、リムラの統計上は、オンライン販売、つまりダイレクト販売の伸びとしては反映されていないように思われます。


宮脇:なぜ、オンライン販売の伸びとして認識されないのでしょうか?

 

松岡さん
入口がオンラインであったとしても、リアルとバーチャルを融合させた販売形態として、最終的にはエージェントがお客様に会ったり、保険会社の職員が電話をかけたりして保険契約を締結している事例が多いことが一つの原因でしょう。これは、日本でも一緒ではないかと思います。これらの契約は顧客から見ればオンライン販売であっても、保険会社から見れば、「エージェントによる販売」です。

また、先ほど説明した、統計上の問題もあります。これらの実際の販売の多くが主に代理店によって行われているとすると、生命保険各社はこれらオンライン受付による販売を「エージェントによる契約」として報告し、「オンライン販売によって得た契約」とは報告していないのです。

統計がないので、消費者サイドから見て、どのくらいがオンライン販売になっているかということについては、憶測でしかお答えできないのですが、コロナ禍以降、消費者から見たオンライン販売が、相当数増えているだろうということは言えるのではないかと思います。

日本の生命保険市場と米国の生命保険市場の違い

コのほけん!編集部

日本と米国で生命保険市場に違いはありますか?

松岡さん
日本は、戦後の復興期から1960年代〜1970年代の一億総中流時代の間に、「自分(もしくはうちの世帯主)がもし亡くなったら、残された家族はどうなるだろうか。生命保険が絶対必要だよね」という認識が広まり、世帯普及率が9割に達するほど、社会全体に生命保険が浸透しました。

当時米国から進出した生保会社は、そういう生命保険の土壌が出来上がったマーケットに進出してきた訳ですから、非常に営業活動が行いやすかっただろうと思います。

日本では、そうした状況から、世帯普及率が少しずつ落ち始めて、最近では、特に若い人の加入率が低下傾向にあることが問題になっています。
若い人への普及を図る上では、オンライン販売はなくてはならないツールかと思います

一方、米国では、中流層に生命保険が行き渡ったことが一度もないのです。
米国の中流層には、企業が提供する従業員福利の一環として、団体生命保険が広く浸透しており、この団体保険で十分と考えている方が非常に多いのです。

そうした状況下、米国の生保エージェントたちは、中流層よりも、お金を持っている、より富裕層的な人たちをいい顧客と見て、税制上のメリット、財産分与の行いやすさ、投資としての有利さなどを説いて、販売しているのが実情です。

米国の生命保険は、中流層へリーチできていない?

松岡さん
米国の生命保険は、中流層へリーチできていません。
そうした環境において、COVID‐19のパンデミックの中、もしかしたら、自分たちにも生命保険が必要だったかもしれない、と中流層の方たちが気づき始めました

折りよく、米国の生保会社は、即断即決できる引受システム作りを急いでいました。ITの進歩やインシュアテック企業の増加がその流れを加速しました。

米国の生保業界が目指しているのは、健康診断や血液検査と言った医的な診査を伴わないで、実際にそれらを行った場合と同じ保険料で同じ保障を、できる限り速やかに提供できる保険です。インシュアテック企業が提供する定期保険の中には、保険を引き受けます(保険に入れますよ)という結論が出るまでに、5分から20分しかかからないという例が出てきています

もちろん、米国にも日本と同じく、「できるだけ診査要件を緩めて、できる限り幅広いリスクの方を保障する、引き受け保証型の保険」もありますが、そちらでは、その分、保険料が高くなってしまいます。

コのほけん!編集部
なぜ、そんなに短い時間で引受の診査ができるのでしょうか。

松岡さん
米国では、各種様々な個人情報がオープン情報や有料情報として入手できることが大きいですね。例えば、自動車の運転記録、クレジットレコード、犯罪歴、処方薬データベースなど多様な情報を入手できます。
そういったところから引き受けの可否を相当早く結論づけられるシステムを作っているのです。

米国のインシュアテック企業と生保会社の協業

コのほけん!編集部

米国でのインシュアテック企業と生保会社の協業はどのように行われているのでしょうか。

松岡さん
本当の意味でフィフティ・フィフティの、インシュアテック企業が、提供するサービスに応じた手数料を生保会社から受け取ると言った、その都度の契約に基づく協業は、あまり目立ちはしませんが、AI、ビッグデータ分析、内部管理などの分野で進んでいると思います。

一方で、資本投資や買収を通じた協業もあって、そちらは目立ちます。生保会社が、インシュアテック企業の動向に目を配り、自社の保険事業を革新、効率化等する上で魅力的な技術を開発しているなと考える場合、インシュアテック企業とのつながりを積極的に作り、インシュアテック企業の技術開発の実証実験に付き合ったり、資本協力や買収を働きかけて、自社のエコシステムの中に取り込んでいくということも、実態としては多いと思います。

私は、そうした動向につき、今年2月に、『米国生保市場で、個人生命保険オンライン販売の進展に寄与するインシュアテック企業』という題で、簡単なレポート(以下、レポート)を書きました。ニッセイ基礎研究所のホームページで簡単に見られますので、一度目を通していただければ幸いです。

米国での事例

松岡さん
私が、レポートで3番目に紹介したプルデンシャルの事例は、2019年にプルデンシャルが「Assurance IQ」を買収したものです。

インシュアテックという新興勢力に拒否反応を持たずに、協業関係に自分から入っていき、今は一部門として、協業を推し進め、発展を目指しています。

一方では、インシュアテック企業が生保会社を買収するという事例も出てきています
レポートでご紹介したインシュアテック企業 BestowはCenturion Life Insurance Companyという生保会社を買収しました。

もう1つのインシュアテック企業Ladderも、Fremont Life Insurance Companyという生保会社を買収しました。
この2社は、2015年、16年頃のインシュアテック勃興期に、「当社が設計した生保商品であれば、20分以内に引受診査が完了します」という形の、商品の仕組みとそれを可能にするシステムを開発して、広くオンライン販売し始めたインシュアテック企業です。米国における定期保険のオンライン販売を一早く開始した会社たちです。

でも、両社は、生保会社ではなくて、生命保険代理店会社でした。販売までを自分たちで行いますが、「お客様がご契約される保険はXX生命保険が引き受けます。XX生保会社は格付けがこれだけある信頼できる会社です。」というビジネスモデルで活動を続けてきました。加入やサービスの快適さはスタートアップから受け、最後の財務の安定さは生保会社に保証してもらうということですね。

こうした仕組みが成功すると、より活動の幅を広げ、今度は自分たちで保険の引き受けまでを行いたいという思いが出てくるのは当然の流れかなと思います。そのため、こうしたスタートアップが生保会社を買収する事例も出てきているのだと考えています。保険会社になるということは、それだけ、規制への対応が煩雑になるということでもあるのですけどね。

最後は、やはり「人」が重要

コのほけん!編集部

日本における生保会社のオンライン販売について、これまでの対応や今後の課題をどのようにお考えですか?

松岡さん
生命保険のオンライン販売は、2008年にアクサダイレクト生命とライフネット生命が始めたものが、世界的に見ても、最も早い事業化の例ではないかと考えています。

本人確認書類等を郵送するというプロセスがありましたので、厳密には、オンライン販売とは言わないのかもしれませんが、オンラインでのショッピングやWebの利用に慣れている方に受け入れられました。
当初は、保険犯罪のリスクが高まるのでは、というのがオンライン販売の懸念点でしたが、日本の消費者は懸念された以上に「善」の方が多く、オンライン販売だからそういった犯罪が増えるということもありませんでした。

ただし、もう一つの課題としては、死亡保険というのは、人の心を考えるとやはりオンラインだけでは難しいのではないかということが挙げられます。誰かが保険を検討中の方の胸の内を聞き、背中を押してあげる。最後の決断には、人が必要かなと思うのです。

世界にはこういった事例も

松岡さん
ここで、面白い例があるので、一つご紹介します。
BIMAというマイクロ・インシュアランスを提供しているインシュアテック企業があるのですが、発展途上国で、銀行預金などを持っていないお客さんに携帯電話料金のポイントを使って入れる生命保険を販売しています。

APIを使い、電話会社のシステム上でマイクロ・インシュアランスを販売し、顧客が申し込んだら即成立というような生命保険商品なのですが、プロセスの最後、契約の時には、必ず、営業職員を立ち会わせるのだそうです

それはなぜか。
契約時に営業職員と会っていないと、加入してくれた顧客はすぐに解約するのだそうです。これをスタートアップ側の方が指摘している点は非常に興味深いことです。
最後は人が関わらないとダメだ、とインシュアテック企業が言っているくらいなので、生命保険というのは、やはり人から離れられないのではないかなと思います。

今後の展望は?

コのほけん!編集部

日本における生保会社のオンライン販売について、これまでの対応や今後の課題をどのようにお考えですか?

松岡さん
日本には、インシュアテック企業があまりにも少ないので、まずはどんどん出てきて欲しいと思います。米国同様に、日本の生保会社は、自分たちでは目が届かなかったところを改革してくれることを期待していると思います。それぞれの成り立ちがあって、目の付け所が違いますから。

歴史のある生保会社には失敗が許されないという企業風土があるように思われます。インシュアテック企業の、自由な発想で失敗を恐れずに進むセンチメントは貴重で、お互いに補完しあえるハッピーな関係だと思いますね。

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