雇用保険の基本と失業したときの生命保険の見直し方法
失業により収入が突然減ってしまうと、収入に応じた支出にするのは難しいものです。貯蓄の切り崩しなどで再就職までしのごうとしても、失業期間が長いと家計への影響は大きくなります。再就職時期が不透明であれば、支出を大胆に見直し、失業中の精神的負担を軽くすることも大切です。雇用保険の基本と失業したときの生命保険の見直し方法についてご紹介いたします。
雇用保険とは
雇用保険は、失業したときに再就職できるよう、就職できるまでの間、失業給付等が受けられる公的社会保険です。雇用保険に加入していた場合に、所定の要件を満たせば様々な給付が受けられます。
雇用保険の適用事業所で働く従業員が対象となり、保険料は事業主と従業員が負担しています。一般的に公務員は雇用保険の対象外で、自営業者等も加入できません。
雇用保険から受け取ることができる給付金について
雇用保険で受け取れる給付金には、求職者給付、高年齢求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があります。
(1) 求職者給付(基本手当)
求職者給付(基本手当)は、失業手当と呼ばれており、働く意欲と能力があるが失業している人向けの給付です。自己都合や定年退職の場合は被保険者期間によってのみ、倒産や解雇などによる離職の場合は年齢によっても給付日数が異なります。
原則、離職前の2年間で被保険者期間が通算12ヶ月以上という受給要件がありますので、離職後にハローワークで手続きをして、再就職するまでの基本手当を受け取り、経済的支援を受けます。
(2) 高年齢求職者給付
高年齢求職者給付は65歳以上で雇用されている人が離職した場合に支給される給付金です。
(3) 就職促進給付
就職促進給付は、早期に再就職を目指すために行われる給付で、再就職手当、就業促進定着手当、就業手当などがあります。再就職手当は基本手当の受給資格がある人が再就職した場合、就業促進定着手当は再就職手当を受けた人が引き続き6ヶ月以上働くなど所定の要件を満たした場合、就業手当は再就職手当の支給対象とならない人が所定の要件を満たした場合にそれぞれ支給されます。
(4) 教育訓練給付
教育訓練給付は、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される制度です。たとえば一般教育訓練給付金の場合、雇用保険の被保険者期間が3年以上(初めての場合は1年以上)ある場合、受講料等の20%相当額(上限10万円)が支給されます。
(5) 雇用継続給付
雇用継続給付は、高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付があり、高齢者や育児・介護をしている人に支給される制度です。育児休業手当はこの給付から支給されています。
このうち、現役世帯が関係する主な給付をまとめておきます。
<雇用保険のおもな給付内容>
求職者給付(基本手当)
給付日数が、雇用保険の被保険者期間や年齢で決まっており、賃金日額のおよそ50~80%支給されます。
育児休業給付
原則、満1歳未満の子どもを養育するために育児休暇をとった場合に支給されます。支給額は、休業前の賃金の50%が原則ですが、当初の6ヶ月間に限り、休業前の賃金の67%が支給されます。
なお、父母ともに育児休暇を取る場合の子どもは1歳2ヶ月、保育所等が見つからない場合は最大2歳となります。
介護休業給付
配偶者や父母などを介護するために休業する場合に支給されます。休業前の賃金の67%が通算93日間支給されます(3回に分割して取得可能)。
雇用保険の手続き方法
雇用保険からの給付は色々ありますので、それぞれ手続き方法が異なります。ここでは、求職者給付(基本手当)、育児休業給付、介護休業給付の手続き方法を紹介します。
(1) 求職者給付(基本手当)の手続き方法
step
1離職する
step
2ハローワークで求職申込をし、離職票を提出する
step
3受給説明を受け、「雇用保険受給資格者証」、「失業認定申告書」を受け取る
step
4求職活動を行う
step
54週間に1度、失業の認定を行う
「雇用保険受給資格者証」、「失業認定申告書」を提出する
step
6求職者給付(基本手当)が支給される
なお、求職者給付(基本手当)には7日間の待期期間があり、自己都合退職の場合はさらに3ヶ月間支給されません。
(2) 育児休業給付の手続き方法
育児休業給付を受け取るためには、雇用している事業主が手続きをします。希望する場合は、自ら申請することもできます。住民票等が必要な場合は事業主に提出しましょう。
(3) 介護休業給付の手続き方法
介護休業給付を受け取るためには、育児休業給付と同様、雇用している事業主が手続きをします。希望する場合は、自ら申請することもできます。
加入している保険の保険料が負担となった場合の解約以外の保険料負担を減らす方法
失業した場合には、求職者給付(基本手当)を受給することができますが、賃金のおよそ50~80%となりますので、収入は減ることになります。収入に合わせて支出の見直しを行う必要がありますが、保険の見直しも重要となります。保険を解約してしまう方法が最も節約ができ、簡単ですが、必要な保障がなくなってしまいますので、ここでは解約以外で保険料の負担を減らす方法を紹介します。
(1) 保険金額を減額する
死亡保険の保険金額を減額することで、その分の保険料を減らすことができます。死亡保障をゼロにするのは心配な場合、保険金額は減りますが、一定の保障を残すことができます。
(2) 特約のみ解約する
保険は基本的に主契約と特約に分かれており、主契約を解約すると特約も解約することになりますが、特約部分のみ解約すれば主契約を残すことができます。特約部分の保障が優先的に必要かどうかを検討し、一時的に保障がなくても大丈夫であれば、特約のみ解約しましょう。
(3) 払済保険や延長保険にする
解約返戻金のある保険の場合、保険料の払込をやめ、これまでの解約返戻金をもとに、払済保険や延長保険にする方法があります。いずれも特約部分は消滅しますが、払済保険は保険金額が減りますが保険期間は変わらず保障を得ることができ、延長保険は保険期間が短くなりますが、保険金額は変わりません。
(4) 契約者貸付制度
解約返戻金の範囲内で、融資を受けることができる制度です。利息はかかりますが、短期的に資金が必要な場合に活用することができます。
保険の見直しのポイントは?
保険の見直しに限らず、失業した場合、なるべく早く見直しをする必要があります。失業した後に再就職先が決まっていればいいですが、希望通りに決まるとは限りません。すぐに就職したくても就職できないことも想定し、なるべく早く収入に見合う支出になるよう見直しをした方がいいでしょう。再就職できても以前と同じ収入になるとは限りませんので、支出を減らし、家計への負担を減らすことが最優先です。
保険の見直しについては、少し大胆に見直した方がいいでしょう。特に想定していない失業の場合、資金計画を立てていない可能性が高く、タイミングによっては貯蓄額に不安があるため、一時的に保障額を減らさざるを得ない状況です。
健康面で心配がなければ、収入が元に戻ってから加入し直すこともできますので、他に節約できる支出がなければ保険の見直しをしなければなりません。「解約しなくても保険料を減らせる方法」から検討してみましょう。
まとめ
収入が突然減ってしまうと、収入に応じた支出にするのは難しいものです。保険では解約しなくても保険料を減らす方法はありますが、それでも貯蓄の切り崩しなどで再就職までしのごうとしても、失業期間が長いと家計への影響は大きくなります。再就職時期が不透明であれば、支出を大胆に見直し、失業中の精神的負担を軽くすることも大切です。