個人年金保険

仕事をしながら受け取る老齢厚生年金(在職老齢年金)はいくらもらえる?個人年金保険との関係性について

2022年12月7日

老後のライフプランを考えるうえでは、必要な生活費だけでなく収入を得る方法も考えておかなければなりません。少子高齢化が進展し平均寿命が伸びると考えられる日本において、働いて収入を得る人が今後も増えていくでしょう。

しかし気をつけたいのが、60歳以降に得た賃金の額や公的年金保険の加入状況によっては老後の年金が減る可能性があることです。

そこで今回は、老後に受け取れる年金の仕組みや、老後資金の考え方について詳しく解説していきます。読んでいただくことで老後のライフプランが立てやすくなるので、ぜひご一読ください。

本記事のポイント

  • 仕事をしていることで減額・支給停止になるのは老齢厚生年金の部分で「在職老齢年金」という呼び方をする
  • 老齢基礎年金は仕事をしていても全額受け取ることができる
  • 基本月額+総報酬月額相当額の合計が47万円以下なら老齢基礎年金+加給年金(老齢厚生年金)を全額受け取れる
  • 47万円を越える場合に、所得に応じた金額が減額・また全額停止になる

老後に受け取れる年金の仕組み

まずは老後に受給できる年金について、基本的な仕組みを確認していきましょう。

老後に受け取れる年金の種類は、以下の2種類です。

内容 受給額の決まり方
老齢基礎年金 国民年金や厚生年金保険に加入していた人が受け取れる年金 加入期間によって年金額が決まる
老齢厚生年金 勤務先で厚生年金保険に加入していた人が受給できる年金 在職時の給与や賞与の額、加入期間によって決まる

老齢基礎年金や老齢厚生年金は、基本的に65歳から受給できます。また、所定の条件を満たす年金受給者の請求によって最短で60歳での繰上げ受給や、最長70歳までの繰下げ受給が可能です。

繰上げ受給を選択した場合は、繰上げた期間に応じた減額率で年金額が計算され、生涯にわたって適用されます。一方で繰下げ受給を選択すると、繰下げた期間に応じた増加率を用いて年金額が計算され、増加した年金を生涯にわたって受け取れます。

働きながら年金がもらえる在職老齢年金とは?

60歳以降、厚生年金に加入し働きながら、受け取る老齢厚生年金を在職老齢年金といいます。月給・賞与の金額に応じて年金額は減額もしくは全額支給停止になります。

在職老齢年金の対象となるのは、60歳以上70歳未満の人が再雇用・就職などで厚生年金に加入した場合、70歳以上の人で厚生年金保険の適用事業所に勤務している場合です。

例えば、60歳で定年を迎えたのち、再雇用や嘱託職員として採用され所定の条件を満たすと、引き続き勤務先の厚生年金保険に加入しなければなりません。

減額されるのは老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金については減額の対象外です。

よって老後に自営業やフリーランスとして働いた場合は、いくら稼いでも年金は満額支給してもらえます。

在職老齢年金の支給額の計算方法

在職老齢年金は、以下2つの金額を元に計算を行います。

  • 基本月額 = 加給部分を除いた老齢厚生年金額 ÷ 12
  • 総報酬月額相当額 = 標準報酬月額(毎月の賃金)+ 標準賞与額(年間の賞与額)÷ 12

加給年金とは、年齢などの所定の条件を満たす配偶者や子供がいる場合に、老齢厚生年金に一定の金額が上乗せされる部分です。在職老齢年金における加給年金の金額は、以下のように支給停止の状況によって変わります。

  • 一部支給になった場合:加給年金は全額支給
  • 全額支給停止になった場合:加給年金も全額支給停止

これまでは60〜65歳未満と65歳以上で、支給停止となる年金額の計算方法が異なりましたが、2022(令和4)年度からは統一されました。

それでは、年金額の計算方法について、解説します。

在職老齢年金による調整後の年金支給停止額の計算式

支給停止額の計算方法は以下の通りです。

基本月額と総報酬月額相当額の合計額 支給停止額
47万円以下 0円(全額支給)
47万円超 (基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2

以下のモデルケースで、金額をシミュレーションします。

基本月額:17万円(年額204万円)
総報酬月額相当額:44万円

支給停止額=( 基本月額 + 総報酬月額相当額 - 47万円 )× 1 / 2 × 12
=( 17万円 + 44万円 - 47万円 )× 1 / 2 × 12
=84万円(月額7万円)

在職老齢年金額=204万円-84万円
=120万円(月額10万円)

60〜65歳未満で老齢年金を受け取れるのは特別支給の対象者

特別支給とは、老齢年金の受給開始年齢が65歳へ引き上げられたときに、所定の条件を満たす人は、60〜65歳も老齢厚生年金を受け取れるようにした制度です。

所定の条件とは以下の通りです。

男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。
厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。
60歳以上であること。
※出典:日本年金機構

特別支給の老齢厚生年金では、支給金額が定額部分と比例報酬部分に分かれています。それぞれの支給開始年齢は、生年月日と性別で決まり、生年月日が遅くなるほど、年金の支給開始年齢が引き上げられていきます。

ただし対象条件の生年月日から逆算すると、男性は2021年(令和3年)女性は2026年(令和8)年には、新規で特別支給の老齢厚生年金の受給が始まる人はいなくなります。

老齢厚生年金を繰上げ受給した場合も減額の対象となる

特別支給以外にも老齢年金を65歳未満で受け取る方法があります。それが老齢年金を繰上げ受給です。

在職老齢年金を計算するときは、繰上げ受給によって減額されたあとの金額が対象です。収入によっては、年金を繰上げ受給すると在職老齢年金の適用による支給停止を受けて、受け取れる年金額が著しく低下する可能性があるため注意しましょう。

高年齢雇用継続給付金を受けると年金額がさらに減額される可能性がある

高年齢雇用継続給付金とは、60歳で定年を迎えて再就職をしたときに、定年前の賃金と比較して75%以下に低下すると受け取れる給付金です。これは公的年金保険の制度ではなく、雇用保険による給付です。

高年齢雇用継続給付金では、賃金の低下率に応じて賃金額の0.44〜15%の額が支払われます。また高年齢雇用給付金を受給するには、雇用保険への加入期間が5年以上必要です。

しかし高年齢雇用継続給付金を受け取ると、在職老齢年金による支給停止に加えて、標準報酬月額の0.18〜6%が追加で停止されるため注意しましょう。

以下のモデルケースで、金額をシミュレーションします。

基本月額:17万円(年額204万円)
総報酬月額相当額:44万円

支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2×12
=(17万円+44万円-47万円)×1/2×12
=84万円(月額7万円)

在職老齢年金額=204万円-84万円
=120万円(月額10万円)

老齢年金を繰下げ受給するときの注意点

老齢厚生年金を繰下げ受給し、65〜70歳の間で年金を受給せずとも、所定の計算式で求められた年金の支給が停止されます。そして本来の年金額から支給停止額を差し引いた在職老齢年金の額に所定の増加率が適用されるのです。

例えば、基本月額が15万円(年間180万円)、総報酬月額相当額が40万円であった場合、在職老齢年金は11万円、支給停止額は4万円。70歳まで支給を繰下げた場合は、在職老齢年金の11万円に42%の増加率が適用され、70歳から46,200円が増額されます。

老後資金を貯める必要性

定年の延長や、再雇用・嘱託制度によって老後も働けるとはいえ、現役のうちに老後資金を貯める必要性は高いと考えられます。

理由は、以下の3つです。

少子高齢化と平均寿命の伸長により公的年金制度が変更される可能性がある

人間にも体力の限界がありいつまでも働けるわけではない

老後資金は教育ローンや住宅ローンのように借りられない

特に平均寿命は伸び続けており、厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」によると2018年時点で男性の平均寿命は約81歳、女性で約87歳です。今後は人生90歳時代とも、100年時代ともいわれています。

今回ご紹介した在職老齢年金を含む公的年金制度の内容は、あくまで2020年3月時点の内容です。これから少子高齢化が進み平均寿命が伸びていくことを考えると、制度が変更されて、受給できる年金額が低下したり支給開始年齢の引き上げられたりする可能性があります。

人はいつまでも労働収入が得られるわけではなく、将来誰かから借りるのも難しいです。そのため、老後に働くとしても老後資金を確保しておく必要性は高いでしょう。

老後に必要な金はライフプランによって異なる

老後資金として貯めるべき金額は、その人が老後にどのような人生を送るかによって大きく異なります。老後に働くかどうかだけでなく、どこに住むか誰と生きるかによって、収入も支出も大きく変わるためです。

ここで、老後の収入と支出の平均値を見ていきましょう。総務省が行った「家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)II 総世帯及び単身世帯の家計収支」によると、夫婦世帯と単身世帯の収入と支出の内訳はそれぞれ以下の通りです。

夫婦世帯 単身世帯
収入(可処分所得) 193,743円 110,933円
支出(消費支出) 235,615円 149,603円
不足分 41,872円 38,670円

※夫婦世帯は、男性65歳以上、女性60歳
※単身世帯は60歳以上
※可処分所得は収入全体から税金のような非消費支出を差し引いた金額
※消費支出は支出全体から税金のような非消費支出を差し引いた金額

上記の表によると、夫婦世帯で毎月約4.2万円の不足が出ます。仮に70歳まで働き70歳から95歳まで年金を頼りに生きていく場合、25年間で約1,256万円の不足になる計算です。加えて葬儀費用や介護費用も必要になるでしょう。

一方で、上記のデータはあくまで平均値に過ぎないため、あまり参考にならない部分があります。例えば、夫婦世帯における住居費は、同データと見ると消費支出の5.8%ですので、計算すると約13,665円です。

老後の居住費は、老後までに住宅ローンを返済しそのまま持ち家に住み続けるのか、老後も引き続き賃貸に住み続けるのかによって、住居費の負担が大きく変わります。そのため、住居費が13,665円で済むケースは少ないと考えられるでしょう。

また、お孫さんがいる場合は、プレゼントをしたり、進学資金や結婚資金を援助したりするのにお金が必要になるかもしれません。

収入の面では社会保障給付が91.5%となっていますが、老後も働く場合は社会保障給付の割合が下がって、収入全体が上昇するでしょう。

このように、平均値だけでは老後の生活必要資金を把握できません。そこで、ファイナンシャルプランナーにライフプラン表を作成してもらうことで自分の状況に合った老後資金の額を把握できます。

老後資金を個人年金保険で貯める必要性

個人年金保険は保険料を支払うことで、所定の年齢に達すると年金を受け取れる貯蓄型の保険です。仮に老後も働く場合でも、個人年金保険を利用するのも一つの方法でしょう。

個人年金保険での年金の受け取り方法は、5,10,15年の確定年金もしくは保証期間付きの終身年金が選べます。

例えば、10年の確定年金を選び年金の受取開始年齢を60歳にすることで、60〜65歳では老齢年金を繰下げすることなく低下した収入の補填が可能です。

また65歳以降、労働収入と年金収入が47万円を超える場合、47万円を超えないように労働を制限し、減らした分を個人年金保険の年金で補うのも手段の1つです。

このように個人年金保険を活用すると、公的年金制度をカバーでき、働く量も減らしてより充実した老後生活を送れるなど、選択の幅が広がると考えられます。

個人年金保険以外でも老後資金は貯められる

老後資金を貯める方法は、個人年金保険だけではありません。以下のようなさまざまな保険への加入や制度の利用が考えられます。

特徴
終身保険 ・一生涯の死亡・高度障害保障が得られる保険

・解約するタイミングによって支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れる場合がある

・外貨建てや変額保険などさまざまな種類がある

トンチン保険 ・所定の年齢から一生涯にわたって年金を受け取れる保険

・長生きするほど多くの年金を受け取れる

・保険料の払込期間中に解約するとほぼ確実に元本割れする

iDeCo ・掛金を拠出して投資信託などで運用し自分で老後の年金を準備する制度

・掛金は全額所得控除の対象

・運用によって得た利益は非課税

・年金受取時も税の優遇が適用される

・運用の結果によっては損失が発生する場合がある

それぞれの保険や制度に一長一短がありますので、ご自身に合った方法で老後資金を準備していきましょう。

関連記事:個人年金保険がおすすめしないと言われる理由とは?必要な人・不要な人も解説

まとめ

60歳の退職以降も働く場合、引き続き厚生年金保険に加入しつつ老齢厚生年金も受け取る場合は、在職老齢年金によって賃金に応じた額が支給対象外となります。

在職老齢年金は、60〜65歳と65歳以降で支給対象外となる年金額の計算方法が異なり、60〜65歳の方が年金額が削られやすい傾向にあります。

ただし老後に働く場合であっても老後資金の準備はほぼ必須であるといえます。ご自身に適した老後資金の貯め方や必要な老後資金を詳しく知りたい人は、ファイナンシャルプランナーの力を借りると良いでしょう。

  • この記事を書いた人

品木 彰

ファイナンシャルプランナー、FP技能士2級、保険・金融ライター。国公立大学卒業後、明治安田生命保険相互会社に新卒入社。法人営業として官公庁向けの団体保険・個人営業を担当。チームリーダーや管理職候補など7年半勤務。その後、人材会社に転じ多くの転職をサポート。現在は独立フリーライターとして活躍。

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